ママ友とのトラブルに法的措置はできる?
子どもを通じたママ友とのトラブルがこじれてしまうケースは珍しい話ではありません。たとえば、家庭の事情を相談したらうわさを広められてしまったり、ママ友にSNS上で悪口を書かれてしまったりなどです。なかには、うつ病に追い込まれてしまったというケースもあるでしょう。
このようなトラブルに法的措置をとることは可能なのでしょうか。ママ友トラブルのケース別に、とるべき対策を解説します。
1. よくあるママ友とのトラブル例3つ
(1)ママ友同士のつきあいによる心理的ストレス
「忙しいから子どもの面倒をみてくれない?」「夫婦で外出したいから子どもを預かって」「○○の仕事されているそうね、(タダで)お願いできないかしら」など、相手の都合を考えず頼み事を持ち掛けてくるママ友に悩まされる人は少なくありません。ほとんどの場合、頼み事をしている側に悪意はないので、なおさら対応に困ることが多いでしょう。また、慎重に断っても「これくらいいいじゃない、ケチな人ね」などと“逆ギレ”されたり、ケチだとうわさを流されたりなど、断った方が悪者扱いされてしまうケースもあります。ママ友同士なのだから、困っているときは助けるのが当然だという考え方が根底にあるのかもしれません。
また、ママ友の経済状況や子どもの成績などに対する嫉妬など、ささいなきっかけから無視されたり、ママ友グループから仲間はずれにされたりするトラブルもあります。仲間内のトラブルには直接向き合うよりも距離を置くことで好転するケースもあるでしょう。ママ友にも当然相性や好き嫌いはあります。苦手な人と無理に交流を続けなければならないものではありません。
しかし、保育園や幼稚園の運営上必要な連絡をしないなど、実害ある嫌がらせの場合には何らかの対策を講じるべきでしょう。また、繰り返す無視や嫌がらせにより心理的なストレスを受け、うつ症状などに陥ってしまい仕事や家庭にまで影響が出てしまったり、引っ越しを余儀なくされたりした場合は、相手に損害賠償を請求できる可能性があります。
(2)子どものケンカによるケガや物を壊したことを発端とする争い
子ども同士のケンカやいじめによるケガ、物の損壊などのトラブルから、ママ友同士の争いに発展していくこともあります。子どもだけ遊んでいるときにトラブルが発生した場合、証拠も目撃者もいないことが多いため、適切な対応に困ることがあります。「子ども同士のケンカには基本的に干渉しない」、「子どもがしたことなのだから、壊した物も弁償する責任はない」など、相手のママ友の価値観はさまざまです。こちらが大事ととらえていなくても、激高して攻撃してくるケースもあります。
相手の言い分を公平に聞き、自分も適切な主張をするためには、弁護士など冷静な第三者を挟むことで解決につながる可能性があります。
(3)ママ友から悪口・うわさを拡散される、ネット上に悪口を書き込まれる
真実であるか否かかかわらず、悪口やうわさを拡散されたりネット上に悪口を書き込まれたりするなどのトラブルもあります。口頭による伝達の場合は確たる証拠がないことがほとんどで、うわさや悪口の正確な出どころがわかりにくいこともあり、ママ友トラブルに拍車をかけます。また、SNS上で子どもの写真を勝手にアップされてしまった、いわれのない悪口を書き込まれてしまった、という風に、インターネット上のトラブルも対策に悩むケースが多いようです。
以下より、具体的な法的な対処法について解説します。
2. ママ友トラブルで法的な措置は可能か?
(1)心理的なストレスによりうつ病などを発症した場合
ママ友とのトラブルや嫌がらせによるストレスでうつ病などの精神疾患を発症した場合、ママ友の行為が民法上の不法行為の要件を満たしていれば、損害賠償金を請求できる可能性はあります。
民法第709条には、不法行為による損害賠償について「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められています。
“故意または過失”とは、端的にいえば「わざと」または「うっかり」ということです。“故意または過失”は加害者の内面にかかわることですが、法的措置をとる際には客観的な証拠から推定していく必要があります。
さらに、“加害者の行為と被害者の損害との間に因果関係があること”も、不法行為成立の要件です。「ママ友の行為さえなければ、自分はうつ病にならなかった」といえるのかどうか、ということです。したがって、相手側から「たとえママ友のトラブルがなくても、他の悩み事が原因でうつ病を発症していたであろう」という客観的事実を示された場合には、損害賠償が認められない可能性が高くなります。
(2)ケガを負わされたり、物を壊されたりした場合
他人にケガを負わせる、他人の所有物を壊す行為は、法律上は不法行為に該当し、加害者は損害賠償責任を負います(民法第709条)。不法行為とは、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害すること」です。
民法上、不法行為の責任を負うためには、物事をしっかりと理解し判断できる能力が必要とされます(民法712条)。この能力を責任能力といい、個人差はあるものの、おおむね12歳頃備わるとされています。相手の子どもがまだ幼く責任能力がない場合、子ども自身が不法行為責任を負うことはできないと判断されます。
しかし、それでは被害者が救済されないので、法律では保護者の責任を認めています。責任無能力者の監督義務者などの責任について定めた民法第714条では、“責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う“としています。
つまり、ママ友の子どもにケガさせられたり、持ち物を壊されたりした場合には、ママ友やその配偶者が損害賠償責任を負う可能性があるということです。なお、壊された物が非常に高価で貴重な物であった場合には“子どもの手の届くところに置いておいた“という管理能力の落ち度の分が相殺され、全額弁償はしてもらえないおそれもあります。
(3)SNSなどに悪口を投稿された場合
SNSなどのインターネット上での誹謗中傷は社会問題となっていますが、ママ友同士も例外ではありません。悪質な場合には、名誉毀損(きそん)罪(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性があります。名誉毀損が成立するための要件は、“公然と事実を摘示して、他人の社会的評価を下げること”です。ここでいう“事実”は、真実である必要はありません。
民事責任については、書き込みの削除依頼をした上で、名誉毀損という不法行為に対する損害賠償請求ができる可能性があります。ネット上で誹謗中傷されたら、証拠を保存するために、削除される前にその画面をスクリーンショットするなどして記録に残すことが重要です。投稿の日時や投稿者のIDなどがわかるようにしましょう。被害に遭ったときは、ネットトラブルの解決実績のある弁護士に早めに相談されることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年06月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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