車はどうやって財産分与すればいい? 離婚時の分割方法や注意点を解説
離婚手続きの中でも非常に面倒なのが「財産分与」です。特に現金などと違って、車は現物でありそのままでは分けられません。またどちらか一方の名義になっていたりローンが残っていたりすることもあるため、扱いに迷う方も多いでしょう。そこでこの記事では自動車の財産分与の方法を、わかりやすくご説明します。
1. 車は財産分与の対象となる?
車はもちろん不動産や貯金、株など、すべての財産について離婚時の財産分与対象となるかは「結婚生活中に、夫婦が共同で築いた財産かどうか」で判断します。
たとえば次のようなケースはどちらか一方の「特有財産」と扱われるため、分与の対象外です。
- 独身時代に購入したモノ、ためたお金
- 親から相続や贈与でもらったモノやお金
これに当てはめて考えると、結婚後に購入した車であれば、原則として財産分与対象です。どちらか一方の貯金から支払っていても、名義が夫または妻の単独になっていても、妻しか乗っていなかったとしても、夫婦の財産です。
また親から相続した車でも、車検などの維持費用を夫婦の貯金から出していた場合には共有財産とみなされる可能性があります。
逆にどちらか一方の親が購入資金を出した場合や、別居後に個人のお金で購入した場合には、特有財産と判断される可能性があります。判断に迷う場合には、弁護士に相談するのも一つの手です。
なお分与の割合は原則として2分の1です。片方が無職でも、夫婦に収入格差があっても、家庭での生活などを通じて財産形成に貢献したとみなすためです。
ただし医師や大企業の社長など、財産が増えたことに個人の力が大きいと判断される場合には分与割合が変わることがあります。
また一般的な財産分与は夫婦の財産を精算する目的で行われる「精算的財産分与」ですが、不倫やDVなどの慰謝料を含めて考える「慰謝料的財産分与」、離婚相手の扶養目的も加味する「扶養的財産分与」の場合にも、分与割合は2分の1ではないケースがあります。
2. 車の財産分与の方法
車の財産分与の方法は、一般的には次の2つです。
- 売却、現金化して分割
- どちらか一方が引き取り、代償金を支払う
(1)売却、現金化して分割
車を中古車販売店などに売却し、得た現金を分与の割合に応じて分けます。たとえば車が100万円で売れた場合、分与割合が2分の1であれば50万円ずつです。
仕組みがわかりやすく、両者が公平に分けられるためトラブルになりにくい方法です。
ただし車が古すぎて財産的価値がない場合には、分与の対象外です。
(2)どちらか一方が引き取り、分与相当額を支払う
どちらか一方が離婚後も車を使い続けたい場合には、一方が車を引き取り、相手に分与相当額の現金または財産を渡します。
たとえば車の査定額が100万円の、分与割合が2分の1の場合、夫が車を保有し、妻に現金50万円を渡すか50万円分の株などを渡します。
車の価値は、中古車販売店などで査定してもらうか、自動車の平均取引価格が掲載されているレッドブック(『オートガイド自動車価格月報』)で調べるのが一般的です。査定額は業者によって大きく違うこともありますので、見積もりを取る場合は複数の業者に頼みましょう。
3. 車の財産分与における注意点
車のローンが残っている場合には、少し手続きが複雑化します。ケース別にみていきましょう。
(1)査定額 > ローン(アンダーローン)の場合
車の査定額がローン額よりも大きい場合には、売却額からローン額を差し引いて残ったプラス分を分けます。
たとえば査定額が100万円、ローンが50万円、分与割合2分の1の場合には、車を売却してローンを完済し、手元に残った50万円を分けて25万円ずつ受け取ります。
(2)査定額 < ローン(オーバーローン)の場合
車の査定額よりもローン額が大きい場合には資産価値がないため、そもそも分与対象外です。
その場合、一般的にはローンは名義人がそのまま負担して、そのほかの財産は分与割合で分けるか、全財産を合算してそこからローンを差し引き、残った分を分与します。
アンダーローンかオーバーローンかという判断基準は、住宅ローンが残っている不動産の分与を考える際も同様です。
なおローンが残っている間、車はローン会社のものであり、夫婦が勝手に売却できません。まずはローン会社に連絡し、所有権解除の手続きをしましょう。ローンの名義変更は簡単ではありませんので注意してください。
財産分与の方法を決めたら、必ず離婚協議書などでその内容を具体的に書面にして残しておきましょう。公正証書で作成すればより安心です。相手が約束を破って勝手に売却したり、「言った・言っていない」の争いになったりするのを防ぐことにもつながります。
離婚後の財産分与の請求は、原則として離婚から2年以内です。話し合いでもめてしまい財産分与を決められない場合には、家庭裁判所の調停の利用や弁護士への相談により、早めに解決を図りましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2021年07月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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