子どもが学校から体罰を受けたら、教員や学校に慰謝料は請求できるの?

子どもが学校から体罰を受けたら、教員や学校に慰謝料は請求できるの?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもが学校で体罰を受けて帰ってきた......。親としては心配になると同時に、学校への不信感が募るでしょう。もし、不当な体罰が行われていた場合、生徒や保護者側は、教師や学校に対して慰謝料を請求できるのでしょうか。

1. 体罰の事例

体罰は、学校教育法11条で禁止されています。ただし、どこからが体罰なのか、わかりにくい点が問題でした。そこで、文部科学省が、具体的な体罰の例を公表し、専門家でなくとも判断が可能な状態になっています。では、体罰に該当するもの、体罰に該当しないと思われる例を、整理しておきましょう。

(1)体罰に該当すると思われるもの

体罰には、➀身体への侵害を行うものと、②肉体的苦痛を与えるようなもの、の2種類があります。

➀身体への侵害行為(暴行)を行うもの

【具体例】

  • 体育の授業中、わざと危険な行為をした児童の背中を、教員が足で踏みつける。
  • 授業中に、椅子に座って、前の席の児童に足を当てた児童を、教員が突き飛ばして転倒させる。
  • 授業中に私語をした生徒にいきなり平手打ちをする。
  • 授業中に歩き回る生徒を、席につかないため、頬をぎゅっとつねって席につかせる。
  • 注意したら走り去った生徒の腕をつかんだら生徒が腕を振り払ったため、教師が生徒の頭を殴った。
  • ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したがおさまらなかったため、教師が手に持っていた筆記用具を生徒の頭に投げつける。
  • 部活動のユニホームの片づけが不十分だという理由で、教師が生徒の頬を殴打する。

➁児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの

【具体例】

  • 放課後に教室に居残りを強制し、トイレに行きたいと言われても室外に出ることを禁止する。
  • 教室から連れ出して別室にとどめ、給食も与えることなく長時間その部屋に閉じ込める。
  • 宿題を忘れた児童に対し、教室の一番後ろの床に正座させ、児童が痛みを訴えても、辞めさせなった。

(2)体罰にあたらないと考えられるもの

これらの行為は、児童生徒に負担を与える行為でもありますが、正当な懲戒権の行使として体罰には当たらないと考えられます。

【具体例】

  • 放課後等に教室に居残りさせて話をする。
  • 授業中、ふざけて授業を中断させた生徒を立たせる。
  • 学習が遅れている生徒に対し多めに宿題を出す。
  • 指導を守らない生徒に対して、清掃をさせる。
  • 従業中に立ち歩く生徒を叱って席につかせる。
  • 部活動の練習に遅刻した生徒を予定していた試合に出場させずに見学させる。

(3)正当な行為(加害行為の可能性があるが正当防衛または正当行為と判断される行為)

行為だけを見ると、体罰にも該当しそうな程度であっても、状況によっては体罰ではなく正当なものといえる場合があります。たとえば、以下のような類型があります。

➀児童生徒から教員等に暴力行為があった場合に、教員が防衛のためやむを得ずした有形力の行使

【具体例】

  • 児童が教員の指導に反抗し教員の足を蹴ってきたところ、教師が児童の背後から体を押さえる。

➁他の児童生徒に被害を及ぼす暴力行為をしているとき、これを止めようとしたり、危険を回避するためにとっさにした有形力の行使

【具体例】

  • 休み時間に廊下で、他の児童をいじめて殴りつけている児童の肩をつかんで強く引っ張って引き離す。
  • 始業式で、大声を出して騒ぎ立てる生徒を別の場所で指導するため、静かにすることと別の場所に移ることを求めたが、大声を出し続けて暴れ始めたため、生徒の腕を引っ張って連れ出す。
  • 他の生徒を恫喝していた生徒に注意したところ、教員の顔につばを吐いて逃げ出したため、生徒が落ち着くまでしばらく、肩を両手でつかんで壁へ押しつける。
  • 部活動の試合中に相手チームの選手とぶつかったことで怒り、殴りかかろうとする生徒の肩を、両手で押さえつけて制止させる。

2. 教員や学校に慰謝料は請求できる?

子どもが体罰を受けた場合、精神的に傷ついていることも多いものです。実際にどんな体罰が行われたのかは、教育委員会の調査などを依頼する必要があります。さて、実際に体罰があった場合、教員や学校に慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

(1)私立学校の場合

体罰を受けた学校が、私立学校の場合は、体罰をした教員本人に慰謝料を請求することができます。そして、学校の監督が不行き届きだったという理由で、学校長にも合わせて慰謝料を請求することも考えられます。

(2)公立学校の場合

体罰を受けた学校が国公立の学校であれば、国家賠償法という手続きで慰謝料を請求することになります。

この場合、体罰を行った加害者教員本人には賠償請求ができません。公立学校の教員は公務員であり、公務員には個人賠償義務がないからです。

そのため、被害者が公立学校の教員に訴訟を起こす場合は、県立高校であれば県、市立高校では市を相手に訴訟を起こすことになります。慰謝料の損害賠償が認められた場合も、県や市の税金から支払われることになります。

3. まとめ

本記事では、お子さんが体罰を受けた場合の慰謝料請求などについて見てきました。お子さんは体罰を受けたことについて、話したがらないかもしれませんが、放っておくとエスカレートする可能性もあります。できるだけ早くお子さんに確認し、適正な対応をとるようにしましょう。

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  • こちらに掲載されている情報は、2021年10月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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