別居中の婚姻費用の相場と算定方法、払ってくれないときの対処法は?

別居中の婚姻費用の相場と算定方法、払ってくれないときの対処法は?

倉内 怜

監修弁護士

倉内 怜 ベリーベスト法律事務所 新宿オフィス

第二東京弁護士会 / 登録番号:59047

離婚を見据えて別居を始めたものの、経済的な不安を感じてはいませんか?
とくに、専業主婦や収入が少ない方にとって、別居中の生活費は深刻な問題です。このような場合に活用できるのが「婚姻費用」の制度です。

婚姻費用とは、夫婦が別居していても、生活を維持するために一方の配偶者から受け取る生活費のことをいいます。これは法律上の義務であり、話し合いや調停・審判を通じて請求できます。

本記事では、別居中に受け取れる婚姻費用の相場や計算方法、実際に請求する手続きの流れ、相手が支払ってくれないときの対処法まで、わかりやすく解説します。

1. 婚姻費用とは?

別居中の経済的不安を解消するなら「婚姻費用」の請求を検討しましょう。以下では、婚姻費用の概要と請求できるケース・できないケース、婚姻費用の内訳・期間について説明します。

(1)婚姻費用は別居中も請求できる生活費

婚姻費用とは、夫婦が婚姻期間中における通常の社会生活を維持するために必要な費用のことを指します。これは、民法760条に基づく義務であり、夫婦は互いに協力し、扶助し合う義務があるため、別居していたとしても生活費を分担しなければなりません。

したがって、夫婦の一方が別居した場合、収入の少ない側(権利者)は、相手(義務者)に対して、婚姻費用を請求できます。

(2)婚姻費用を請求できるケースとできないケース

婚姻費用の分担は、法律上の義務ですが、具体的な状況によっては婚姻費用を請求できないケースもあります。

以下では、婚姻費用を請求できるケースとできないケースを紹介しますので、あなたがどちらに該当するかを見極めることが大切です。

①婚姻費用を請求できるケース

婚姻費用を請求できるケースとしては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 収入格差がある場合(例:妻が専業主婦、夫が会社員)
  • 収入は同程度でも、子どもを引き取って養育している
  • 離婚協議中や離婚調停中であっても、まだ離婚が成立していない

このように、夫婦関係が継続している限りは、生活に必要な費用として婚姻費用を請求できます。

②婚姻費用を請求できないケース

一方で、婚姻費用が認められない、または減額される可能性があるケースもあります。

  • 正当な理由なく別居を開始した(例:一方的に家を出て行った場合)
  • 離婚がすでに成立している
  • 請求者が十分な収入を得ており、扶助の必要性が低い

ただし、婚姻費用分担請求の調停ないし審判が続いている場合に離婚が成立した後であっても、その成立前までの期間に発生した婚姻費用については、さかのぼって請求できます(最高裁令和2年1月23日決定)。

(3)婚姻費用の具体的な内訳

婚姻費用には、さまざまな費用が含まれます。その主な内訳は、以下のとおりです。

  • 生活費:食費、水道光熱費、日用品の購入費用など
  • 住居費:家賃、住宅ローン、管理費など
  • 医療費:通院費、入院費、薬代など
  • 養育費:子どもの生活費、教育費(学費、教材費、塾代など)、医療費など
  • その他:交際費、娯楽費など

とくに、子どもがいる場合には、子どもの養育にかかる費用も含まれるため、婚姻費用の額はその分増加します。

倉内 怜

弁護士
倉内 怜

(「婚姻費用算定表」により算定される養育費には、公立学校の費用が含まれており、私立学校の費用や塾代は含まれていませんが、義務者の承諾があるか、義務者の収入や学歴、資産状況、生活状況などから義務者に負担させることが相当と認められる場合には増額可能性があります。)

(4)婚姻費用を請求できる期間

婚姻費用は、別居を開始した日から離婚が成立した日、または同居を再開した日までの期間に対して請求できます。過去にさかのぼって婚姻費用を請求できますが、実務上は請求日以降が対象となりますので、早めの対応が重要です。

2. 婚姻費用の相場と計算方法|算定表の使い方

婚姻費用は、裁判所の「婚姻費用算定表」を利用することで相場となる金額を把握できます。以下では、婚姻費用の相場と計算方法を説明します。

(1)婚姻費用の相場は4万円〜15万円

婚姻費用の相場は、家庭の収入状況や子どもの人数・年齢などによって異なりますが、一般的には月額4万円〜15万円程度が相場とされています。
たとえば、令和6年版の司法統計年報によると、家庭裁判所で扱われた婚姻関係事件のうち「婚姻継続」となり婚姻費用が定められた事案における、支払い額別の割合は、以下のようになっています。

  • 10万円を超え15万円以下……20.1%
  • 6万円を超え8万円以下……14.1%
  • 8万円を超え10万円以下……13.6%
  • 4万円を超え6万円以下……13.0%

なお、これはあくまでも一般的な相場ですので、実際の金額は、夫婦の収入や子どもの年齢・人数など個別具体的な状況に応じて計算していく必要があります。

(2)裁判所の「婚姻費用算定表」による具体的な計算方法

婚姻費用を計算する際には、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を用いるのが一般的です。

参考:婚姻費用算定表(家庭裁判所)

算定表では、夫婦それぞれの年収と子どもの人数・年齢をもとに、標準的な婚姻費用額が示されています。計算時には、収入の種類によって見方を変える必要があります。

  • 給与所得者の場合:源泉徴収票や給与明細をもとに年収を確認
  • 自営業者の場合:確定申告書の所得金額を参考にする

また、子どもの年齢が15歳以上になると、教育費などの負担が重くなるため、算定額も上昇する傾向にあります。

なお、弁護士に相談すれば、正確に婚姻費用を算定してくれますので、婚姻費用の計算に不安がある方は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

3. 婚姻費用の請求方法は?

婚姻費用を請求するには、次のような手順で進めるのが一般的です。

(1)夫婦間の話し合い

まずは、夫婦間での話し合いによる解決を目指します。その際は、婚姻費用算定表を利用することで相場を踏まえた話し合いが可能になるため、スムーズに合意できる可能性が高くなります。

なお、話し合いにより婚姻費用に関する合意がまとまったときは、後々のトラブルを避けるためにも、文書に残しておくことをおすすめします。

(2)婚姻費用分担請求調停

話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。調停では、調停委員を介して話し合いを進めるため、冷静な話し合いがしやすくなります。

調停で合意が成立すれば、その内容をまとめた調停調書が作成され、将来的に強制執行が可能です。

(3)審判

調停でも合意に至らなかった場合は、最終的に家庭裁判所が審判という形で婚姻費用の金額や支払い方法を決定します。

4. 相手が婚姻費用を払ってくれないときの対処法

婚姻費用の合意や調停・審判が成立しても、相手が支払いに応じないことがあります。このような場合には、以下のような対処法を検討しましょう。

(1)履行勧告・履行命令の申し立て

調停や審判の結果をもとに、家庭裁判所に「履行勧告」や「履行命令」の申し立てを行うことができます。これは裁判所が相手方に支払いを促す制度ですが、強制力がないため実効性に乏しいといえます。

そのため、支払いを拒否された場合は、次の強制執行の手続きが現実的な対応となります。

(2)強制執行を申し立てる

調停調書や審判書、公正証書などの「債務名義」があれば、相手の財産に対して強制執行を申し立てることが可能です。たとえば、相手の給与や預貯金を差し押さえることで、未払い分の婚姻費用を強制的に回収できます。

強制執行は専門的な手続きが必要となるため、弁護士に依頼するのが安心です。

倉内 怜

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(預貯金の差押えの場合には、請求額に満つるまで、差押え時点での預貯金残高を差し押さえることが可能です。給与の差押えの場合には、毎月の給料全額を差し押さえることはできませんが、将来発生する給与の差押えも可能です。)

5. 弁護士に相談するメリット

婚姻費用の問題は、夫婦間の感情的な対立や法的な手続きが絡み、個人で対応するのは大きな負担となります。そのような場合は、以下のようなメリットがありますので弁護士に相談するのがおすすめです。

  • 正確な婚姻費用の算定ができる
  • 裁判所への調停申し立てや審判対応を任せられる
  • 相手方との交渉や書面作成も一任できる
  • 強制執行まで一貫してサポートしてもらえる

弁護士に依頼することで、精神的な負担を軽減しながら、適正な生活費を確保することが可能になります。

別居や離婚を見据えた生活を安定させるためにも、早めに法律の専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。

倉内 怜弁護士によるポイント解説

(自分で対応してしまうと、金額の算定で不利な金額になってしまったり、本来であれば相手にも請求できた費用を盛り込むことができなかったりなど、不利益を被る可能性があります。また、取り決めの際には予測できていなかったことが起こり、将来事情が変更した場合には請求額の変更を求めることも可能です。)
倉内 怜

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第二東京弁護士会 / 登録番号:59047

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  • こちらに掲載されている情報は、2026年04月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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