
- 離婚・男女問題
親権を父親が獲得するために必要な4つの条件
離婚をする夫婦に子どもがいる場合には、どちらが子どもの親権を持つかで揉めることがあります。子どもに対する愛情は、父親でも母親でも変わりありませんが、一般的には、父親が親権を獲得することは難しいといわれています。
しかし、父親でも親権を獲得することができたケースもあるように、親権者になるための重要となるポイントを踏まえた主張を行うことによって、父親が親権を獲得することが可能になることもあります。
今回は、父親が親権を獲得するために必要な4つのポイントについて解説します。
1. 母親が親権を取りやすい理由は女性だからではない
一般的に父親と母親では、母親の方が親権を獲得しやすいといわれています。しかし、母親が親権を獲得しやすい理由は、母親が「女性」であるという理由ではなく、子どもの利益を踏まえた上での判断なのです。以下では、親権者を指定する際の調停や審判で家庭裁判所が考慮している基準について説明します。
(1)母性優先の原則
母性優先の原則とは、乳幼児など子どもの年齢が低いときには、母性が優先されるという原則です。この母性優先の原則によって、母親の方が親権獲得に有利であるといわれています。
しかし、母性優先の原則は、子どもの年齢が低いときには、きめ細やかな母性的な監護が必要という考えが根底にあります。
そのため、母性優先の原則は、親権者を「母親」にしなければならないという原則ではなく、一緒に生活をしていたときに主に子どもの面倒をみていた親が親権者に指定されるべきというものになります。
主に父親が家事や育児を担当しているという場合には、母性優先の原則のもとでも父親が親権を獲得できる可能性はあります。
(2)継続性の原則
継続性の原則とは、今まで子どもを監護・養育していた親が引き続き子どもを監護・養育すべきであるという原則をいいます。
離婚をすること自体でも子どもに多大な影響を与えるにもかかわらず、離婚によって引っ越しや転校をすることになると子どもに与える負担や影響はさらに大きくなります。
そのため、子どもと一緒に生活している親が引き続き親権者となることによって、できる限り今までの環境や生活を変えないようにしようという原則です。
(3)子どもの意思の尊重
親権者をどちらにするかに関してもっとも影響を受けるのは子どもです。そのため、子どもがある程度の年齢に達している場合には、親権者を決める際に、子どもの意思も考慮されることになります。
家庭裁判所の手続においては、子どもと両親がどのように接しているかを調査官が観察する手続も存在するため、子どもの意思は、そのままの意味での子どもの真意というより、第三者からの外部的評価を受けるものという意識は必要です。
2. 親権者になるために重要となる4つのポイント
父親が親権を獲得するのは難しいとされていますが、父親が親権を獲得することが不可能というわけではありません。父親として親権の獲得を目指す場合には、以下のポイントをおさえておくとよいでしょう。
(1)子どもの監護実績
母性優先の原則からすると、子どもを日常的に監護していた実績があるということが親権獲得にあたって有利に働きます。離婚後の親権者の指定は、どちらの親のもとで生活するのが子どもにとって幸せかという観点から判断されます。
これまで子どもを十分に監護してこなかった親が離婚後に適切に子どもを監護していくとは考えにくいので、親権を獲得しようとする場合には、自分が監護者として十分な実績があるということを主張していくとよいでしょう。
さらに、母親が育児放棄や家事放棄をしていて子どもの親権者としてふさわしくないという事情がある場合には、それを裏付ける証拠を収集しておきましょう。
(2)子どもへの負担の程度
離婚をすることによって、子どもには心身ともに多大な影響を及ぼします。父親が親権者となった方が、離婚後に転居も転校も必要ないという事情があれば、継続性の原則からすると親権の獲得にあたっては有利に働きます。
また、母親が子どもを連れて別居をしてしまい、離婚の話し合いが長期化した場合には、子どもが母親のもとで生活することに慣れてしまうことがあります。裁判所としては、現状を変えることに対して消極的ですので、そのような状況では母親が有利に扱われる可能性もあります。
離婚後の親権争いは、夫婦の別居の時点からすでに始まっていますので、安易に子どもを引き渡さないように注意が必要です。
(3)離婚後の養育環境
父親が親権を獲得しようとする場合にネックになるのが離婚後の養育環境です。多くの家庭では、父親が仕事をしていますので、仕事がある日は子どものために時間を割くことが難しくなります。
そのため、職場と相談をして勤務時間の変更が可能であるか、自分の両親が近くに住んでいる場合には不在時の監護の補助を頼めるかどうかなどを検討し、父親が親権を獲得したとしても養育環境には問題ないということを説得的に主張できるようにしなければなりません。
(4)離婚後の面会交流
離婚をすることによって、夫婦は他人になりますが、子どもにとっては母親・父親であることには変わりありません。親権を獲得しようとするのであれば、親権を獲得できなかった側の親と子どもとの面会交流を積極的に行うようにしましょう。
子どもとの面会交流が離婚後も適切に確保されているという事情は、親権の獲得にあたって有利に働くと考えられており、フレンドリーペアレントルールがどこまで重視されるかという議論は、最高裁まで争われたりもしました。
- こちらに掲載されている情報は、2022年04月15日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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