養育費は子どもが15歳になったら増額できる?

養育費は子どもが15歳になったら増額できる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもにかかるお金は年齢と共に変わります。特に15歳頃になると教育費も生活費も増えてくるので多くのお金が必要です。では、子どもが15歳になったことを理由に、離婚した相手に養育費の増額請求はできるのでしょうか。

本コラムでは、子どもの年齢と養育費の関係や、15歳以上の子どもの養育費を増額する方法を解説します。

1. 15歳になる子どもの養育費は増額可能

養育費の増額は原則、当事者同士での合意さえあれば自由に可能です。

合意が成立せず、調停や裁判に発展した場合も、正当な理由として示すことで、増額を認められることがあります。ここでいう正当な理由とは、離婚して養育費の金額を決定した当時には予見できなかったような、自分や相手側の収入や生活状況に変化が生じたなどの「事情の変更」をいいます。たとえば、「相手側の収入が大きく増えた」「子どもが難病にかかって高額の医療費がかかるようになった」「子どもが私立の学校に進学して教育費が上がった」などです。

個々のケースにもよりますが、子どもが15歳以上になったことも、こうした事情の変更に該当すると考えられるので、それを理由に養育費の増額請求を行うことが可能です。

(1)15歳以上の子どもの養育費が上がる根拠

15歳という年齢が増額請求の根拠となる大きな理由のひとつには、裁判所が公表している「養育費算定表」が関係しています。養育費算定表とは、養育費を決める話し合いや調停・裁判などで、養育費の適正額の参考基準として使われる資料です。

この養育費算定表には、「生活指数」という考え方が取り入れられています。これは親の生活費を100として見た場合に子どもにかかる生活費の比率を示したものです。これによると、15歳未満の子どもは62、15歳以上の子どもは85として設定されています。つまり、15歳以上の子どもの養育には15歳未満の子どもの養育よりもお金がかかることが示されています。

実際の裁判でもこれを根拠として、子どもが15歳に達したことを理由に養育費の増額請求を認めた例もあります。

出典:裁判所「養育費・婚姻費用算定表について」 p.2

ただし、養育費の額を取り決める際に、あらかじめ、15歳以上になった後に必要な額も含めて考えていた場合は、増額が認められない可能性が高いです。これは、増額や追加の支払いをしないことにお互い同意していた場合にも当てはまります。

相手の収入や生活状況が離婚当時より余裕のない状況にある場合なども含めて考えれば、子どもが15歳になったことを機会に養育費を増額できるかどうかは、実際にはケースバイケースです。

(2)15歳以上の子どもの養育費相場

養育費算定表で示されている養育費の基準額は、子どもの年齢や人数、自分と相手の年収に応じて設定されています。以下にその具体例をいくつか挙げてみましょう。

15歳以上の子どもが1人の場合

自分側の給与年収が250万円、相手側の給与年収が400万円の場合
2~4万円
自分側の給与年収が250万円、相手側の給与年収が600万円の場合
6~8万円
自分側、相手側の給与年収が共に400万円の場合
2~4万円
出典:裁判所「養育費算定表(表2)

子どもが2人の場合(15歳以上の子どもが1人、15歳未満の子どもが1人)

自分側の給与年収が250万円、相手側の給与年収が400万円の場合
4~6万円
自分側の給与年収が250万円、相手側の給与年収が600万円の場合
8~10万円
自分側、相手側の給与年収が共に400万円の場合
4~6万円
出典:裁判所「養育費算定表(表3)

調停や裁判では、このように養育費算定表を基に、その他の事情も考慮しながら妥当な養育費の額を検討します。なお、厚生労働省による「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」では、離婚した父親からの養育費について、平均月額は約5万円と報告されています。

出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します

2. 15歳以上の子どもの養育費を増額する方法

養育費の増額請求は、基本的に以下のようなステップで進めます。

ステップ1:当事者間で話し合いをする

まずは相手方と直接話し合って円満な解決を試みます。養育費の増額についての合意が得られれば、その内容を書面に残し、双方で署名・押印を行います。後のトラブルを避けるためには、公正証書として残しておくことが理想的です。

ステップ2:内容証明郵便を送る

話し合いで合意に至らない場合、次にすべきなのは自分の要求事項を内容証明郵便で送ることです。これは、養育費の増額を求める自身の意思を相手方へ公的に伝える手段であり、裁判などにおいても、自分が確かに相手へ養育費の増額を求めたことを示す証拠資料としても利用できます。このように、内容証明郵便を送るのは、後の調停・裁判を見据えた行動でもあるので、話し合いに応じない相手へ自分の本気度を知らせる意思表示にもなります。

ステップ3:合意に至らなかった場合は調停・審判を申し立てる

当事者同士で合意に至らなかった場合は、裁判所へ調停・審判の申し立てを行いましょう。調停では、第三者である調停委員会の仲裁を受けながら、双方が納得できる妥当な落としどころを探ります。調停でも合意に至らない場合は、審判手続きに移行し、裁判所が養育費の増額についての判断を下します。調停や裁判で有利を得るためには、養育費の増額が正当なことを示す客観的な根拠や証拠を準備することが重要です。

3. 養育費の増額で重要なポイント

養育費の取り決めや増額請求をスムーズに進めるためには、以下の点に注意することが大切です。

(1)離婚時に年齢的な変化も踏まえて養育費の取り決めをする

もしも、まだ離婚前で養育費の取り決めをしていない場合は、子どもの成長も見越して養育費の増額に関する条項を離婚協議書に盛り込みましょう。この際、「子どもが15歳に達する場合」や「教育費が増加する場合」など、増額の条件を具体的に定めておくことで、後になって相手ともめるリスクを減らせます。

(2)相手との合意内容については必ず公正証書に残す

養育費について相手と取り決めたことは、公正証書として残すことが非常に重要です。残念なことに、養育費の支払いは当初の約束通りに履行されないケースも少なくありません。そのため、養育費に関して相手と合意した内容は、公正証書として記録して、法的な強制力を持たせるようにしましょう。公正証書があれば、相手が約束通りに養育費を支払わなかった場合に財産を差し押さえることも可能です。

(3)弁護士に相談することも検討しよう

当事者間での話し合いがうまくいかない場合や、相手と直接交渉するのを避けたい場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。お金の問題はただでさえデリケートな上、交渉するのが離婚相手となれば、当事者同士では話が余計にこじれてしまう恐れがあります。

また、自分のケースではどの程度の養育費を請求するのが妥当なのか、判断に迷ってしまうことも多いはずです。その点、弁護士に依頼すれば、専門家の立場から交渉の仕方についての助言や、代理交渉をしてもらえます。また、内容証明郵便や公正証書などの書類の準備や、裁判所での調停や審判についてのサポートを受けることも可能です。

妥当な額の養育費をしっかり受け取れるかどうかは、子どもの生活や将来に直結する大切な問題です。養育費に関して何かお困りのことがあれば、早めに弁護士へ相談するようにしましょう。

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