養育費が支払えない! 支払わないとどうなる? 対処法はある?

養育費が支払えない! 支払わないとどうなる? 対処法はある?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚時に養育費を取り決めたとしても、その後に転職、減給、病気などによって経済的に苦しくなり、当初取り決めた養育費の金額が支払えなくなることがあります。このようなやむを得ない事情によって養育費の支払いが滞ってしまったとしても、そのまま放置しておくのは非常に危険です。養育費の支払いが困難になった場合には、適切な手続きを踏むことによって、その支払いを減額または免除してもらえる可能性があります。

今回は、養育費の支払いを滞納したときのリスクや支払えなくなったときの対処法について解説します。

1. 養育費を支払わなかったらどうなるのか?

決められた養育費の支払いを行わず、養育費の支払いを滞納してしまうとどのようなリスクが生じるのでしょうか。まずは、養育費の不払いによって生じるリスクについて説明します。

(1)財産の差押え

養育費の支払いが滞った状態が続くと、債務者(養育費の支払い義務者)の財産(預貯金、給料など)が差し押さえられるというリスクがあります。

財産の差押えをするためには、債務名義を取得していることが必要になりますので、通常は、差押えの前に裁判を起こして判決を得る必要があります。しかし、協議離婚の際に執行認諾文言付き公正証書を作成していた場合には当該執行認諾文言付き公正証書が、離婚調停で離婚した場合は調停調書が、裁判により離婚した場合には判決書が債務名義になりますので、別途裁判を起こすことなく、直ちに強制執行をされてしまいます。

また、強制執行にあたっては差し押さえる財産を特定する必要がありますが、民事執行法の改正によって、第三者からの情報取得手続きが新たに創設されました。これにより、市町村や金融機関などに対して給料や預貯金に関する情報の開示を求めることができるようになったのです。従来は、財産を特定することができないという理由で諦めていた方も、強制執行がスムーズに行えるようになっています。

(2)刑事罰の適用

養育費の支払いについては法律上の義務ですが、支払いを滞ったとしてもそれ自体は犯罪ではないため、刑事罰が科されるということはありません。しかし、養育費を支払わない場合の財産開示手続きに応じなかった場合や虚偽の申請をした場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性があるので注意が必要です。

財産開示手続きは、債務者に対して強制執行の対象財産に関する情報開示を求める手続きをいい、従来は30万円以下の過料という行政罰のみが規定されていました。しかし、より実効性のある制度にするため、民事執行法の改正によって上記のとおり刑事罰に引き上げられています。

2. 養育費が支払えない場合の対処法

以上のように、養育費が支払えない状況であるからといって、そのまま放置するのはリスクがありますので大変危険です。養育費の支払いが難しい状況になった場合には、早めに対策を講じるようにしましょう。

(1)話し合い

経済的な理由などによって養育費の支払いが難しい状況になった場合には、まずは元配偶者に連絡をして、養育費の減額などを求めてみるとよいでしょう。きちんと事情を伝えることによって、当初決めた養育費が支払えない状況になっていることを理解してもらえれば、養育費の減額請求に応じてもらえる可能性があります。

また、事情を説明することで支払う意思があることが伝わり、いきなり強制執行をされるというリスクも回避することが期待できます。

減額後の養育費をいくらに設定するのかについては、お互いの話し合いによって決めることになりますが、自分自身では判断できないという場合には、弁護士に相談してみるのも有効な手段といえます。

(2)養育費減額調停を申し立てる

話し合いをしたものの養育費の減額に応じてくれないという場合や、そもそも話し合いに応じてもらえないという場合には、家庭裁判所に対して養育費減額調停を申し立てましょう。

調停では、養育費を変更すべき事情が認められる場合には、現在のお互いの収入などに応じた適切な養育費を提示してもらうことができます。双方が金額に納得することができれば調停成立となり、養育費の減額が認められることになります。

お互いに合意ができず調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判官が一切の事情を踏まえて、養育費を減額すべきかどうかや、減額後の養育費の金額を判断することになります。

養育費の支払い義務者に収入がなく、今後も収入が見込めないという場合には、養育費の減額ではなく支払いが免除される可能性もあります。養育費の支払いが経済的に厳しい状況になった場合には、弁護士に相談をするなどして早めに対応することが非常に重要です。

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