
不倫相手が妊娠したらどうする? 離婚・認知・養育費の対処法
不倫相手から突然「妊娠した」と告げられると、これからどうすればよいか頭を抱えてしまうでしょう。
産むか産まないか、離婚するのかしないのかを決断できないからといって状況を放置してしまうと、認知や養育費の請求、さらには配偶者との関係悪化など、より深刻なトラブルを招きかねません。
本コラムでは、不倫相手の妊娠が発覚した場合に取るべき対応や、離婚・認知・養育費に関する重要なポイントについて詳しく解説します。
1. 不倫相手から妊娠を告げられたときにまず取るべき行動
(1)不倫相手にまず確認すべき、妊娠の事実と対応
不倫相手から「妊娠した」と告げられたら、まず本当に妊娠しているのか確認しましょう。単なる勘違いの場合もあれば、意図的に嘘をついている場合も考えられます。
市販の妊娠検査薬で結果を確認する方法が一般的ですが、陽性と判定されても正常妊娠を示すわけではありません。可能であれば、一緒に病院に行き、診断結果を確認するのがよいでしょう。
(2)不倫相手との話し合いの進め方
妊娠が事実だった場合、不倫相手との話し合いを進めましょう。相手が出産を希望しているのか、中絶を考えているのかによって、話し合う事項は異なります。
対応の種類 | 話し合うべき事項 |
---|---|
①出産して結婚する場合 | ・配偶者との離婚に向けた話し合い |
②出産して認知する場合(結婚はしない場合) |
・養育費の負担 ・面会交流の有無、頻度 |
③出産するが、結婚や認知をしない場合 |
・養育費以外の金銭的支援などの有無 ・面会交流の有無、頻度 |
④中絶する場合 |
・中絶費用、休業費用の負担割合 ・慰謝料の支払いの有無 |
なお、妊娠が発覚した際に以下の行為を行うと、後に慰謝料請求される可能性があります。絶対に行わないようにしましょう。
不倫相手の妊娠が発覚した時にやってはいけないこと
- 妊娠を疑って暴言を吐いて相手を責める、相手を暴行する
- 「勝手に産んだのだから俺は関係ない」と無責任な発言をする
- 無理に中絶を強要する
- 音信不通にして放置する
(3)配偶者(妻)への報告はどうする?伝えるタイミングと伝え方
不倫の事実を配偶者に秘密にしておきたいと考えてしまうかもしれません。しかし、不倫相手による連絡などが原因で、後になって不倫が発覚する事態も想定されます。したがって、できる限り早めに報告するのが無難です。
配偶者に伝える際は、嘘をつかず、事情を冷静に話しましょう。また、問い詰められても言い訳をせずに、反省の意を示すようにしましょう。
(4)離婚か修復か?決断前に考えるべきポイント
妊娠発覚後は、配偶者と離婚するか家庭を修復するかの選択を迫られることになるでしょう。その際、以下のポイントを踏まえたうえで判断を下すようにしてください。
配偶者と離婚するか関係修復するかの判断基準
- 仕事や社会的信用への影響
- 今後の生活設計
- 子どもへ与える影響(子どもがいる場合)
- 養育費などの支払いの必要性(子どもがいる場合)
2. 不倫相手の妊娠の法的リスクは?知っておくべき選択肢
不倫相手が妊娠してしまった場合、さまざまな法的リスクが生じてしまいます。以下、詳しく解説します。
(1)配偶者からの慰謝料請求の条件と相場
不倫が発覚した際、以下の条件を満たしていれば、配偶者(妻)から慰謝料を請求されるリスクがあります。
配偶者から慰謝料請求をされる可能性がある条件
- 不貞行為をおこなったこと
- 浮気以外の原因で夫婦関係が破綻していないこと
- 夫の浮気に対して妻に責任がないこと
- 時効が成立していないこと
慰謝料の相場は 数十万円〜300万円程度とされていますが、以下のような要素に応じて金額は増減します。なお、最近は、相場自体も低下傾向にあります。
高額になる要素
- 不倫がきっかけで離婚した
- 婚姻期間が長い
- 不倫期間が長い
- 不倫回数が多い
- 妻が精神的な疾患を患った
- 未成年の子供がいる、または子供の人数が多い
- 不倫相手が結婚していることを知っていた
低額になる要素
- 不倫の前から婚姻関係が実質的に破綻していた
- 不倫があっても婚姻関係を継続する
- 婚姻年数が短い
- 不倫期間が短い
- 子供がいない
- 不倫をしたことを深く反省している
- 社会的制裁を受けている
なお、慰謝料請求額は、請求する側が独自に設定した金額であって、必ずしも法的に認められる損害額と一致するわけではありません。請求額が高額な場合は、減額交渉を検討することが重要です。慰謝料の減額を交渉する際は、請求額と一般的な相場を比較するとよいでしょう。
(2)認知は義務?拒否できるケースは?
子どもを出産することにした場合、不倫相手から認知を求められる場合があります。
認知の方法は、大きく「任意認知」と「強制認知」の2種類に分けられます。
-
任意認知
女性側から認知を求められた際に、男性側が自主的に応じる形で認知する方法(民法第779条)
-
強制認知
男性側が認知を拒んだ場合に、家庭裁判所の判断により強制的に認知が成立する方法(民法第787条)
強制認知の手続きではDNA鑑定が行われることが多く、その結果親子関係が認められれば、裁判所の決定に基づき認知が確定します。男性側がどれだけ拒んだとしても、親子関係が証明されれば認知は避けられません。
認知が認められると、以下のような法的効果が発生します。
認知が認められた場合の法的効果
- 戸籍に父親として記載される
- 養育費の支払い義務が発生する
- 子どもに相続権が与えられる
ただし、以下のような場合には、認知が認められないのが一般的です。
認知が認められないケース
- DNA鑑定で父子関係が否定された場合
- 妊娠の事実の虚偽申告が疑われる場合
(3)養育費の支払い義務と相場
認知した場合、子どもに対する扶養義務が発生するため、養育費を支払う義務が生じます。養育費の支払いは、子どもが20歳になるまで継続するのが原則です。
養育費は双方の収入や状況に応じて決定されますが、一般的には裁判所が出している算定表に従って計算されています。支払いを怠ると、家庭裁判所を通じて強制執行(給与差し押さえなど)を受けることもあるため、支払いにはきちんと応じましょう。
(4)中絶を選ぶ場合の費用負担と慰謝料の相場
中絶する場合、不倫相手に対して主に「中絶費用」、「慰謝料」、「その他費用」を支払わなければならないのが通常です。
①中絶費用
中絶費用の相場は、以下のとおりです。
- 初期中絶(妊娠12週未満):10万円〜15万円程度
- 中期中絶(妊娠12週以降22週未満):50万円以上
双方の合意で性行為に及んだのであれば、中絶費用は双方で折半となる場合が多いです。
②慰謝料
不倫関係で妊娠して中絶に至った場合でも、当事者双方の合意のもとで肉体関係が持たれた限り、慰謝料を請求されることはないのが原則です。
もっとも、以下のような場合には、慰謝料を請求される場合もあります。
- 妊娠や中絶に関して、適切な配慮を怠った場合
- 強制的な性行為によって妊娠させた場合
- 強要、脅迫、暴力などにより中絶を強いた場合
- 避妊していると偽った場合
慰謝料の相場は50万円から100万円程度と言われていますが、ケースによって大きく異なります。
③その他費用
その他、以下の費用を追加で支払わなければならない場合があります。
- 妊娠中の診療費、交通費
- 中絶でかかった診療費、入院費、交通費
- 休業損害(会社を休んだ場合)
- 後遺症が残った場合の慰謝料
双方の合意で性行為に及んだのであれば、費用は双方で折半となる場合が多いです。
3. 不倫相手の妊娠で、離婚を選ぶ場合の費用とリスク
不倫相手の妊娠がきっかけで離婚を選ぶ場合でも、さまざまな法的リスクが生じます。以下、詳しく解説します。
(1)不倫相手の妊娠で離婚を決めたら…まず知っておくべきこと
① 有責配偶者からの離婚請求は認められる?
一般的に、不倫をした側(有責配偶者)からの一方的な離婚請求は認められにくいのが現実です。
ただし、以下の条件を満たせば、有責配偶者からの離婚が認められる可能性があります。
有責配偶者からの離婚が認められる可能性がある条件
- 長期間の別居(目安として3年以上)
- 夫婦関係がすでに破綻しており、修復の見込みがないこと
- 未成年の子どもがいない、または離婚によって過度の不利益を受けない
② 離婚の種類と手続きの流れ
離婚には、主に以下の3つの方法があります。
- 協議離婚(話し合いで合意する)
- 調停離婚(家庭裁判所の調停を利用)
- 裁判離婚(調停が不成立の場合、裁判で決着)
円満に離婚できるなら協議離婚を選ぶのが最適ですが、慰謝料や財産分与などの交渉が難航する場合、調停離婚や裁判離婚を検討すべきです。
③ 離婚後の生活設計とリスク管理
離婚した後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、次の点を事前に整理して、離婚後の生活を設計しておきましょう。
- 不倫相手と再婚するかどうか
- 仕事や住居の確保
- 配偶者との間の子どもとの関係(面会交流や養育費の負担)
(2)離婚にかかる費用|慰謝料・財産分与・婚姻費用の相場
① 慰謝料
慰謝料の相場は、前述のとおり数十万円〜300万円程度です。
② 財産分与
婚姻期間中に築いた財産は、基本的に「折半」となります。財産分与の対象となる財産には、預貯金・株式の他、不動産や退職金(婚姻期間分のみ)などが含まれます。
③ 婚姻費用の支払い
離婚成立までに別居する場合、収入が高い側は、配偶者や子どもの生活費を負担する必要があります。
婚姻費用の相場は、裁判所のホームページに掲載されている「婚姻費用算定表」より決定します。たとえば、以下のようなケースでは、夫から妻への婚姻費用の支払額は月11万円程度となります。
- 夫の年間給与所得:600万
- 妻の年間給与所得:300万
- 子どもの人数:2人(12歳と10歳、妻と同居中)
(3)離婚しない場合はどうなる?家庭修復のための対応策
離婚ではなく、配偶者との関係を修復する道も考えられます。この場合、まずは配偶者と話し合いましょう。その中で、素直に自分の非を認め、お互いの気持ちを言い合うことで、信頼関係の回復に努めましょう。
夫婦だけでは解決が難しい場合、カウンセリングを受けたり、親族や専門家の助言を仰いだりするのも有効です。
4. 不倫相手の離婚を弁護士に相談するメリットと法律トラブルを避ける方法
不倫が原因で離婚する場合、さまざまな金銭的負担やトラブルが生じかねません。弁護士に相談することで、トラブルを適切に解決することが期待できます。
(1)弁護士に相談するべきタイミングと、相談するメリット
弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほど有利です。
弁護士に相談することで、慰謝料や養育費などの費用相場を教えてくれます。また、当事者間の交渉に同席してもらうことで、感情的な対立を避け、話し合いを冷静に進めることができるでしょう。
(2)慰謝料や養育費の交渉を有利に進める方法
慰謝料や養育費などを交渉する際は、まず費用相場を把握しておきましょう。あわせて、算定根拠も明確にしておくのがおすすめです。
(3)トラブルを避けるために「合意書」を作成する
不倫相手との間で慰謝料や養育費などに関する取り決めを行った場合、お互いの認識の齟齬を防ぐためにも、離婚合意書(離婚協議書)を作成することが重要です。
離婚合意書の形式はさまざまありますが、「公正証書」という形式で作成するのがおすすめです。公正証書は、公証人役場に保管される公式な書類なので、紛失や偽造のおそれがなく、証明力も高いといわれているからです。
(4)ケース別FAQ:不倫相手の妊娠に関するよくある疑問
ここでは、不倫相手の妊娠に関するよくある質問をまとめました。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで疑問を解消してください。
Q1:不倫相手が「認知しなくていい」と言っている場合でも、後で認知を求められることはあるか?
A1:不倫相手が当初は認知を望んでいなくても、経済的事情が変わった場合や、不倫相手の家族が認知を求めるよう説得した場合などに、後から認知を求められる可能性は十分にあります。
「認知しなくていい」と言われたからといって安心せず、将来的なリスクを考慮しておくことが大切です。
Q2:別れ話をしたら、不倫相手が「慰謝料を請求する」と言ってきた。慰謝料を支払う必要はあるのか?
A2:相手と同意の上で交際を継続していた以上、基本的には慰謝料を支払う義務はありません。しかし、既婚者であることを隠して交際を継続していた場合や、同居するなどの内縁関係の事実があった場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。対応を誤るとトラブルになる可能性があるので、弁護士に相談することをおすすめします。
Q3:弁護士に相談すべきタイミングは?
A3:すでに紹介した事例のほか、以下のような状況があれば、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
- DNA鑑定を求めたが拒否されたとき
- 不倫相手の家族や配偶者から強い圧力を受けているとき
- 自分の法的責任がよく分からず、不安を感じるとき
- こちらに掲載されている情報は、2025年04月18日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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