
養育費算定表の使い方【かんたん自動計算ツールつき】
養育費について簡易的に計算をされたい方には、養育費自動計算ツールの利用をおすすめします。
養育費算定表でも養育費を計算することはできますが、ツールを利用すれば必要項目をご入力・ご選択いただくだけで簡単に自分のケースに応じた養育費の金額を計算することが可能です。当サイトの養育費自動計算ツール(本コラム最下部に設置)を、ぜひご活用ください。
また、本コラムでは、養育費算定表の見方や計算方法、注意点などの基礎知識を詳しく解説します。これから養育費について話し合う方、養育費を再検討したい方など、養育費算定表について知りたい方は、参考にしてみてください。
1. 養育費算定表とは?基礎知識を簡単に解説
養育費算定表の使い方を説明する前に、まずは養育費算定表についての基礎知識を簡単に解説します。
(1)養育費算定表は何のために作られた?
養育費算定表は、離婚後の養育費の金額を決める際に標準的な養育費を簡易迅速に算定する目的で作成されました。家庭裁判所のホームページで公開されています。また裁判所で養育費について決める際にも参考として利用されているため、信頼性が高い資料といえます。
なお、平成15年に公表された養育費算定表は、物価の上昇や景気の悪化、増税などの社会実態の変化により実態に合わないものとなっていたことから、令和元年12月23日に改定された「新養育費算定表」が公表されました。
統計資料を更新したことで「子どもの生活費指数」と「基礎収入の内容」が変更されています。これにより、養育費の金額が改定前の算定表と比べると1〜2万円の増額が見込めるケースもあるでしょう。
(2)養育費算定表で金額を調べる方法
養育費算定表は、子どもの人数(1〜3人)と年齢(0〜14歳と15歳以上の2区分)に応じた9つの表に分かれています。
金額の目安を算出するためには、まず子どもの人数と年齢に応じた表を選択しましょう。
そして、9つの中から選んだ表をみて養育費の標準的な月額を算出しますが、詳しくは次章で解説します。
(3)養育費算定表が活用される場面とは
養育費算定表は「離婚時の話し合い」や「調停・裁判」で参考資料として活用されます。
養育費の金額は法的な決まりはないため話し合いで自由に設定することが可能ですが、「自分たちのケースなら目安として養育費はいくらになるのか?」といったように、義務者も権利者も自分に不利な条件にならないように目安の金額を把握したくなるのは当然のことです。
そのため、養育費算定表は離婚時の話し合いで養育費の金額を決めるために目安として活用されます。
また、話し合いで折り合いがつかない場合は調停や裁判になりますが、そこでもケースに応じた養育費の目安を算出するために養育費算定表が活用されているのです。
2. 養育費算定表の見方と計算方法
養育費算定表の見方と計算方法を具体例とともに説明します。
(1)養育費算定表を読み解く3つのステップ
養育費算定表は以下の3つのステップで確認をおこないます。
- ①養育費算定表の縦軸(義務者の収入)を確認する
- ②養育費算定表の横軸(権利者の収入)を探す
- ③交差する箇所の金額を確認する
①養育費算定表の縦軸(義務者の収入)を確認する
養育費算定表の縦軸は養育費を支払う側(義務者)の収入(年収)です。
縦軸の収入欄について、給与所得者は「給与」という欄、自営業者は「自営」という欄で区別されているため、その区別に従って収入欄を確認しましょう。
②養育費算定表の横軸(権利者の収入)を探す
横軸は受け取る側(権利者)の収入(年収)を指しており、縦軸と同じように給与所得者と自営業者で区別されています。区別に従い収入欄を探しましょう。
③交差する箇所の金額を確認する
夫婦の収入欄を確認したら、縦軸で支払う側の年収を探して右方向に線を伸ばし、横軸で受け取る側の年収を探して上方向に線を伸ばします。交差した箇所の金額が、標準的な養育費の月額です。
(2)夫婦それぞれの収入が異なる場合の計算方法
夫婦の収入に差がある場合、養育費算定表だけでは正確な金額を導きにくいことがあります。そのため、基礎収入の割合に応じて養育費を計算する方法を用います。
養育費の計算の流れは以下の3ステップです。
- ①義務者と権利者の基礎収入を算定する
- ②子どもの生活費を算定する
- ③養育費の金額を算定する
① 義務者と権利者の基礎収入を算定する
基礎収入とは、社会保険料や税金などを控除した後の、養育費の算定基準となる収入です。
- 給与所得者の場合:総収入の38%〜54%
- 自営業者の場合:総収入の48%〜61%
具体例
- 義務者(夫):年収2100万円×38%=798万円
- 権利者(妻):年収100万円×50%=50万円
②子どもの生活費を算定する
子どもが標準的な生活を送るために必要な生活費は、「生活費指数」を基準に求めます。
生活費指数(成人を100とした場合)
- 0〜14歳:62
- 15歳以上:85
(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入) × 子どもの生活費指数 ÷ (義務者の生活費指数+権利者の生活費指数)
具体例
- (798万円+50万円)×62÷(100+100)=約263万円
③養育費の金額を算定する
養育費は、子どもの生活費を夫婦の基礎収入の割合に応じて分担します。
子どもの生活費 × 義務者の基礎収入 ÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
具体例
- 263万円 × 798万円 ÷(798万円+50万円)= 約249万円(年間)
- 249万円 ÷ 12ヶ月 = 約21万円(毎月)
【補足】高額所得者の場合
養育費算定表は給与所得者で年収2000万円までしか対応していません。それを超える場合には、「改定標準算定方式」を用いて計算する必要があります。今回の計算例では、養育費算定表を超える年収(義務者2100万円)のケースを扱っているため、「改定標準算定方式」に基づき計算を行いました。
(4)養育費算定表の金額はあくまで目安
養育費算定表の金額はあくまでも目安であるため、算出された金額で取り決めなければならないというわけではありません。話し合い次第で増額・減額になるケースもあるでしょう。
3. 養育費の金額を決める際に注意すべきポイント
養育費算定表による標準的な養育費の金額の算出方法を解説してきましたが、養育費の金額を決める際には注意すべきポイントがいくつかあります。
(1)養育費の金額は収入だけで決まらない
養育費算定表で標準的な養育費の金額を算出することはできますが、先ほど解説したように算定表はあくまでも目安です。子どもの人数や年齢、年収を元に算出する算定表だけで決まるわけではありません。
たとえば、養育費算定表の金額は、公立の学校に通う場合の教育費しか考慮されていないため、子どもが私立の学校に通う場合は増額が検討されるべきでしょう。
また、算定表で算出される金額には、風邪や怪我をした場合の医療費は考慮されていますが、大きな怪我や病気をした場合の治療費・入院費用、子どもに障害がある場合の医療介護費は考慮されていません。
予期せぬ怪我や病気などの医療費は「特別費用」とも呼ばれ、話し合いで合意をすれば、特別費用が発生した場合の負担についてあらかじめ決めておくこともできます。また、子どもに障害がある場合は標準的な養育費の金額の増額が検討されるべきです。
このように、養育費の金額は収入や子どもの人数・年齢だけでは決まらず、個々の事情次第で適正な養育費の金額も異なる点にご注意ください。
(2)話し合いの場で起こりがちなトラブル例
養育費についての話し合いの場では、以下のようなトラブルが起きやすい傾向にあります。
- 金額の折り合いがつかない
- 収入の正確な把握が難しい
- 話し合いに応じてもらえない
このようなトラブルが起きた場合は、弁護士や調停委員などの力を借りて解決することもご検討ください(3章で詳しく解説)。
(3)公平な話し合いのために準備すべきもの
養育費について公平に話し合うために以下の資料を準備しておきましょう。
- 収入証明書(給与明細書や確定申告書、源泉徴収票など)
- 家計収支表(家計簿) など
4. 養育費の話し合いをスムーズに進めるコツ
最後に、揉めやすい養育費の話し合いをスムーズに進めるコツをご紹介します。
(1)感情的にならずに冷静に進める
養育費についての話し合いでは感情的になり揉めてしまうケースも少なくありません。交渉を円滑に進めるためには、なるべく感情的にならず冷静に話し合いを進めることが大切です。
当事者同士だけでは揉めてしまいそうな場合、弁護士や調停委員の力を借りることで円滑に話し合いが進む期待ができるでしょう。
(2)養育費算定表と実際の支払い額のギャップを埋めるには
解説してきたように、教育費や医療費などについて考慮すると養育費算定表の金額と実際に必要な金額にはギャップがあります。
個別の事情を考慮して養育費の金額を増額することに合意してもらうためには、義務者の負担感を軽減することも大切です。そのためには、たとえば、毎月の支払いに加えてボーナス月に金額を増額(追加)するように提案するといった方法もあります。
もうひとつ考えられるのが、弁護士や調停委員といった第三者の助けを借りて現実的な支払い額を話し合いで決める方法です。
(3)専門家を活用して話し合いを成功させよう
弁護士に依頼し、交渉を代理してもらうことで養育費の相場だけではなくケースに応じた適正な金額で合意できる可能性が高まります。
また、協議がまとまらない場合は調停で話し合いをすることになりますが、調停では調停委員が仲介に入り、時には相手を説得してくれたり、和解案を提示してくれたりすることで、当事者だけの話し合いより円滑に進む可能性が高くなるのです。
養育費については当事者同士では揉めてしまうおそれがありますので、専門家を活用して話し合いを成功させましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年04月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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