離婚後、面会交流を拒否することはできる? 注意点と法的リスク

離婚後、面会交流を拒否することはできる? 注意点と法的リスク

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚後、元配偶者と子どもの面会交流を拒否したいと考える方は決して少なくはありません。

しかし、面会交流を拒否すると、法的リスクが発生する場合があるため注意が必要です。

そこで、本コラムでは面会交流を拒否する場合の注意点や法的リスク、適切な対処法について解説します。

1. 面会交流を拒否することはできる?

「面会交流」とは、離婚後に子どもと離れて暮らす親と子どもが定期的に交流を持つことをいいます。

離婚後、元配偶者と子どもを会わせたくないという方も少なくありませんが、面会交流を拒否することは可能なのでしょうか?

(1)面会交流は原則として拒否することはできない

民法では、夫婦が離婚するときに、子どもとの面会交流についての必要事項を定めなければならないと規定されています(民法766条、771条)。

また、民法766条において、面会交流について決めるときは「子の利益をもっとも優先して考慮しなければならない」とも規定されていることから、面会交流は、子の健やかな成長を遂げるための「子の利益」を優先すべきと考えられています。

したがって、原則として面会交流は親の都合で拒否することはできません。

(2)面会交流を拒否することの法的リスク

調停や審判で決めた面会交流を拒否してしまうと、以下の法的リスクが発生します。

  1. 履行勧告

  2. 間接強制

  3. 損害賠償請求

  4. 親権者変更の調停の申立て

4つのリスクについて詳しくみていきましょう。

①履行勧告

面会交流を拒否した場合、相手から家庭裁判所に「履行勧告」を申し立てられてしまう可能性があります。

「履行勧告」とは、調停や審判で取り決めた内容を守らない義務者(親権者あるいは監護親)に対して、家庭裁判所が「義務を履行しなさい」と勧告する手続きです(家事手続法第289条1項)。

履行勧告に強制力はなく、応じなくても罰則を受けることはありません。しかし裁判所から書類が届くため、プレッシャーを感じることでしょう。

②間接強制

履行勧告に応じないでいると、相手から「間接強制」を申し立てられてしまう可能性があります。

「間接強制」とは、強制執行のひとつで、裁判所から面会交流を拒否する監護親に対し、拒否する度に一定額の罰金を支払わせることで義務の履行を促す手続きです。

面会交流を拒否する度に、1回につき数万円の罰金を支払わなければならないため、拒否し続けていると金銭的負担やプレッシャーがかかります。

③損害賠償請求

面会交流を拒否し続けていると、相手から「子どもと会わせてもらえず精神的苦痛を受けた」として、不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料請求)をされる可能性もあります(民法第709条)。

慰謝料の相場は個別事情によりますが、長年拒否し続けた場合や悪質だと判断された場合には、慰謝料が高額になる可能性もあるでしょう。

④ 親権者変更の調停の申立て

正当な理由もなく面会交流を拒否し続けていると、相手から「親権者変更の調停」を申し立てられる可能性があります。

面会交流権は子どものための大切な権利です。それにも関わらず、正当な理由もなく面会交流を拒否し続けていると、調停や審判で監護親として不適格と判断され、最終的には親権者を相手に変更されてしまう可能性があるでしょう。

2. 例外的に面会交流の拒否ができるケース

面会交流は原則として拒否することはできませんが、例外として拒否することができるケースがあります。

(1)子どもを連れ去ってしまう可能性がある

面会交流の拒否ができるケースの1つ目は、面会交流をすると相手が「子どもを連れ去ってしまう可能性がある」というケースです。

過去に相手が子どもを連れ去ろうとした、あるいは実際に連れ去ったことがある場合は面会交流時に再び連れ去るおそれがあるため、面会交流を拒否することができます。

(2)子どもに暴力を振る可能性がある、過去にしていた

2つ目は、相手が「子どもに暴力を振る可能性がある、過去にしていた」というケースです。

このケースでは面会交流をすると子どもが再び暴力を振るわれるおそれがあるため、面会交流を拒否することができます。

ただし、虐待を証明するために、証拠を集めておくことが重要です。怪我の写真や虐待を受けているときの録音・動画、医師の診断書などを集めましょう。

(3)一定以上の年齢の子どもが面会を拒否している

3つ目のケースは「一定以上の年齢の子どもが面会を拒否している」というケースです。

親権者をどちらにするのかを決めるのと同様に、面会交流に関しても一定以上の年齢の子どもの意思が尊重されます。子どもの意思が尊重される年齢は「15歳以上」です。

ただし、10歳程度であっても判断能力があると裁判所から判断された場合は、「面会交流をしたくない」という子どもの意思が尊重される可能性もあります。

(4)子どもがDVやモラハラ行為を目撃し、心に傷を負っている

4つ目は、「子どもがDVやモラハラ行為を目撃し、心に傷を負っている」というケースです。

元配偶者から親権者へのDVやモラハラ行為を子どもが目撃して、元配偶者に恐怖心を抱いている、心に傷を負っているといった場合は、子どもの精神状態を考慮して面会交流の拒否が認められる可能性があります。

3. 面会交流を拒否する場合の流れ

面会交流を拒否したいときの対応の流れをみていきましょう。

(1)まずは話し合う

最初に行うのは、当事者同士の話し合いです。相手に納得してもらえるように、面会交流を拒否したい理由を冷静に説明しましょう。

当事者同士の話し合いが難しい場合は、弁護士に依頼して交渉を任せることもご検討ください。

(2)話し合いがまとまらなければ、面会交流調停・審判

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に対して「面会交流調停」を申し立てます。面会交流調停は、調停委員の仲介のもとで話し合い面会交流に関するトラブルを解決するための制度です。

調停では、当事者が別々に話を聞かれるため、相手と直接話すことは原則としてありません。

調停が進むと、家庭裁判所調査官によって家庭調査や子どもの意向調査をされることもありますので、その際は調査官に誠実に対応しましょう。調査結果を踏まえて話し合いを続けて合意できた場合は、調停調書が裁判所によって作成されて調停終了となります。

調停がまとまらなかった場合は自動的に審判手続きに移行し、裁判官が当事者の主張や提出された証拠・資料、調査官調査の結果などをもとに、面会交流についての判断を下すことになります。

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

4. 面会交流の拒否に関するQ&A|よくある質問

最後に、面会交流の拒否に関するよくある質問を3つご紹介します。

(1)面会交流を拒否できなくても、頻度を減らすことはできるのでしょうか。

相手からの同意を得るか、調停・審判で面会交流の頻度を減らす合意あるいは決定があれば、頻度を減らすことも可能です。

(2)面会交流を拒否する際、診断書は証拠として有効でしょうか?

面会交流を拒否する理由が子どもへの虐待や親権者へのDVだった場合、診断書は有効な証拠になります。その他にも、怪我の写真、虐待やDVを受けている最中の動画・録音なども証拠として有効です。

(3)面会交流について相手と会って話し合いをしたくないです。やり取りを任せることはできますか?

面会交流についてのやり取りを第三者に任せることはできます。

詳しくは下記のコラムをご参照ください。

面会交流を拒否する場合、適切な対処をしないと法的なリスクがあります。弁護士に依頼をすれば、相手との交渉や調停・審判になった場合の対応も任せることが可能です。

面会交流を拒否できる正当なケースに自分が該当するのか不安な方や、相手との交渉に不安な方は弁護士への相談をおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2025年05月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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