自営業の場合の離婚。借金の財産分与での取り扱いと注意点
自営業者は、金融機関から事業の運営資金を借り入れることが多いです。自営業者と離婚する場合、財産分与の際に借金額が考慮されることがあるのでご注意ください。
今回は財産分与の範囲、財産分与における借金の取り扱い、自営業者と離婚する際の注意点などをまとめました。
1. 自営業者の財産分与について
夫婦が離婚する際には、共有財産を公平に分ける「財産分与」を行います(民法第768条)。
自営業者が所有する財産は、生活費などに充てる財産と事業用財産(事業用資産)に分けられる場合がありますが、財産分与のルールは会社員などの場合と基本的に同じです。
(1)財産分与の対象財産
財産分与の対象となるのは、夫婦のいずれかが婚姻期間中に取得した財産です。いずれか一方の名義であっても、婚姻期間中に取得したものであれば、原則として財産分与の対象となります(民法第762条第2項)。
自営業者が事業用に所有する財産であっても、婚姻期間中に取得したものであれば、特段の事情がない限り財産分与の対象となります。プライベートな財産と同様に、配偶者の協力の下で得られたものと評価すべきだからです。
(例)
- 仕事に使っている高価なPC
- 農業用機械
- 事務所用の物件
など
(2)財産分与の割合
財産分与の割合は、夫婦間の協議によって決定します。合意がまとまれば、どのような割合で財産分与を行っても構いません。
合意がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判や離婚訴訟で財産分与の方法・割合を決定します。
裁判所が判断を行う審判・訴訟では、財産分与の割合は半分ずつとされるのが一般的です。ただし、自営業者が特殊な技能や知名度を生かして仕事をしている場合などには、財産分与の割合が変動する可能性があります。
2. 自営業者の財産分与における借金の取り扱い
自営業者は、金融機関から事業用資金を借り入れている場合があります。事業のための借金が財産分与の対象となるか否かは、債務者が会社であるか個人であるかによって異なります。
(1)会社名義の借金
財産分与の対象外
個人事業を法人成りした場合、会社名義で事業用資金を借り入れることになります。
会社と個人は別人格であるため、会社名義の借金は財産分与の対象になりません。離婚する当事者が、会社の株式(持ち分)を100%保有している場合でも同様です。
ただし、借金の残高は会社株式の価値に反映されるため、その限度で財産分与に影響が生じます。
(2)個人事業主としての借金
財産分与の対象になる
個人事業主として個人名義で借りた借金のうち、婚姻期間中に借り入れたものについては、財産分与の対象となります。婚姻期間中に取得した事業用財産が財産分与の対象となる以上、借金についても財産分与の対象とすべきだからです。
ただし、借金の債務者そのものを変更することは原則できないので(債権者の同意が必要となるため)、財産分与の金額を調整するのが一般的です。
3. 自営業者と離婚する際の注意点
自営業者は、配偶者に手伝ってもらって事業を行っているケースがあります。この場合、解雇や未払い賃金に関係する論点にご注意ください。
(1)離婚のみを理由とする解雇は無効
自営業者が配偶者を従業員として雇用している場合、離婚のみを理由に配偶者を一方的に解雇することはできないと解されています(労働契約法第16条)。
配偶者との雇用関係を終了させるには、別の合理的な理由によって解雇を行うか、または退職について配偶者に同意してもらうしかありません。
自営業者の配偶者としては、退職を受け入れる代わりに離婚条件について譲歩を求めるなど、離婚協議などにおける交渉材料として活用し得るでしょう。
なお、自営業者が法人成りして設立した会社の役員は、会社に雇用されているわけではなく、委任契約を締結しているに過ぎません。
この場合、会社はいつでも配偶者との委任契約を解除できます(民法第651条第1項、会社法第339条第1項)。ただし、任期途中で解除した場合には、配偶者に生じた損害を賠償しなければなりません(民法第651条第2項、会社法第339条第2項)。
(2)未払い賃金を請求する余地あり
自営業者によって雇用された配偶者が、事業を無償(または低廉な報酬)で手伝っていた場合、未払い賃金を請求できる可能性があります。
雇用されている労働者に対して、使用者は最低賃金を支払わなければなりません(労働基準法第28条、最低賃金法)。労働者が配偶者でも同様です。
離婚に伴って未払い賃金を請求したい場合は、弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年03月22日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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