「卒婚」とは? 離婚との違いやメリット・デメリットを解説
昨今、離婚とも通常の夫婦関係とも異なる「卒婚」という新しい概念が注目されています。
本コラムでは、卒婚とはどのような状態を指すのか、離婚との違い、メリット・デメリット、法的な観点から注意すべきことなどをわかりやすく解説します。
1. 卒婚とは?
卒婚とは、夫婦が戸籍上の婚姻関係は維持したまま、互いを干渉することなく、それぞれ別々の人生を送ることを意味します。婚姻関係を解消する離婚とは異なり、同居生活を継続する場合も多い点では別居婚とも違います。さらに別居婚の場合、パートナー以外の相手と恋愛関係をもつことは許容されませんが、卒婚した夫婦は恋愛も含めて、互いが自由な人生を送ることを前提としている点が特徴です。
卒婚は「仮面夫婦」に近いのではないかと思われるかもしれませんが、「夫婦関係の卒業」を意味する卒婚は、仮面夫婦に比べてよりポジティブなニュアンスが強くあります。仮面夫婦は一般的に、互いに愛情が冷め切っており、信頼関係も破綻していますが、卒婚の場合は、夫婦生活を解消しても、人間ないし人生のパートナーとして尊重し合えている関係が多く見受けられます。
卒婚に至るきっかけはさまざまですが、子どもの成人や大学への入学、夫の定年退職、親の介護がはじまるタイミングなどが代表例です。これらのライフイベントは、夫婦が今後の人生を見直し、自分たちの時間や生き方を大切にするきっかけになるからです。
2. 卒婚のメリット・デメリット
卒婚という新しい選択には、さまざまなメリットとデメリットがあります。
(1)卒婚のメリット
①法的な手続きなどが不要でハードルが低い
離婚とは異なり、卒婚に必要なのは夫婦間の合意のみです。同居状態を維持するのであれば、引っ越しなどを行う必要もありません。卒婚は外部の人間から見て通常の夫婦関係と区別がつきにくく、社会的な評価に影響を及ぼすことはさほどありません。
②配偶者と新たな関係を築ける
恋愛関係も含めて互いの自由を認め合うことで、夫婦間の摩擦やいさかいが減る可能性があります。無理して常識的な婚姻関係を維持するよりも、卒婚の方が互いに居心地がいい距離感になるかもしれません。この新しい関係のなかで配偶者の魅力を再発見した場合も、卒婚では法的な婚姻関係が維持されているため、離婚からの復縁よりもスムーズです。
③既存の生活や経済的安定を維持しやすい
ケース・バイ・ケースですが、卒婚では生活環境を変えない夫婦も多くいます。離婚して別々に暮らすよりも、それまでの生活や経済的な豊かさを維持しやすい点もメリットです。法律上の夫婦であるため、相続権が変わることはなく、老後の生活などを考えたときに安心材料となります。
(2)卒婚のデメリット
①扶養義務などが継続する
離婚ではないため、夫婦間に課せられる法的な義務が解消されるわけではありません。卒婚夫婦にも相手の生活を支える扶養義務や相互扶助義務はあります。互いに健康で経済的にも余裕がある状態なのであれば気にならなくても、将来的にどちらかが大病などを患えば、大きなデメリットになります。
②曖昧な関係性が続く
卒婚は曖昧な関係であり、新しい人生を再出発するという実感を得にくいかもしれません。いくら話し合いで取り決めたとしても、いざ相手が新しい相手と恋愛関係になったときに感情的な問題が発生するかもしれません。法的な婚姻関係が続いている以上、不倫として訴えられるリスクは捨てきれません。
③社会的な理解を得にくい
卒婚は比較的新しい概念であり、社会的に十分に認知されているとはいえません。卒婚夫婦であることが知られた場合、周囲から誤解されたり、反対されたりする可能性があります。新しい相手と恋愛関係になる際も、周囲からは単なる不倫関係と見られるかもしれません。
卒婚をする際は、これらのメリットとデメリットを十分に理解したうえで、自分たちの状況や性格、築きたい関係などを十分に考える必要があります。
3. 卒婚する前に配偶者と話し合うべきこと
卒婚する前には夫婦間で、生活費や婚外恋愛、相続・終活について話し合っておくべきです。
(1)生活費の取り決め
卒婚後の生活費をどうするかは非常に重要な問題です。先述の通り、法律上の夫婦には互いに扶養義務があります。卒婚したからといって、たとえば従来は渡していた生活費を渡すことを一方的にやめれば、法的トラブルが生じる恐れがあります。同一会計にするのか、別会計にするのか、別会計の場合でもどの出費をどのくらいの割合で負担するのかなどは、事前によく話し合って決めておかなければなりません。
(2)婚外恋愛に関する話し合い
配偶者以外の相手との恋愛を認めるのかどうかも十分に話し合っておくべきです。卒婚したからといって、相手の合意のないまま、配偶者以外の異性と肉体関係を持てば、法的には不貞行為と見なされます。卒婚後の婚外恋愛を認める場合には、明確な合意形成を行い、書面などに残しておく必要があります。
(3)相続や終活に関する話し合い
相続や終活に関する話し合いも大切です。卒婚の状況を長期的に継続するなら、老後の生活をどのように支え合うのか、相続についてどのように対応するのかは早めに相談しておくことが重要です。
卒婚は新しい夫婦のあり方です。事例が十分にあるとはいえず、法的にさまざまな問題が発生するリスクを抱えています。法定なトラブルを避けるためにも、卒婚をする際は事前に弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士ならば、卒婚がはらむ法的リスクについて深く検討し、トラブルの予防・対応策についても的確なアドバイスをしてくれるはずです。
- こちらに掲載されている情報は、2024年06月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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