離婚後、元配偶者がストーカーに? もしものときの対処法とは
離婚後、元配偶者からストーカー被害を受け、事件に発展するケースがあります。
元配偶者からストーカー被害を受けた時、どのように対応すればいいのでしょうか?
本コラムでは、元配偶者からストーカー行為を受けた場合の対処法を解説していきます。
1. 離婚後に元夫や元妻からストーカー被害を受けることがある
離婚後、元夫(元旦那)や元妻(元嫁)からストーカー被害を受けるケースがあります。なぜ元配偶者はストーカー化してしまうのでしょうか?
ストーカー行為の基準や、その例と合わせてみていきましょう。
(1)元配偶者がストーカー化する理由
元配偶者がストーカー化する主な理由としては、以下のことが言われます。
- 離婚はしたものの、まだ愛情が残っていて復縁を望んでいる
- 「相手もまだ自分に愛情が残っているはずだ」と思い込み、機会さえあればもう一度やり直せるはずだと誤解している
- 離婚後も相手を自分のものだと考え、支配したいと思っている
- 離婚により自尊心が傷つき、恨みや怒りを晴らしたい など
このように、相手への執着心や支配欲などが原因で、元配偶者がストーカー化してしまうケースがあります。
(2)ストーカー行為の基準
「ストーカー規制法」により規制されているのは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対するつきまとい等の行為です(ストーカー規制法第2条)。
ストーカー規制法では、以下の行為が規制されています。
- つきまとい等
- 位置情報無承諾取得等
- ストーカー行為
詳しくみていきましょう。
①つきまとい等
「つきまとい等」において規定されている具体的な行為は、以下の8つの行為です(ストーカー規制法第2条1項各号)。
- つきまとい、待ち伏せ、押しかけ、うろつき等
- 監視していると告げる行為
- 面会や交際その他義務のない行為の要求
- 著しく粗野又は乱暴な言動
- 無言電話、拒否後の連続した電話、ファクシミリ、電子メール、SNSメッセージ、文書等
- 汚物等の送付
- 名誉を傷つける行為
- 性的羞恥心の侵害
②位置情報無承諾取得等
位置情報無承諾取得等とは、GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為及びGPS機器等を取り付ける行為等を指します(ストーカー規制法第2条3項)。
③ストーカー行為
①②に規定されている行為を繰り返すことが「ストーカー行為」と定義されています(ストーカー規制法第2条4項)。
つまり、「特定の者に対する恋愛感情、その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」を持ち、「つきまとい等または位置情報無承諾取得等」に規定される行為を繰り返すことがストーカー行為ということになります。
(3)元配偶者によるストーカー行為の例
元配偶者によるストーカー行為の具体例は、以下のようなものがあります。
- 元配偶者が引っ越し先や職場に頻繁に現れ、待ち伏せやつきまといを繰り返される
- 「いつも見ている」「今日はいつもより遅いね」など監視していることがわかる内容の電話やメールを頻繁に送ってくる
- 何度も会うように要求してくる
- 「殺してやる」などの脅迫を繰り返される
2. 元配偶者からストーカー行為を受けた時の対処法
では元配偶者からストーカー行為を受けた時、どのような対応をすればよいのでしょうか?
3つの対処法について説明します。
(1)ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令を出してもらう
元配偶者からストーカー行為を受けた場合、まずはストーカー規制法に基づく警告・禁止命令を出してもらいましょう。
警告・禁止命令とはどういうものなのでしょうか?禁止命令に違反した場合の罰則についてもみていきましょう。
①警察に相談し、ストーカー行為が認められれば、警告を出してもらえる
被害者が警察につきまとい等の行為があったことを相談し、ストーカー行為が認められると「警告」を出してもらうことができます。
「警告」を出すことで、加害者に自分の行いに問題があることを自覚させ、自発的にストーカー行為をやめさせる効果が期待できますが、法的拘束力がなく、「罰則」がありません。
そのため、警察に「警告」を出してもらってもストーカー行為がやまないケースもあります。その場合、次に行われるのが「禁止命令」の発令です。
②警告に従わない場合は公安委員会が禁止命令を出す
警察の警告に加害者が従わない場合、公安委員会が「禁止命令」を発令します。「警告」とは異なり、法的拘束力があるのが特徴です。
禁止命令の発令は被害者からの申し出によって行われるか、職権によって行われます。原則、禁止命令の発令前にストーカー行為が疑われる加害者に聴聞や弁明の機会が与えられますが、緊急性が高い場合はその限りではありません。先に禁止命令が発令され、事後的に聴聞や弁明の機会が与えられます。
③禁止命令に違反した場合の罰則
禁止命令に違反してストーカー行為が繰り返された場合、加害者は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に処されます。
(2)離婚前から暴力や脅迫を受けていた場合は保護命令を出してもらう
ストーカー行為をする元配偶者から、離婚前から暴力や脅迫を受けていた場合は、DV防止法に基づく「保護命令」を出してもらうことを検討しましょう。
保護命令の詳しい内容をみていきます。
①保護命令とは
「保護命令」は、配偶者や元配偶者からの暴力を受けた被害者が、さらに暴力を受けることを防ぐことを目的にした制度です。
被害者が裁判所に申し立てることで、裁判所が加害者に対して以下の6種類の命令を出すことができます。
- 申立人への接近禁止命令
- 申立人への電話等禁止命令
- 申立人の子への接近禁止命令
- 申立人の子への電話等禁止命令
- 申立人の親族等への接近禁止命令
- 退去等命令
このうち、(イ)~(オ)は、(ア)の命令の実効性を確保するための付随的な制度のため、(ア)申立人への接近禁止命令単独で求めることはできず、(ア)と同時か、(ア)が既に出ている場合のみ発令されます。
②保護命令が出される条件
保護命令が認められるためには2つの条件を満たすことが必要です。
- 離婚前から暴力又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨告知する脅迫を受けていたこと(※)
- 今後も暴力や脅迫を受ける可能性があり、それによって生命や心身に重大な危害を受けるおそれが大きいこと
※退去等命令については、「身体に対する暴力又は生命若しくは身体に対し害を加える旨告知する脅迫を受けていたこと」
離婚前から暴力や脅迫を受けている必要があるため、離婚後からそれらの行為が始まった場合、保護命令は認められません。
なお、申立人の子への接近禁止命令、申立人の子への電話等禁止命令、申立人の親族等への接近禁止命令については、それぞれの命令の要件も満たす必要があります。
また、「今後も暴力や脅迫を受ける可能性がある」ということを示すために、これまでに元配偶者がつきまといやDVをしてきた証拠が有効です。
③違反した場合の罰則
保護命令に違反した場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます(DV防止法第29条)。
(3)離婚後に引っ越した場合は、元配偶者に住所を知られないための対策を
ストーカー行為を防ぐためにも、新しい住所を知られないように対策することが重要です。新しい住所はどのように元配偶者にバレてしまうのでしょうか?
離婚後に引っ越した場合でも、「戸籍の附票」から新しい住所が知られてしまう可能性があります。「戸籍の附票」とは、戸籍に記載されている人の住所が記載されているもので、離婚後でも元配偶者が閲覧することができます。
そこで、以下の手順で結婚時の戸籍に新しい住所が残らないようにしましょう。
- 離婚届を提出する
- 本籍地を新しい住所とは別のところにする
- 住民票の住所を新しい住所に変更する
- 閲覧制限をかける
子どもがいる場合、元配偶者は子どもの戸籍を取り寄せることができるため、そこから新しい住所がバレてしまう場合もあります。そのため、④の閲覧制限は、ご自身のみならず、子どもの住民票や戸籍の附票に対しても行うように留意しましょう。
また、役所の窓口でも事前によく相談して実行するとよいでしょう。
3. 離婚後のストーカー行為に悩んでいる場合は、弁護士に相談を
離婚後、元配偶者からのストーカー行為にお悩みの際には、弁護士に相談することがおすすめです。
ストーカーに対処するには、警察や自治体との連携や裁判所で保護命令を出してもらうことなどを早急にかつ適切に行うことが必要です。
弁護士にご依頼することで、警察や自治体への説明を弁護士が一緒に行うことや警察等に提出する書面の作成を弁護士が行うことも可能です。また、裁判所での保護命令の手続きについても弁護士に依頼すれば安心です。
また、最初から警察に相談することに抵抗がある場合には、まずは弁護士から警告するという方法がとれる場合もあります。
弁護士に依頼することで、警察や自治体、裁判所での手続きを代行・援助してもらえるほか、元配偶者と直接やりとりすることもなくなりますので、心身の負担は小さくなるでしょう。
具体的なご事情により適切な対処方法は異なります。まずは弁護士に相談し、どのように対応していくかについて検討しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年02月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。