婚姻関係の破綻とは? 認められるケースは
長期間の別居などによって婚姻関係(夫婦関係)が破綻している場合、相手に対して離婚を請求できます。
今回は婚姻関係の破綻について、法律上の位置づけや破綻が認められやすいケースなどを解説します。
1. 婚姻関係の破綻とは?
婚姻関係の破綻とは、夫婦としての協力関係・共同生活が完全に失われており、回復の見込みがない状態です。
婚姻関係が破綻していることは、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法第770条第1項第5号)として法定離婚事由に該当します。
したがって、もし相手に離婚を拒否されても、婚姻関係が破綻していることを訴訟で立証すれば、判決によって強制的に裁判離婚を成立させることができます。
また、婚姻関係が破綻する原因を作った側は、配偶者に対して慰謝料の支払い義務を負う場合があります。
2. 婚姻関係の破綻が認められやすいケース
婚姻関係の破綻が認められやすいケースとしては、以下の例が挙げられます。
(1)長期間の別居
別居が長期間に及んでいる場合、夫婦の実態が失われ、かつ回復の見込みがないとして婚姻関係の破綻が認められる可能性があります。
婚姻関係の破綻に要する別居期間はケース・バイ・ケースですが、おおむね10年以上別居していれば婚姻関係の破綻が認定される可能性が高いです。
(2)DV・モラハラ
夫婦の一方が他方に対して暴力を振るっている場合(DV:ドメスティックバイオレンス)や、侮辱など精神的な攻撃を繰り返している場合(モラハラ:モラルハラスメント)には、婚姻関係の破綻が認められやすくなります。
DVやモラハラが行われている状況では、加害者側が夫婦の協力義務とは真逆の行動をとっており、被害者をその状況に縛り付けておくのは酷だからです。
DVやモラハラは、それ自体が「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たり得るものですが、一定期間の別居などの事情が併存している場合は、離婚原因として婚姻関係の破綻がいっそう主張しやすくなります。
(3)仕事に就こうとしない
相手方の求めがあるのに、夫婦の一方が仕事に就こうとせず、生活費などを一切分担していない場合には、婚姻関係の破綻が認められやすくなります。
夫婦は婚姻費用を分担する義務を負うところ(民法第760条)、仕事に就かない・生活費を分担しないなどの行為は、婚姻費用の分担義務を含む夫婦の協力義務を放棄するものだからです。
(4)飲酒・浪費・ギャンブルの悪癖
飲酒・浪費・ギャンブルなどの悪癖があり、そのせいで夫婦の関係性が極端に悪化し、または経済的に重大な支障が生じている場合には、婚姻関係の破綻が認められやすくなります。
過度なアルコール依存・浪費癖・ギャンブル癖は、夫婦の関係性に重大な悪影響を与え得るものであり、深刻な場合には改善の見込みも薄いと考えられるためです。
(5)犯罪行為・服役
夫婦の一方が重大な犯罪行為をした場合や、有罪判決を受けて長期間服役している場合には、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いでしょう。
刑務所に収監されてしまうと、夫婦生活を営むことが物理的に不可能となり、もう一方を婚姻関係に縛り付けておくことは妥当でないと考えられるためです。
(6)家庭を全く顧みない
勝手に出歩いてほとんど家に帰ってこない、家族と全く話そうとしないなど、家庭を顧みる態度が全く見られない場合にも、婚姻関係の破綻が認められやすくなります。
単身赴任など正当な理由がある場合を除き、同じ空間を共有してコミュニケーションをとることが夫婦生活の基本です。それを怠る態度が長期間続いている場合には、もはや夫婦生活を続ける気がなく、婚姻関係を破綻させていると評価されても仕方がありません。
3. 婚姻関係破綻後の不貞行為は損害賠償の対象外
婚姻関係が破綻した時点以降は、配偶者以外の者と性的関係を持ったとしても、特段の事情がない限り不法行為は成立しないと解されています(最高裁平成8年3月26日判決)。
不貞行為が不法行為に該当するのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利・法的利益を侵害する行為であるためです。しかし、婚姻関係が破綻している場合はこのような権利・法的利益が認められないので、不貞行為をしても不法行為が成立しないのです。
したがって、配偶者に不貞行為の慰謝料を請求しつつ、婚姻関係の破綻も主張する場合には、不貞行為と婚姻関係の破綻の前後関係に注意する必要があります。離婚請求に当たってどのような主張を行うべきかにつき、判断が難しい場合は弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2023年03月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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