離婚理由や原因から考える、決断前の5つの判断軸

離婚理由や原因から考える、決断前の5つの判断軸

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚を考えるきっかけは人それぞれですが、「本当に離婚すべきか」「まだ関係を修復できるのではないか」と迷う気持ちは、多くの方が抱える悩みです。

離婚後に後悔しないためにも、事前に考えておきたいポイントを押さえることが大切です。

本コラムでは、離婚理由や原因にはどのようなものがあるか整理しつつ、離婚する前に確認しておきたい5つのポイントを紹介します。

1. 離婚原因から見える離婚の現実とは?

まず、実際にどんな理由で離婚を申し立てる人が多いのか、確認しておきましょう。

(1)男女別の離婚原因TOP5

令和6年の家庭裁判所への離婚調停などの申し立て動機を集計した司法統計年報(家事編)によると、男女別の離婚原因TOP5と、その割合は以下のとおりです。

順位 男性側(割合) 女性側(割合)
1位 性格の不一致(59.9%) 性格の不一致(38.3%)
2位 精神的に虐待する(21.8%) 生活費を渡さない(28.9%)
3位 異性関係(11.8%) 精神的に虐待する(26.2%)
4位 浪費する(11.4%) 暴力をふるう(17.8%)
5位 家族・親族との折り合いが悪い(11.0%) 異性関係(13.3%)

※複数回答あり

出典:令和6年 司法統計年報(家事編 第19表)

男女ともに最も多いのが「性格の不一致」で、男性側が約6割、女性側が約4割を占めています。

(2)「性格の不一致」とは?

離婚原因として挙げられる「性格の不一致」とは、一般的には、生まれ持った性格や育った環境の違いから生じる考え方や価値観のズレを広く表す言葉として使われています。

具体的には、以下のような状態を指します。

  • 考え方や価値観の違い

    例:将来設計、家族関係の考え方

  • 金銭感覚の違い

    例:貯蓄に関する考え方、お金の使い方

  • 子どもの教育方針の不一致

    例:進路の方針、しつけの方針

性格の不一致が続くことで、夫婦間でストレスが溜まり、「結婚生活をこれ以上続けるのは無理だ」と感じてしまうのです。

2. 離婚前に確認しておきたい5つのポイントとは?

勢いで離婚してしまうと、のちに後悔したり、離婚後の生活がうまくいかなくなったりする可能性もあります。

離婚を本当に選ぶべきかどうかを見極めるためにも、ここで紹介する5つのポイントを事前に確認しておきましょう。

離婚前に確認すべき5つのこと。離婚を決断する前に熟考すべき事項を紹介。

(1)離婚を急ぐ必要が本当にあるのか

感情が高ぶっているときや、ケンカの直後などは「もう離婚する!」と一気に気持ちが傾いてしまうかもしれません。

しかし、あとから冷静になったときに「やっぱり話し合って解決できたかもしれない」と後悔する可能性もあります。

離婚を急ぐ理由が本当にあるのか、今一度考えてみましょう。

(2)話し合いで解決できる可能性は残っていないか

離婚原因によっては、実は話し合いや工夫で解消できる場合があります。

夫婦間の対話が難しい場合でも、家庭裁判所の調停を利用したり、夫婦カウンセリングを受けたりすることで、関係修復の糸口が見つかることもあります。

話し合いの余地が本当にないのか、慎重に判断しましょう。

(3)離婚後の生活費や住まいの確保が可能か

離婚後の生活をどうするか考えておくのも重要です。

たとえば、以下のような点を離婚前に確認しておきましょう。

  • 住まいについて

    今の家に住み続けるか、新居に引っ越すか

  • 生活費について

    家賃や生活費をどのように捻出するか

また、離婚前でも別居していれば、必要に応じて「婚姻費用」を請求しましょう。婚姻費用とは、婚姻中に夫婦や子どもが通常の社会生活を維持するために必要な生活費をいいます。

(4)子どもの生活環境や教育への影響はどうか

子どもがいる家庭では、離婚の影響が子どもに及ぶことも忘れてはなりません。

離婚後も子どもが安心して生活できるように、以下のような点をしっかり話し合って決めておく必要があります。

  • 親権

    子どものために監護や教育を行い、財産を管理する権限および義務

  • 養育費

    子どもの監護や教育に必要な費用

  • 面会交流

    子どもが、親権者ではない親と定期的に交流すること

また、離婚後に育児と仕事をどのように両立するか、保育やサポート体制についても具体的に考えておきましょう。

(5)財産分与や年金分割など経済面の見通しは立っているか

離婚後は、これまで夫婦で支えてきた生活を自力で支える必要があります。とくに、専業主婦(主夫)だった方やパート勤務の方にとっては、収入面の不安が大きいかもしれません。

事前に資産や収入、支出の状況を整理し、離婚後のライフプランを明確にしておくことが大切です。

また、以下のような制度を活用できるか確認しておきましょう。

  • 財産分与

    婚姻中に夫婦で築いた財産を公平に分割する制度

  • 年金分割

    婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割する制度

3. 離婚する方法とは?

離婚には、主に以下の4つの方法があります。

  1. 協議離婚

    夫婦間の話し合いで離婚を成立させる方法

  2. 調停離婚

    家庭裁判所の調停委員を介した話し合いで離婚を成立させる方法

  3. 審判離婚

    家庭裁判所の判断によって離婚を成立させる方法

  4. 裁判離婚

    裁判により離婚を成立させる方法

4つの方法のうち、①、②の方法では夫婦双方の合意(③は双方の異議がないこと)が必要ですが、④裁判離婚では相手の同意がなくても、法律上の離婚原因があれば離婚が認められます。

通常、手続きは「①協議→②調停→(③審判→)④裁判」の順で進みます。とはいえ、実際には約87%の夫婦が協議離婚を選択しています。
審判は、離婚については概ね合意に至ったものの、些細な条件等が合わずに調停不成立となった場合に家庭裁判所が審判を下して離婚を成立させる手続きです。ただし、実際行われることは多くはありません。

なお、それぞれの離婚方法の手続き、メリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

4. 相手の同意がなくても離婚できる「法律上の離婚原因」とは

裁判離婚を成立させるには、「法律上の離婚原因」が認められなければなりません。

民法第770条第1項によると、以下の5つの事由が法律上の離婚原因として定められています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みがない強度の精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

このうち、「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、夫婦関係が破綻しており、今後も関係の修復が著しく困難であると認められる状態を指します。

とえば、家庭内暴力(DV)、虐待、別居などが該当します。

なお、「性格の不一致」だけでは、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとはいえません。しかし、性格の不一致がきっかけで長期間別居していたり、互いに夫婦関係を修復する意思がまったくなかったりなど、関係の破綻が明らかな場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると判断されるケースもあります。

5. 離婚の話し合いを円滑に進めるには?

話し合いが感情的になってしまうと、必要以上に争いが長引いてしまうおそれがあります。ここでは、話し合いをスムーズに進めるためのポイントを紹介するので、ご参考ください。

(1) 感情に流されない

話し合いでは、怒りや悲しみ、不満などが噴き出してしまい、つい感情的になってしまい、相手にきつい言葉をぶつけてしまうこともあるでしょう。

しかし、感情的な発言が続くと、相手も防衛的になり、話し合いが進まなくなってしまいます。なるべく冷静さを保ちながら、事実と要望を丁寧に伝えるよう心がけましょう。

(2) 希望する離婚条件を決めておく

あらかじめ自分が希望する離婚条件をあらかじめ整理しておくと、話し合いがスムーズに進みやすくなります。

また、どの項目で譲歩できるのか、どうしても譲れない点は何かといった優先順位も明確にしておきましょう。「この条件を譲る代わりに、こちらは通してもらう」といったように、交渉の土台を作れます。

(3) 証拠を用意する

相手に浮気や家庭内暴力、モラハラなどの行為があれば、それを裏付ける証拠を用意しておくことが重要です。証拠があれば、話し合いで有利に交渉を進めやすくなるだけでなく、調停や裁判になった際に主張の正当性を裏付ける有力な材料となります。

主な証拠の例

  • メールやLINEのやりとり
  • 録音や録画データ
  • 診断書や写真

(4) 弁護士に相談する

話し合いが上手くいかない、まとまりそうにない場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に相談することで、以下のようなメリットを受けられます。

  • 法律に基づいた適切な離婚条件を提案してもらえる

  • 相手との話し合いに同席してもらえる

  • 調停や裁判に発展した際も、手続きの代理を依頼できる

とくに「離婚問題を得意とする弁護士」を選ぶことで、親権・養育費・財産分与などの複雑な問題にも的確に対応してもらえる可能性が高まります。また、費用が不安な方であれば、「初回相談無料」の事務所を選ぶと、より安心して相談できます。

離婚は人生における大きな転機です。ひとりで離婚手続きを進めようとすると、かえって話し合いが長引いてしまう可能性もあります。少しでも不安があるときは、早めに弁護士に相談しましょう。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2025年10月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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