養育費増額調停とは? 進め方と増額が認められる条件
別れた配偶者に養育費の増額を請求しても、当事者同士の話し合いでは同意に至らないことがしばしばあります。こうしたときに取りうる方法が、家庭裁判所に「養育費の増額調停」を申し立てることです。
本コラムでは、養育費増額調停の概要や手続きの流れ、注意点についてわかりやすく解説します。
1. 養育費増額調停とは
養育費増額調停とは、養育費の増額について、家庭裁判所の調停委員会による公平な仲裁を得て妥当な落としどころを探る手続きです。調停委員会は裁判官1名と民間の調停委員2名で構成されています。
通常、離婚した配偶者に養育費の増額を求めるときには、相手と直接話し合うところから始めます。しかし、養育費の増額は相手にとって経済的負担になることもあり、当事者同士での話し合いでは同意に至らないことは珍しくありません。そうした場合に次のステップとして行うのが養育費増額調停です。
養育費増額調停で調停委員会は、あくまで話し合いの助言やサポートを行い、増額の可否や養育費の金額などに関する強制力をもちません。そのため、もしも調停を経ても話し合いが決着しない場合は、次は家庭裁判所による審判へと続くことになります。審判の場合、増額の可否や新たな養育費の金額などは家庭裁判所の判断に委ねられます。
したがって、養育費増額調停は、養育費の増額に関して当事者の意思を直接反映できる最後の機会と捉えることが可能です。
2. 養育費増額調停の流れ
(1)家庭裁判所に必要書類を提出する
当事者同士の話し合いから養育費増額調停に移行するためには、まず家庭裁判所へその申し立てをしなければいけません。申立先は、請求相手の居住地を管轄する家庭裁判所です。ただし、双方が合意している場合は、別の裁判所で調停を行うこともできます。
申し立ての際に提出が必要な書類は以下のとおりです。
- 「調停申立書」の原本とその写し
- 養育費の増額が必要になった理由を記載した「事情説明書」
- 自分の連絡先を記載した「送達場所の届出書」
- 相手との交渉状況などを記載した「進行に関する照会回答書」
- 養育費の対象となる子ども(未成年者)の戸籍謄本1通
- 自分の収入関係の資料(給与明細、源泉徴収票、確定申告書の写しなど)
そのほか、必要に応じて追加資料が必要になる場合もあります。また、増額を請求する子ども一人につき1200円の収入印紙や郵便切手なども必要です。必要な書類や書式については、家庭裁判所のホームページで確認できます。
出典:裁判所「養育費(請求・増額・減額等)調停の申立て」(2)調停委員会仲介のもとでの話し合い
調停では、調停委員会が中立的な立場から双方の意見を聞きながら、増額請求(またはその拒否)が正当な理由によるものか、請求自体は正当だとしても増額する金額は適正か探り、妥当な落としどころを提案します。当事者双方から個別に聞き取りをするのが通例です。
(3)調停が成立したら
調停の結果、双方が養育費の増額について合意に達すると、家庭裁判所はその合意内容を「調停調書」という文書にまとめます。この調書は、法的な効力があるため、もしも相手が合意どおりに養育費を支払わなかった場合は、裁判所に強制執行の申立てを行うことで相手の財産を差し押さえることも可能です。
養育費の増額が適用されるのは、「調停を家庭裁判所に申し立てた月から」になるケースが一般的です。当事者同士での話し合いでは解決が無理だと感じたら、早めに家庭裁判所への申し立てを検討しましょう。
3. 養育費の増額が認められる条件と注意点
養育費の増額は無条件に認められるわけではありません。特に家庭裁判所における調停や審判では、客観的な妥当性が重視されるので、以下の点を理解しておくことが重要です。
(1)養育費の増額が認められるには条件がある
養育費の増額が認められるには、養育費を取り決めた当時とは状況が変化している必要があります。具体的には、「自分の収入状況が悪化した」「相手の収入状況が向上した」「子どもにかかる教育費や医療費が増加した」などです。
なお、養育費は原則20歳まで請求できます。ただし、子どもが大学に進学していたり、病気や障がいによって自立が難しかったりする場合は、それ以降も請求できる可能性があります。
(2)増額される金額は養育費算定表に基づいて判断される
家庭裁判所の調停や審判においては、基本的に「養育費算定表」を基準として、養育費の妥当な金額を検討します。養育費算定表とは、監護人と非監護人双方の収入状況や子どもの人数・年齢などに応じた妥当な養育費の目安を記載した資料です。
したがって、これまでに養育費算定表の金額以上の養育費を相手が支払っていた場合は、増額が認められない可能性があります。また、相手が養育費を払ってきた年数や再婚などの生活状況も考慮されるポイントです。
なお、養育費算定表は令和元年12月に更新されましたが、新算定表が導入されたことを直接の理由に増額請求しても認められません。あくまで、自分や子ども、または相手方の状況に照らして、養育費の増額が妥当である正当な事情を示すことが必要です。
養育費の増額調停や審判に臨む際には、客観的・法的な観点から増額請求の正当性をアピールする必要があります。そのため、当事者同士の話し合いでは解決が難しいと感じた場合は、弁護士に相談することがおすすめです。弁護士ならば調停の場にも同席し、法律の専門家として効果的にサポートできます。
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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