養育費をボーナス月に増額したい|加算請求のポイントと注意点
ひとり親家庭の場合、離婚相手から養育費を受け取っていても、突然の出費などで経済的に苦しくなってしまうことも多いと思います。では、こうした場合、離婚相手へボーナス月に養育費の増額請求をすることは可能なのでしょうか。
本コラムでは、養育費をボーナス月に増額できるかどうかやその請求方法、注意点などを解説します。
1. 養育費のボーナス月加算は可能
そもそも養育費の金額や支払い方法は、基本的に当事者間の話し合いで決定されます。そのため、毎月決まった金額を授受することも、ボーナス月だけ普段より多くの金額を授受することも、当事者同士で合意されていれば何も問題ありません。しかし、養育費がいくらになるかは受け取る側にとっても渡す側にとっても生活に大きく関わるので、スムーズに決まらないことも多くあります。
こうした際、ひとつの参考になるのが、裁判所が公開している養育費算定表です。この表では養育費について、子どもの年齢や人数、そして夫婦双方の年収に照らして算出される基準額が示されており、裁判所で行われる調停や審判で養育費を決定する際にも参考資料として使用されます。
ただし、注意すべきなのが、ここで言う「年収」とは、基本給だけでなく、ボーナスを含めるのが一般的ということです。つまり、養育費を決める際は基本的に、あらかじめボーナスも織り込んだ金額を基に計算を行うことになります。したがって、ボーナスを含む年収で毎月の養育費を決めたにもかかわらず、ボーナス月はさらに増額してほしいと願い出るのは、ボーナスを二重取りするような形となるため、相手から拒否される可能性があります。
とはいえ、養育費の年間総額自体がさほど変わらないのであれば、ボーナス月の養育費を高めに設定することは、双方にとって利になる場合も少なくありません。たとえば、年収に占めるボーナス額の割合が高い場合、ボーナスを含む年収で計算した養育費を12等分し、毎月定額払いとすると、月々の負担感が重くなる可能性があります。このようなケースだと、毎月の養育費を少なめにしておいて、ボーナス月にその分を補填(ほてん)するという方法は有効です。
こうすることで、養育費を渡す側は経済的に無理がなくなり、結果として受け取る側も養育費を安定して確保しやすくなります。交渉次第では、毎月の養育費を少なめにすることを認めた見返りとして、ボーナス月の養育費に多少色をつけてもらえる可能性もあります。
なお、当事者同士の合意があれば、養育費算定表の基準額に従う必要は必ずしもありません。そのため、渡す側さえ納得するのであれば、毎月定額で受け取る金額を減らすことなく、ボーナス月に受け取る金額をさらに増額してもらうことは可能です。実際、養育費算定表の基準額は十分に高いとは言えません。子どもの生活を守るために養育費の増額が必要である正当な理由を示せれば、相手がボーナス月に養育費を加算してくれる可能性はあります。
2. ボーナス月の加算金額を決めるときのポイント
ボーナス月の加算金額を決める際は、お互いの経済的状況を含めてしっかり話し合うことが重要です。ボーナス月の加算金額に相場は特にありません。というのも、ボーナス月の加算金額をどうするかは、原則としてお互いの収入や生活状況から個別に判断すべきことだからです。
先述したように、年収に占めるボーナス額の割合が高い場合は、毎月の養育費を少なめに、ボーナス月には高めにと調整した方が、渡す側が感じる負担は少なく済みます。とはいえ、受け取る側としては、ボーナス月以外の養育費が少なすぎても困ってしまうはずです。だからこそ、お互いの経済状況を率直に話し合って、双方に無理のない落としどころを探ることが重要になります。
(1)加算金額の決め方
ボーナス月に加算する金額の基本的な決め方としては、養育費算定表を基にボーナスを含む年収ベースで年間養育費を割り出し、その金額にあわせて通常時とボーナス時の養育費を決めるのが公平と考えられます。
たとえば、年間72万円の養育費が妥当な場合、単純に12か月で割ると、毎月の金額は6万円です。しかし、基本給で考えると毎月5万円(年間60万円)が限度という事情が相手にあるならば、不足分の12万円分をボーナス月に受け取るようにしてはどうでしょうか。
相手のボーナスが年2回ならば、ボーナス月は11万円(×2回)、それ以外の月は5万円(×10回)を受け取る形です。これならば、相手の負担感を下げつつ、年間72万円の妥当な金額をしっかり受け取れます。
(2)合意した内容は公正証書に残す
養育費について合意した内容は、執行認諾文言付きの公正証書に残すのがおすすめです。残念なことに、離婚相手が当初決めた通りに養育費を支払ってくれないケースは少なくありません。
しかし、執行認諾文言付きの公正証書があれば、相手が養育費を滞納するようになった際、裁判所に申し立てて財産の差し押さえを強制執行することが可能です。また、公正証書という法的効力のある文書に合意内容を残すことで、相手が心理的にプレッシャーを感じて養育費をしっかり支払い続けてくれる効果も期待できます。
公正証書は各都道府県にある公証役場で、法律の専門家である公証人の手を介して作成します。ただし、公正証書に記載する合意内容そのものに関しては、公証人が口出しすることは基本的にありません。そのため、どのような形で相手と合意すべきか不安がある場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
3. ボーナス月加算の注意点
基本的に、一度決定された養育費を後から増額することは容易ではありません。後になってからボーナス月は養育費を増やしてほしいと要求しても、認められない可能性があります。すでに合意されている養育費を変更するには通常、経済状況や生活状況の著しい変化など、合意当時には事情の変更を予見できなかったことや合意内容を維持することが相当でないと認められる程度に重要な事情の変更が求められるからです。したがって、離婚時に養育費の金額を決める際は、ボーナス加算のことも含めて十分にお互い話し合った上で、その合意内容を離婚協議書に盛り込むようにしましょう。
その際、注意すべきことのひとつに、ボーナス金額は、勤務先の業績によって大きく変動することが挙げられます。そのため、ボーナス月の加算額を高くしすぎると、相手が勤める会社の業績が悪化してボーナスが少なくなった場合に、計画通りに養育費を受け取れなくなる恐れがあります。ボーナス月に養育費を加算する場合は、その点も考慮して決めましょう。
いずれにしても、養育費について決める際は、さまざまな可能性を考慮したうえで、お互いに納得できるまで話し合うことが大切です。もしも当事者同士で合意するのが困難な場合は、弁護士に相談するようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年05月19日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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