
【慰謝料請求】慰謝料とは、請求できる条件、金額相場、請求方法
配偶者と離婚したいと考える原因が、相手の不倫や暴力などの場合、慰謝料を請求したいところです。
本コラムでは、慰謝料請求の条件や相場、請求方法を解説します。
1. 慰謝料とは?
そもそも慰謝料とは何なのでしょうか?
慰謝料や慰謝料請求の重要性についてみていきましょう。
(1)慰謝料とは
「慰謝料」は不法行為によって被った精神的苦痛に対する損害賠償として、被害者が加害者に請求する金銭です。その法的根拠となっている民法709条・710条には以下の内容が規定されています。
民法709条引用:民法 「 第五章 不法行為」| e-Gov 法令検索「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」
民法710条「他人の身体、自由もしくは名誉を侵害した場合または他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」
民法709条・710条の規定によって、被害者は加害者に対して財産以外の損害、つまり「精神的苦痛」に対しても損害賠償請求をすることが可能なのです。
「精神的苦痛」とは、悲しみや恐怖など過度なストレスがかかった場合に感じる苦痛のことを指します。
(2)慰謝料請求の重要性
慰謝料を請求しないと、精神的苦痛を発散することができず、区切りがつけられません。また、加害者の反省を促せず、不貞行為やDVなどの行為が再発するおそれもあります。
したがって、一定の心の整理をつけるためにも、相手に自分が傷ついたことを伝えて反省を促すためにも慰謝料請求は重要なのです。
2. 離婚慰謝料請求の条件
離婚慰謝料は、どのような条件を満たせば請求できるのでしょうか?
離婚慰謝料を請求できるケース・できないケースとともにみていきましょう。
(1)請求できるケース
離婚慰謝料が請求できるのは、民法770条1項に規定されている「法定離婚事由」に該当する行為があったケースです。「法定離婚事由」は、法律で定められた5つの離婚原因のことで、裁判で離婚が認められるために必要になります。
5つの法定離婚事由は、以下のとおりです。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
法定離婚事由に該当し、慰謝料請求できるケースをみていきます。
- 浮気・不倫
- DV・虐待、ハラスメント
- 悪意の遺棄
- 性交渉の拒否など
1. 浮気・不倫
配偶者の不貞行為(配偶者以外との肉体関係)は法定離婚事由のひとつであり、慰謝料請求の対象です。
不貞行為に対する慰謝料請求は、配偶者と不倫相手(浮気相手)のどちらかもしくは双方に対して行うことができます(詳細は後述)。
2. DV・虐待、ハラスメント
DV(家庭内暴力)や虐待、ハラスメントは法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、これに該当する場合も慰謝料請求が可能です。
殴る蹴るなどの身体に対する直接的な加害を受けた場合に限らず、心ない言動によって精神的苦痛を受けた場合も慰謝料請求できるケースに該当します。
3. 悪意の遺棄
法定離婚事由にあたる「悪意の遺棄」に該当するケースも慰謝料請求の対象です。以下の行為が「悪意の遺棄」に該当します。
- 正当な理由なく配偶者が一方的に家をでる(同居義務違反)
- 生活費を払わない(扶助義務違反)
- 配偶者が専業主婦(主夫)なのに家事育児をしない(協力義務違反) など
4. 性交渉の拒否
正当な理由がない「性交渉の拒否」も法定離婚事由の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、慰謝料請求可能です。
そのほかにも、「配偶者が犯罪を行った」「配偶者から強引に宗教勧誘をされ続けた」「配偶者が多額の借金をしている」なども慰謝料請求の対象になる可能性があります。
(2)請求できないケース
慰謝料請求できないケースは以下の通りです。
- 配偶者や双方に離婚原因がない
- お互いに原因がある
- 時効が過ぎている
1. 配偶者や双方に離婚原因がない
配偶者や双方に有責となるような離婚原因がない場合、たとえば「価値観の違い」や「性格の不一致」で離婚するケースは慰謝料を請求できません。
2. お互いに原因がある
離婚慰謝料は、どちらか一方に原因がある場合に認められます。したがって、たとえば夫婦それぞれ不倫しているというような、お互いに原因があるケースでは慰謝料請求は認められません。
3. 時効が過ぎている
慰謝料請求には時効があります。
慰謝料請求権は、損害および加害者を知った時点から3年間、損害を受けた日から20年間行使しないと消滅してしまうのです。
つまり、たとえば配偶者の不貞行為に対する慰謝料請求は、不貞行為の事実と不倫相手を知った時点から3年以内、不貞行為が行われた日から20年以内に行わなければなりません。
3. 慰謝料の相場
慰謝料の算定基準や金額相場について解説します。
(1)算定基準
離婚慰謝料の算定基準になるのは以下の要素です。
【離婚慰謝料の算定基準】
- 婚姻期間
- 有責性の程度
- 有責行為の婚姻生活への影響
- 精神的苦痛の程度
- 加害者の支払い能力や社会的地位
- 子どもの有無 など
これらの要素をもとに慰謝料金額を算定していきますが、婚姻期間が長いケースや精神的苦痛が大きくうつ病になったケース、未成年の子どもがいるケースなどでは慰謝料が高額になる可能性が高くなります。
(2)金額相場
慰謝料の金額は法律上の定めがなく、算定基準にもよりますが、一般的には50〜300万程度になるケースが多いです。
4. 慰謝料請求の方法
それでは慰謝料請求方法を詳しくみていきましょう。
(1)慰謝料請求の流れ
慰謝料請求の前に、まずは証拠収集・弁護士相談をすることが重要です。
証拠がない状態で慰謝料を請求しても言い逃れられてしまう可能性があります。弁護士に相談することで証拠収集についてのアドバイスだけでなく、交渉を代理してもらうことや調停・裁判になった場合の対応も任せられるため、まずは弁護士に相談しましょう。
証拠収集・弁護士相談をしたら以下の流れで慰謝料を請求します。
- 夫婦で話し合う
- 内容証明郵便の利用
- 調停
- 裁判
1. 夫婦で話し合う
まずは証拠をもとに夫婦で話し合いましょう。
慰謝料額や支払い方法などについて合意できた場合は、後のトラブル防止のためにもその内容を書面に残すことが大切です。
できれば公文書である「公正証書」に、支払い義務者の支払いが滞った場合に強制執行をする旨の文言(強制執行認諾文言)を付けて作成しましょう。これを作成しておけば、支払いが滞った場合に裁判を経ず、相手の財産を差し押さえることができます。
話し合いの前に弁護士に相談・依頼することで、このときに相手との交渉を任せることや、書面作成を任せることが可能です。
2. 内容証明郵便の利用
すでに配偶者と別居している場合は「内容証明郵便」を利用して慰謝料を請求しましょう。
「内容証明郵便」は、郵便局が文書の内容や送付日、差出人・受取人を証明してくれるサービスのことです。
内容証明郵便で慰謝料請求書を送付し、相手が話し合いに応じれば前述の通り合意内容を公正証書にします。
3. 調停
夫婦での話し合いが決裂した場合や、内容証明郵便での請求を無視された場合は「離婚調停」を申し立てましょう。
「離婚調停」は、家庭裁判所に申し立てて調停委員会(裁判官1名と調停委員2名で公正)の仲介のもと話し合いで争いを解決する制度です。調停委員からアドバイスや和解案を提示されることもありますが、それに従わなければならないというわけではありません。
ここで証拠を提示し、自分の主張・相手の有責性を立証できれば調停委員が相手を説得してくれる場合もあります。
合意に至れば調停成立です。
4. 裁判
合意に至らなかった場合、「離婚裁判」を提起しましょう。当事者の主張や提出された証拠をもとに裁判官が判断を下します。
裁判では特に相手の有責性を証明する証拠が重要になるため、有効な証拠を集めておくことが重要です。そのためにも、弁護士に依頼し、有効な証拠収集や裁判所へのアドバイスを受けましょう。
手続きに不安な場合や裁判に不安な場合は、裁判上の手続き・対応を弁護士に任せることもできるため、まずは弁護士に相談しておくことがおすすめです。
(2)不倫相手に慰謝料請求する場合
配偶者と関係をもった不倫相手に不倫慰謝料(不貞慰謝料)を請求したい場合でも、慰謝料請求ができるケース・できないケースがあります。
不倫相手に慰謝料請求ができるのは、不貞行為前に夫婦関係が破綻しておらず、不倫相手に「故意・過失」があったケースです。
したがって、「夫婦関係が破綻していない時期から既婚者だとわかっていて肉体関係を結んだ」というケースでは不倫相手へ慰謝料を請求することかできます。
逆にいえば、「夫婦関係破綻後に肉体関係を結んだ」というケースや、「既婚者だと知らなかった・独身者だと偽られていた」というケースでは不倫相手に慰謝料を請求することはできない可能性があります。
不倫相手に慰謝料請求する際には、「相手の情報を把握する」「証拠を収集する」ということに留意し、冷静に対処しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年03月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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