- (更新:2025年01月10日)
- 離婚・男女問題
セックスレス離婚で慰謝料請求はできる? 請求条件と相場を解説
セックスレスは離婚原因になる程、深刻な問題になることがあります。
では、セックスレスで離婚する場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか?
本コラムでは、セックスレス離婚による慰謝料請求の条件や、相場について解説します。
1. セックスレスは離婚理由として認められている
セックスレスは裁判でも離婚理由として認められる場合があります。
セックスレスの定義や、離婚理由として認められるケースについて詳しくみていきましょう。
(1)セックスレスの定義と離婚への影響
まず、セックスレスの定義と離婚への影響について解説します。
①セックスレスとは
日本性科学会の定義によると、「セックスレス」とは、特別な事情がないにも関わらず、夫婦(カップル)の合意した性交渉あるいは、セクシュアル・コンタクトが1ヶ月以上ないことをいいます。
ここでいう「セクシュアル・コンタクト」とは、キスやペッティング、オーラルセックスなどの行為も含まれます。
ただし、これは一般的な用語としての定義であり、裁判所で離婚を争う場合には、1カ月間性交渉がないことだけをもって離婚事由となることはありません。
②セックスレスは「法定離婚事由」になる
協議離婚や調停離婚の場合は、当事者2人が納得すれば、どんな離婚理由であっても離婚することが可能です。たとえば、上記のように1カ月間性交渉がないことだけでも、当事者で合意をすれば離婚はできます。
しかし、離婚裁判になった場合は、民法770条に規定されている「法定離婚事由」に該当する離婚原因がなければ、離婚は認められません。
「法定離婚事由」とは、法律上離婚が認められる原因のことで、以下の5つが規定されています。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「セックスレス」は、この中の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
一般的な用語としてのセックスレスの定義は「1ヶ月以上性交渉等をしていないこと」ですが、離婚裁判でセックスレスであり離婚を認める理由となると判断されるためには相当長期間において性交渉がないことが必要です。1ヶ月や2ヶ月といった短期間性交渉がないということだけをもって離婚が認められる可能性は極めて低いと言えます。
(2)セックスレスが離婚理由として認められるケース
セックスレスが離婚理由として認められる具体的なケースは以下のとおりです。
- 夫婦の一方が性交渉や子どもを持つことを望んでいるのに長期間セックスレスであるケース
- 夫婦の一方が性的不能であり治療も行わないケース
詳しくみていきましょう。
1. 夫婦の一方が性交渉や子どもを持つことを望んでいるのに長期間セックスレスであるケース
夫婦の一方が性交渉や子どもを持つことを望んでいるにも関わらず、他方が性交渉を拒んでいることによりセックスレスとなって長期間が経過した場合、離婚が認められる可能性があります。
夫婦の双方が性交渉を望まないためにセックスレスになっている場合には離婚理由にはなりません。
2. 夫婦の一方が性的不能であり治療も行わないケース
性的不能とは、EDなどの性機能障害等により性交渉が行えない状況をいいます。それが短期間であれば直ちに離婚事由とはなりにくいですが、今後も継続的にセックスレスとなる見込みが強く、それを改善する努力もしていない場合には離婚事由となる場合があります。
2. セックスレス離婚での慰謝料請求の条件
セックスレスを原因とした離婚で、慰謝料請求が認められる条件について説明します。
(1)離婚での慰謝料請求が認められる条件
「慰謝料」は、不法行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償として、加害者から被害者に支払われる金銭です。
裁判でセックスレス離婚による慰謝料請求が認められるためには、「セックスレスによって離婚し、それにより精神的苦痛を受けたこと」を証明する必要があります。
(2)セックスレスによる精神的苦痛の証明方法
セックスレスにより精神的苦痛を受けたことを証明するためには、以下の証拠を集めるようにしましょう。
- 性交渉を拒否された日時や、相手の言葉などを記録した日記やメモ
- 性交渉を拒否されたメールやSNSでのやりとりや、会話の録音
- セックスレスについて話し合った際の録音
3. セックスレス離婚で請求できる慰謝料の相場額
セックスレス離婚の慰謝料相場はいくらなのでしょうか?慰謝料が高額になるケースについてもみていきましょう。
(1)慰謝料相場
セックスレスで離婚する場合、慰謝料が100万円ほどになる場合もありますが、個々の事情により金額は大きく異なります。
(2)慰謝料が高額になるケース
セックスレスで慰謝料が相場より高額になるケースをご紹介します。
- 婚姻期間が長期
- セックスレスの期間が長期
- 結婚してから一度も性交渉をしていない
- セックスレスに至った原因に、不貞行為などの一方的責任が認められる
- 精神的苦痛の程度が大きい
- 子どもが未成年
- 相手が性交渉をする努力をしていない など
これらのケースでは、高額になる可能性があります。
4. セックスレス離婚での慰謝料請求手続きの方法
セックスレス離婚の際の慰謝料請求手続きの手順を解説します。
(1)弁護士へ相談する
まずは弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、相談者のケースが裁判で離婚が認められるケースなのか判断してもらうことや、有力な証拠の集め方のアドバイスを受けることができます。
また、この後の相手方との交渉や、それが決裂した場合の裁判手続きを任せることもできるため、早めに弁護士へ相談することが大切です。
(2)相手方と話し合う
弁護士に相談したら、相手方に慰謝料を請求し、話し合いましょう。
合意した場合は、慰謝料の金額や支払い方法などの合意内容を、「公正証書」、それも「強制執行認諾文言」付きの公正証書にしておくことが重要です。
「強制執行認諾文言」とは「債務者は、支払いが滞れば、強制執行を受けることに同意する」といったものですが、これを入れることで、慰謝料の支払いが滞った際に裁判を提起せずに強制執行することが可能です。
(3)離婚調停を申し立てる
話し合いが決裂した場合は、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てましょう。
「離婚調停」とは、調停委員や裁判官の仲介のもと話し合って紛争を解決するための制度のことです。
慰謝料や離婚条件について調停委員の仲介のもと話し合い、合意に至れば「離婚調停」が成立します。弁護士に依頼している場合は、弁護士も調停に同席することができます。弁護士が同席する場合には、法的な部分について話すのを弁護士に任せることができますので、負担が軽くなるでしょう。
(4)離婚裁判を提起する
離婚調停が決裂した場合、「離婚裁判」を提起しましょう。
離婚裁判は、当事者の主張や提出された証拠をもとに、裁判官によって離婚や慰謝料についての判断が下されます。そのため、裁判官から慰謝料請求を認めてもらうためにも、前述した「セックスレスにより精神的苦痛を受けた証拠」が重要です。
弁護士のアドバイスを受けながら有力な証拠をしっかりと準備して、裁判に臨みましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
離婚・男女問題に強い弁護士に、あなたの悩みを相談してみませんか?
関連コラム
-
- 2025年01月08日
- 離婚・男女問題
-
- 2024年12月19日
- 離婚・男女問題
-
- 2024年12月19日
- 離婚・男女問題