離婚の財産分与とは|割合や対象となる財産などをわかりやすく解説

離婚の財産分与とは|割合や対象となる財産などをわかりやすく解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

夫婦が離婚する際に行う「財産分与」とはどういうものなのでしょうか。

本コラムでお伝えすることは、大きく以下の5つです。

  • 財産分与は、夫婦が婚姻期間中に築き上げた財産を分けること指す。
  • 財産分与には、3つ種類がある(清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与)。
  • 財産分与の割合は、原則、夫婦で2分の1ずつ分ける。
  • 財産分与には、対象となる財産とならない財産がある。
  • 財産分与の大まかな流れは、①対象となる財産の確認、②まずは夫婦で話し合い、③話し合いがまとまらない場合は調停や裁判。

それでは、財産分与の基本と流れを解説していきます。

1. 離婚の財産分与とは? 種類や割合について

離婚の財産分与とはどのようなものなのでしょうか?

まずは財産分与の基本についてみていきましょう。

(1)財産分与とは

「財産分与」とは、夫婦で婚姻期間中に築き上げた共有財産を、離婚する時に分けることを指します。

財産分与請求は民法でも以下のように規定されており、法律上で認められている大切な権利です。

民法768条1項

「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」

(2)財産分与の種類

財産分与は以下の3つの種類に分けることができます。

  1. 清算的財産分与

  2. 扶養的財産分与

  3. 慰謝料的財産分与

①清算的財産分与

「清算的財産分与」は、もっとも一般的な財産分与です。離婚時に婚姻期間中に築いた共有財産を分配して清算します。

②扶養的財産分与

「扶養的財産分与」は、離婚をすることで夫婦の一方が経済的に困窮することが明らかな場合に、扶養目的で行われる財産分与です。

以下のような事情がある場合、扶養的財産分与が認められる可能性があります。

  • 長年専業主婦(主夫)だった
  • 病気や怪我でしばらく働けない
  • 高齢で就職が難しい
  • など

ただし、扶養的財産分与が行われるケースはあまりありません。

③慰謝料的財産分与

「慰謝料的財産分与」は、慰謝料の意味合いを持つ財産分与のことを指します。

配偶者の不貞行為やDVなどの有責行為が離婚原因となっている場合は、精神的苦痛に対する損害賠償請求として、慰謝料を請求することができますが、慰謝料を財産分与に含めるのが「慰謝料的財産分与」です。

(3)財産分与の割合は?

財産分与の割合は、原則、夫婦で2分の1ずつ分けます。

ただし、夫婦の一方が個人の努力や能力で高額な資産を形成した場合(経営者や芸術家など)はその限りではありません。その努力や能力を考慮して、2分の1ずつに分けないこともあるのです。

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

2. 財産分与の対象となる財産とならない財産

夫婦が持っている財産全てが財産分与の対象になるわけではありません。

財産分与の対象となる財産とならない財産について、詳しくみていきましょう。

(1)財産分与の対象となる

財産分与の対象となる財産を「共有財産」といいます。

共有財産として財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産で、具体的には以下のとおりです。

  • 不動産
  • 現金や預貯金
  • その他経済的価値があるもの(家具や家電、宝飾品など)
  • 保険
  • 退職金
  • 年金
  • 借金
  • など

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

(2)財産分与の対象とならない財産

財産分与の対象とならない財産を「特有財産」といいます。

以下に挙げる財産は、特有財産として財産分与の対象になりません。

  • 婚姻前に形成した預貯金や不動産などの財産
  • 相続や贈与で取得した財産
  • 別居後に取得した財産
  • など

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

3. 財産分与の方法と進め方

財産分与の方法と進め方、注意点について詳しくみていきましょう。

(1)財産分与の流れ

財産分与は、大まかに以下の流れで行います。

  1. 対象となる財産の確認

  2. 話し合い

  3. 話し合いがまとまらない場合は、調停や裁判へ

①対象となる財産の確認

まずは財産分与の対象となる財産を確認し、リストアップしておきます。

リストアップしたら、財産の金額や評価額を把握するための資料(通帳の取引履歴、不動産の評価証明書、自動車の査定書など)を準備しておきましょう。

②話し合い

財産を把握できたら、夫婦で財産分与について話し合います。夫婦で財産分与の対象財産を確認し、どう分けるか決めていきましょう。

他の離婚条件(子どもがいれば親権や養育費、面会交流など)についても合意できれば、合意内容を「公正証書」にすることをおすすめします。

公文書である公正証書に強制執行認諾文言を付ければ、たとえば財産分与が合意通りに行われなかった場合に、裁判をせず強制執行(=義務者の財産を裁判所が差し押さえる手続き)を行うことが可能です。

③話し合いがまとまらない場合は、調停や裁判へ

話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てましょう。離婚調停は、調停委員の仲介のもとで離婚問題を話し合い解決するための制度です。ここで財産分与や他の離婚条件についても合意できれば、調停調書が作成されます。

調停不成立になった場合は「離婚裁判」を提起し、財産分与をどう分配するのかの判断が裁判官によって下されます。

(2)財産分与には請求できる期限がある

財産分与はいつでも請求できるわけではありません。

財産分与請求権には「除斥期間」という制度があり、一定期間が経過すると権利が消滅するため請求ができなくなります。

現行法の除斥期間は「離婚から2年」です。ただし、令和8年までに民法改正法が施行され、除斥期間が「5年」に延長されることになっているため、改正後は離婚から5年以内であれば財産分与を請求できるようになります。ただし、改正法の施行までに離婚から2年間が経過してしまった場合には適用されないことにはご注意ください。

4. 財産分与に関するQ&A|よくある質問

最後に財産分与に関するよくある質問を4つご紹介します。

(1)離婚時の住宅ローンはどうなるのでしょうか?

婚姻期間中に借りた住宅ローンが離婚時にある場合は、住宅ローンも財産分与対象財産として処理しなければなりません。

住宅ローンを処理する方法は、大まかに分けると「住宅を売却する」方法と「どちらかが住宅に住み続ける」方法の2つの方法があります。

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

(2)離婚相手の財産隠しを見破る方法はありますか?

離婚相手の財産隠しを見破る方法はあります。

「通帳の取引履歴を確認する」「金融機関・保険会社からの郵便物を確認する」「不動産登記を見て抵当権者を確認する」などの方法がありますが、下記のコラムで他の方法も詳しくご紹介していますのでご参照ください。

(3)離婚時に財産分与をしたくない場合はどうすればいいですか?

財産分与請求権は法的に認められた権利です。そのため原則財産分与を拒否することはできません。しかし、いくつか財産分与をしない方法もありますので、詳しくは下記のコラムをご参照ください。

(4)ペットを飼っているのですが、どちらが引き取ればよいでしょうか。

離婚時のペットの引き取りに関しては、「独身時代から飼っていたペット」なのか「結婚後に飼い始めたペット」なのかによってどちらが引き取れるか異なります。

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

財産分与で損をしないためにも、弁護士への相談がおすすめです。

弁護士に依頼することで、財産分与の対象となる財産を正確に把握することができます。相手が財産開示に応じない場合の対応も任せることができますので、お困りの際には弁護士へ相談されるとよいでしょう。

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