再婚禁止期間がある理由とは? 民法改正で何が変わったのか

再婚禁止期間がある理由とは? 民法改正で何が変わったのか

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

女性は離婚後100日間が経過するまで、原則として再婚ができないことをご存じでしょうか。女性にだけ設けられている、再婚禁止期間という規定(民法第733条1項)です。なぜこのような制度があるのか、そして禁止期間中でも例外的に再婚できる場合はあるのかなど、再婚禁止期間について解説します。

1. 再婚禁止期間とは?

民法第733条1項には、「女は、前婚の解消または取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」と規定されています。

この再婚禁止期間は、前夫と後夫で、生まれた子どもの父親の推定が重なるのを防止することを目的としています。父親がどちらなのかわからないということは、扶養義務を負う父子関係で争いが起きかねず、子どもの安定的な身分や権利が危ぶまれるからです。

さらに民法第772条では、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子、再婚した日から200日以降に生まれた子は後夫の子と推定する、とされています。つまり再婚して200日未満で妊娠すると、前夫が父親として推定されるということです。ただし、離婚から100日経過後に再婚すれば、200日未満の妊娠であっても後夫が父親と推定されます。

なお、再婚禁止期間の“100日”という期間は、2016年の改正民法以前には、6か月すなわち180日程とされていました。

しかし、6か月は合理性を欠く長さであるという問題は以前から指摘されており、この長すぎる再婚禁止期間のため再婚が遅れ、精神的損害を被ったとして国に損害賠償を求める訴訟が起きました。そして、2015年12月16日、最高裁で“100日を超える部分についてのみ”憲法第14条、第24条との関係で違憲であるという判決が下されました。

この違憲判決を受けて翌年2016年に民法が改正され、再婚禁止期間は6か月から100日間に短縮され、100日経過していなくても例外的に再婚できる規定についても新設されました。

現在の100日の再婚禁止期間は、“女性の婚姻の自由”と“父子関係の早期安定”を天秤にかけて決められた折衷案ですが、それでもいまだに批判は根強く残っています。

再婚禁止期間の規定が初めて設けられたのは明治時代です。科学技術が発達した現代においては、婚姻状態に関係なくDNA鑑定により正確な父子関係を判断することが可能です。

そのため、「憲法第24条に掲げられている両性の本質的平等を制限してまで、生まれた時期のみによる父性推定を優先させるべきなのか」「むしろ民法第733条1項を廃止して父性推定規制の方を改正すべきだ」などという意見も上がっています。

欧米先進国や近隣国では女性のみを対象とする再婚禁止期間そのものが既に廃止されており、日本は国際社会から取り残された状態です。

2. 例外として再婚できるケース

例外として100日以内に再婚できるケースもあります。以下に詳しく解説します。

(1)離婚した時点で妊娠していない(民法第733条第2項)

2016年の改正民法で新設されたルールです。再婚禁止期間中でも、『民法第733条第2項に該当する旨の証明書』を婚姻届に添付して市区町村役場に提出すれば、再婚できるという規定です。証明書は、医師により妊娠していないことの診断結果を記載してもらう必要があります。

(2)前婚の解消又は取消しの後に出産した(民法第733条第2項)

離婚後100日以内に出産した場合も、『民法第733条第2項に該当する旨の証明書』に、再婚前に妊娠した旨を医師に記載してもらうことで、再婚禁止期間中に再婚できます。この場合は、前夫が父親と推定されます。

(3)妊娠する可能性がない

妊娠可能年齢を超えている、子宮摘出手術を受けているなどの理由で妊娠する可能性がない場合には、父性推定が重複するおそれがないため再婚禁止期間中でも再婚が可能です。

(4)離婚した前夫と再婚する

離婚した前夫と再婚する場合も、父性推定が重複するおそれがないため、再婚禁止期間に関係なく再婚できます。再婚禁止期間中であっても、前夫との婚姻届を市区町村役場に提出する際には証明書などの添付は不要です。

(5)前夫が行方不明、収監されている

前夫が長期間行方不明であったり、収監されている場合には、前夫の子を妊娠することが物理的に不可能であるため、上記と同じ理由で再婚禁止期間中でも再婚可能とされています。

3. 期間中に再婚したらどうなるか?

再婚禁止期間中に市区町村役場に婚姻届を提出しても、前述の例外的なケースに該当しないかぎり受理されません。ただし、万が一何らかの手違いで受理されてしまい、再婚禁止期間の規定に違反したとしても、罰則などはありません。

前夫と後夫の両方が父親として推定される場合には、父を定めることを目的とする訴えを裁判所に提起して、父親を確定させる必要があります。父親を早い段階ではっきりとさせないと、戸籍に「父未定の子」と記載されるなど、子どもの立場が不安定になり、福祉に悪影響を及ぼすおそれがあります。

もし何らかの事情があり、再婚期間禁止中の結婚を希望する場合は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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