事実婚での親権はどうなる? 争いが生じた場合の対応も解説

事実婚での親権はどうなる? 争いが生じた場合の対応も解説

事実婚のカップルの間に子どもが産まれた場合、または関係を解消する場合に特に気になるのが「子どもの親権」でしょう。

事実婚の間に生まれた子どもの親権については、法律婚とは異なるルールが適用されます。仕組みを知らずに進めると、思わぬトラブルになりかねません。

本コラムでは、事実婚における親権のルールや、親権者を変更する手順を解説します。裁判所が重視する判断基準や、親権を獲得するために準備すべきポイントもまとめました。

1. 事実婚の親権の取り扱い

まずは、事実婚での親権に関する取り扱いを確認しましょう。

(1)事実婚の親権は「母」が持つのが原則

婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもの親権は、原則として母親が単独で持ちます。出産したという事実から、子どもとの親子関係が客観的に明らかだからです。

また、生まれた子どもは母親の戸籍に入り、母親の名字を名乗ります。

(2) 事実婚で「父」が親権を持つには

では、事実婚カップルで男性(生物学上の父)が子の親権を持つことはできるのでしょうか。

親権を獲得できるそもそもの前提として、生物学上の父であっても、子どもと法律上の親子関係を結ぶには、以下いずれかの手続きが必要です。

①子どもを授かった場合:認知

父親が子どもを「認知」すれば、子どもとの間に法律上の親子関係が生じます。認知の方法は、主に以下の4つです。

  • 胎児認知

    子どもが生まれる前の段階で、役所に認知届を提出する

  • 任意認知

    子どもが出生した後、役所に認知届を提出する

  • 強制認知

    子どもや母親が、裁判所の手続きを経て父親に強制的に認知を求める

  • 遺言認知

    遺言書によって認知する

認知はあくまでも法律上の父子関係を発生させるにとどまり、それだけでは親権を持てません。

父親が親権を持つには、認知後に父母で話し合い、母親から父親に親権者を変更する手続きが必要です。なお、事実婚の場合、子の父母が共に親権を持つことは認められていません。

②相手に連れ子がいる場合:養子縁組

「養子縁組」を利用すれば、パートナーの連れ子と法律上の親子になれます。養子縁組とは、血縁関係のない者同士が法律上の親子関係を作り出す制度です。

ただし、養子縁組をすると「養親」が単独で親権を持ち、実親は親権を失います。

(3)共同親権をめぐる現状

現在、2026年4月1日に施行される改正民法により、「離婚後の共同親権制度」の導入が決まっています。しかし、この制度はあくまで「離婚した夫婦」を対象としたものであり、今のところ、事実婚のカップルには適用されない予定です。

共同親権について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

2. 事実婚解消後に親権を変更する方法

事実婚を解消した後に父親が親権を持つには、所定の手続きが必要です。

実際の手続きの流れを、順を追って解説します。

(1)話し合いで親権者を変更する

事実婚で父親が子どもを認知している場合、夫婦で話し合い、母親の同意を得れば親権者を変更できます。

この場合、役所に「親権管理権届(親権者変更届)」を提出すれば、手続きは完了します。

(2)親権者変更調停を申し立てる

話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「親権者変更調停」を申し立てます。調停は、調停委員が間に入り、話し合いでの解決を目指す手続きです。

  • 必要書類

    申立書、当事者目録、申立人・相手方・子どもの戸籍謄本など

  • 費用

    子ども1人につき収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手代1000円程度

調停でも話がまとまらず不成立となった場合、自動的に「親権者変更審判」へ移行します。審判手続きでは、裁判官が一切の事情を考慮して、親権を変更するか判断します。

3. 親権者の変更にあたり裁判所が重視する要素

事実婚を解消する際、母親が親権を持ちやすい傾向があります。しかし、絶対に父親が親権を持てないわけではありません。

調停や審判では、裁判所がさまざまな要素をふまえて、どちらが親権者にふさわしいかを決めます。「父親が育てるほうが子どもにとって幸せだ」と認められれば、父親でも親権を持てるので、諦める必要はありません。

裁判所が重視する要素は、主に以下の6つに集約されます。

親権者の変更にあたり裁判所が重視する要素

(1)現在の親権者の意向

現在親権を持っている母親に、親権を譲る意思があれば、スムーズに変更できるケースが多いです。

(2)養育実績、子どもとの情緒的結びつき

これまで実際にどちらが主となって子育てをしてきたか(食事、入浴、寝かしつけなど)が考慮されます。また、子どもとの情緒的な結びつきも考慮されます。

(3)経済状況

親権者になろうとする者に子どもを育てていくための十分な収入や資産があるかを確認します。ただし、生活費は一方からの養育費の支払いによっても賄えるので、必ずしも収入が高いほうが選ばれるわけではありません。たとえば、収入や資産の少ない側が親権を持ち、多い側が養育費を支払うとの取り決めを行うことも可能です。

(4)健康状態

親権者になろうとする者が心身ともに健康であるかどうかも大切です。

健康状態が悪く、子どもの日常的な世話ができないと判断されると不利になります。ただし、持病があっても日常の世話に問題がなければ、親権を持てるケースもあります。

(5)子どもの生活環境

子どもが今の環境に慣れていて、健康に育っているなら、そのままの環境で暮らすのが良いとされます。

(6)子どもの意向・年齢

子どもが15歳以上の場合は、必ず本人の話を聞かなければなりません。

15歳未満であっても、10歳前後からは子どもの気持ちが重視される傾向にあります。年齢や精神的な成長の度合いに合わせて、本人の意思が尊重されます。

4. 親権を勝ち取るためのポイント

裁判所に親権を認めてもらうために、以下3つのポイントを押さえておきましょう。

(1)安定した収入と養育環境を確保する

子どもが経済的に困らず、安心して暮らせる環境があることを示す必要があります。

そのためにも、以下のような準備をしておきましょう。

  • 生活費を賄えるだけの継続的な収入を確保する
  • 子どもと暮らすための住居環境を整える
  • 残業を減らすなど、子どもと過ごす時間を作れるように職場と調整する
  • 実家の両親など、育児を手助けしてくれる人を確保する

(2)証拠を集める

自分が親権者にふさわしいことを証明するための「証拠」を集めるのも重要です。

また、相手が親権者にふさわしくない事情(虐待や育児放棄など)があれば、その証拠も集めておくと説得力が増します。

【集めておくべき証拠の例】

種類 具体的な中身
自分の養育実績 保育園の連絡帳、育児日記、子どもと遊んでいる写真や動画(撮影日時がわかるもの)学校行事に参加した記録など
相手の問題点 暴言や暴力の録音・録画、ケガの写真、医師の診断書など

(3)離婚問題を得意とする弁護士に相談する

親権争いを有利に進めるには、離婚問題を得意とする弁護士への相談が欠かせません。

弁護士に頼むと、以下のようなメリットを得られます。

  • 法的な主張ができる

    自身が親権者としてふさわしい理由を、調停委員や裁判官に説得力を持って伝えてくれます。

  • 手続きを任せられる

    裁判所に出す書類の作成や、証拠の整理を任せられます。

  • 精神的に楽になる

    手続きや相手とのやり取りも弁護士が代行してくれるので、精神的負担が減ります。

親権争いでは、しっかりとした準備が大切です。だからこそ、早い段階で弁護士に相談しましょう。

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

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  • こちらに掲載されている情報は、2026年02月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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