事実婚での財産分与はどうなる? 法的根拠や対象財産について解説

事実婚での財産分与はどうなる? 法的根拠や対象財産について解説

倉内 怜

監修弁護士

倉内 怜 ベリーベスト法律事務所 新宿オフィス

第二東京弁護士会 / 登録番号:59047

事実婚(内縁)の関係にあっても、一定の条件を満たせば財産分与を請求できます。
財産分与は、本来、法律婚を前提とした制度ですが、事実婚でも「法律婚に準じる実態」があれば類推適用が認められています。
ただし、事実婚の場合、法律婚に準じる関係にあったことの立証が難しく、死別時に財産を取得した場合は相続税が課税される可能性があることなど注意すべき点も少なくありません。
今回は、事実婚における財産分与の基本的な考え方や請求手順、注意点をわかりやすく解説します。

1. 事実婚でも財産分与はできる?法的な考え方を整理

事実婚で財産分与が認められるかどうかは、法律婚と同じ生活実態があったかどうかによって決まります。以下では、事実婚における財産分与の根拠や条件、裁判例の考え方などを説明します。

(1)財産分与の法的根拠

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産を、離婚時に公平に分けるための制度です(民法768条1項)。
財産分与は、本来、婚姻届を提出した「法律婚」を前提とした制度ですが、事実婚(内縁)についても生活実態が法律婚と同様であれば、性質に反しない範囲で婚姻に関する規定が類推適用(※)されると考えられています。

事実婚とは、婚姻の意思を持ち夫婦として共同生活を営んでいるにもかかわらず、形式的に婚姻届を提出していない関係を指します。
事実婚であれ、夫婦としての実態が存在する場合には、その共同生活の中で形成された財産は法律婚と同様に互いの協力によって築かれたものと評価できます。そのため、事実婚であっても財産分与の制度を準用すべきという考え方が一般的です。

倉内 怜

弁護士
倉内 怜

事実婚解消の際、財産分与対象となるのは、法律婚の財産分与と同様に、事実婚の間に、夫婦で協力して築き上げた財産です。名義がとぢらかは関係ありません。なお、相続財産や、事実婚関係になる前から所有していた財産などは、財産分与対象にはなりません。

※類推適用:条文の対象外であっても、同様の趣旨に基づき規定を当てはめる法解釈。

(2)事実婚が「法律婚に準じる関係」と認められる条件

以下のような事情があると、「法律婚に準じる関係」であるとして、事実婚でも財産分与が認められる可能性があります。

【事実婚でも財産分与が認められる判断ポイント】①一定期間の同居(共同生活と経済的一体性) ②準婚姻契約書 ③同性パートナーシップ制度 ④子どもがいる場合、認知や養子
  1. 一定期間の同居(共同生活と経済的一体性)

    夫婦として同居し、生活費・家計の負担や家事分担などの共同生活が一定期間継続しているかが重要です。

  2. 準婚姻契約書

    婚姻意思や財産の扱いを記載した準婚姻契約書があると、事実婚の証拠として有力です。

  3. 同性パートナーシップ制度

    自治体のパートナーシップ制度を利用している場合、婚姻意思や共同生活の実態を示す証拠となります。

  4. 子どもがいる場合、認知や養子縁組の事実

    子どもがいる場合、その認知や養子縁組が事実婚関係を補強する事情になります。

(3)事実婚解消時の財産分与を認めた裁判例

広島高等裁判所松江支部昭和40年11月15日決定では、長期間の同居、経済的な協力、社会的にも夫婦として扱われていた事情などから、事実婚関係を「法律婚に準じる関係」と認め、民法768条の財産分与規定を類推適用しました。
事実婚においても財産分与が可能であることを示した代表的な裁判例とされています。

参考:広島高等裁判所松江支部昭和40年11月15日

(4)パートナーと死別した場合は、財産分与は認められない

事実婚の場合、相続権は認められません。
そのため、パートナーとの離別の場合には財産分与の類推適用が認められても、死別の場合には相続規定の類推適用は許されず、原則として相続によって財産を取得することはできません。
対策としては、生前贈与や遺贈を定めた遺言書を作成しておく必要があります。
ただし、法定相続人には遺留分が認められるため、遺言内容がそのまま実現しない可能性もある点に注意が必要です。

2. 事実婚の相手に財産分与を請求する手順

実際に事実婚の相手に財産分与を求める場合、まずは話し合いによる解決を試み、その後家庭裁判所の手続きに進むのが一般的な流れです。

(1) 当事者同士で協議する

まずは当事者同士で財産の分け方について話し合います。合意できた内容は、覚書や合意書として書面に残すことで、後のトラブル防止につながります。

(2)内縁関係調整調停を申し立てる

話し合いで解決できない場合、家庭裁判所の内縁関係調整調停を利用します。調停委員を介して話し合い、合意すれば調停成立となります。
調停の申し立てにあたっては、以下の書類が必要になります。

  • 申立書

  • 事情説明書

  • 事実婚の実態を示す資料

  • 財産関係の資料

(3)審判に移行する

調停が成立しない場合には、財産分与審判を申し立てることになります。裁判官が資料と主張に基づき財産分与の可否や割合を決定します。審判では、法的根拠に基づいて内縁関係を立証しなければなりませんので、適正な財産分与を受けるためにも弁護士に依頼することを検討するとよいでしょう。

倉内 怜

弁護士
倉内 怜

内縁の場合、法律婚解消のための離婚裁判のような内縁解消の裁判というものは存在しません。当事者において同居などを解消してしまえば内縁は解消となるからです。そして、内縁関係調整調停で解決しなかった場合、別途財産分与の審判を申し立てなければいけなくなります。

3. 事実婚で財産分与をする際の注意点

事実婚で財産分与を請求する際には、証明のハードルや税務上のリスクなど特有の注意点があります。以下では、事実婚で財産分与をする際に押さえておくべきポイントを紹介します。

(1)事実婚の証明は難しい場合がある

事実婚は、婚姻届を提出していないため、婚姻関係を客観的に証明する公的な書類が存在しません。そのため、法律婚の夫婦と比べると、関係の実態を証明するハードルが高くなる傾向があります。裁判所や調停では、「実際に夫婦として生活していたか」を複数の資料から総合的に判断します。

【代表的な証拠資料】

  • 同一住所の住民票(世帯主欄も重要)
  • 共同名義の賃貸借契約・住宅ローン・不動産登記
  • 共通の銀行口座・家計の運用実態(生活費の負担割合)
  • 光熱費・通信費の名義や支払い状況
  • 2人で写っている写真、旅行の記録、生活メモ
  • メール・LINE・SNSのメッセージのやり取り
  • 親族・友人が夫婦として認識していた証言
  • 自治体のパートナーシップ制度の届出
  • 準婚姻契約書や同居契約の存在

個別の資料だけでは弱いため、複数の証拠を組み合わせることが極めて重要です。

(2)贈与税が課税される場合がある

事実婚として認められない場合は、財産分与制度を使うことができず、財産を渡すには「贈与」と扱われる可能性があります。贈与は、税務上、贈与税が課税されるため、高額な税負担が生じるおそれがあります。
税務署は、実態を重視して判断するため、相手が事実婚と認めてくれない、生活実態の証拠が乏しいといったケースでは特に注意が必要です。
税務判断は専門的なため、必要に応じて税理士への相談も検討すると安心です。

(3)請求には期限がある

事実婚の財産分与請求は、事実婚解消後2年以内に行う必要があります。この期限を過ぎてしまうと原則として請求できません。
時間が経つと証拠も集めにくくなるため、別居や関係解消の話が出た段階で早めに動くことが大切です。調停や審判に進む場合は時間がかかることも多いため、余裕を持った対応が求められます。

4. 財産分与を認めてもらいたい場合は、弁護士に相談しよう

事実婚の財産分与は、事実婚の証明、財産の把握、調停・審判の対応など、専門的な判断が必要になる場面が多くあります。スムーズに話を進め、請求を認めてもらうためには、早い段階で弁護士に相談することが非常に有効です。

(1)財産調査を依頼できる

事実婚の財産分与では、相手が財産を開示してくれないケースも少なくありません。
弁護士であれば、弁護士会照会や調査嘱託を通じて財産の全体像を把握し、財産隠しの有無をチェックできるので、正確な財産状況を明らかにすることが可能です。

(2)事実婚の証明をサポートしてくれる

事実婚を成立させるためには複数の資料が必要で、どの証拠をどう示すかが結果を左右します。
弁護士は、どの資料が有効か、どのように主張すべきかを整理し、調停や審判で認められやすい形に整えてくれます。

(3)手続きを代行してくれる

家庭裁判所への調停申し立てや、相手方との交渉、提出資料の作成など、煩雑な手続きを弁護士が代行します。精神的負担が軽減されるだけでなく、スムーズに手続きが進むメリットもあります。

(4)遺言書の作成をサポートしてくれる

事実婚では死別時に相続権がないため、相手に財産を残したい場合には遺言書が欠かせません。
弁護士に相談すれば、法的に有効な形式で遺言書を作成するサポートを受けられ、将来のトラブル予防にも役立ちます。

倉内 怜弁護士によるポイント解説

事実婚の場合、事実婚であることの証明から始めなければいけないため、法律婚より証明すべき事項が増えます。また、相手方の財産調査は困難となることも多く、財産の評価も問題になります。さらに手続選択も迷われることが多いと思いますので、弁護士に相談して、最適な助言を得ることが大切になってきます。
倉内 怜

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

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  • こちらに掲載されている情報は、2026年04月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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