離婚養育費払わないと言われた。養育費をもらうためのポイントを解説

離婚養育費払わないと言われた。養育費をもらうためのポイントを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

養育費は、未成熟子をもつ場合に、非親権者が親権者に支払わなければならない重要な義務です。

しかし、なかには養育費の支払いを拒否する親もいます。支払いを拒む相手から養育費をもらうにはどうすればいいのでしょうか?

本コラムでは、養育費の支払いを拒む相手から養育費をもらうためのポイントを解説します。

1. 相手が養育費を支払わない理由

なぜ相手は養育費を支払いたくないのでしょうか。養育費受給の実態と義務者の心理をみていきましょう。

(1)養育費の実態

厚生労働省の発表によると、令和3年の「母子世帯の母の養育費の受給状況」は、「現在も養育費を受けている」が28.1%、「養育費を受けたことがある」が14.2%であることに比べて、「養育費を受けたことがない」は56.9%にも及ぶことがわかりました。

そもそも母子世帯で養育費の取り決めをしていない人は、全体の51.2%にも及びます。なぜ養育費の取り決めをしていないのでしょうか。

母子世帯の母の養育費の取り決めをしていない理由として挙げられている理由として、「相手と関わりたくない」と答える人最も多いのですが、中には「相手に支払う意思がないと思った」「相手に支払う能力がないと思った」と答える人もいます。

出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します」60ページ 表17-(3)-1、53ページ 表17-(2)-1

実際に、相手に養育費を支払う意思がない場合がありますが、それは一体なぜなのでしょうか。

(2)相手に養育費を支払う意思がない理由

相手が養育費を支払わなくなる、あるいは支払おうとしない理由をみていきましょう。

①親権争いに負けたから

親権争いに負けたことで投げやりになり、「それなら子どものことは全部親権者が負担するべきだ」と考える人もいます。

②面会交流をさせてもらえないから

面会交流は非親権者と子どもが定期的に交流することです。本来、面会交流と養育費は別問題で、たとえ面会交流をさせてもらえなくても非親権者は養育費を支払わなければなりません。

しかし、どうしても子どもと会いたいという気持ちから「面会交流をさせてもらえないなら養育費を支払いたくない」という気持ちが生まれることもあります。

③収入が減ったから

養育費の金額は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決められることが多く、その基準になるのは「両親双方の年収」です。

一度決めた養育費については、勝手に減額したり支払いをやめたりすることはできません。しかし、中には「収入が減ったから支払わなくていい」と考える人も少なくありません。

④再婚したから

親権者が再婚した場合、「扶養義務者は再婚相手なのだから自分の支払い義務はなくなった」と考える人がいます。実際、再婚相手に経済力があって子どもと養子縁組をした場合は、非親権者に代わって扶養義務を負うのは再婚相手です。

また、非親権者が再婚をした場合、「扶養しなければならない人数が増えたから養育費を払いたくない」と考える人もいます。実際、再婚によって扶養する人数が増えた場合、養育費の減額が認められる場合もあるでしょう。

ただし、養育費の減額や免除が認められるケースだからといって、勝手に支払わなくなることは認められていません。しかし、勝手に支払いをやめてしまう人もいるのも実情です。

2. 養育費を払わないと言われた場合の対処法

相手に養育費を払わないと言われてしまった場合、離婚前か離婚後か、取り決めをしているか否かによって対応が異なります。3つのケース別に対処法をみていきましょう。

(1)離婚前で養育費について取り決めていない

離婚前で養育費についての取り決めをしていない場合、「協議」「調停」「訴訟」いずれかの方法で養育費についての取り決めを行います。

①協議

まずは夫婦で養育費について協議を行いましょう。協議で合意に至れば、取り決めた内容を書面にします。その際の書面は、後のトラブルに備えて「公正証書」にしておくことがおすすめです。

「公正証書」は公証役場で公証人に作成してもらう公文書のことで、「強制執行認諾文言」を入れておくと、養育費が滞った場合に裁判を起こさず強制執行を行えるメリットがあります。

協議で合意に至らなかった場合は、「離婚調停」の申し立てを行いましょう。

②調停

「離婚調停」は、家庭裁判所において調停委員や裁判官の仲介のもと、当事者同士で話し合って紛争を解決する制度です。ここで養育費について合意に至れば「調停調書」を作成してもらい調停が成立します。

調停不成立の場合、「離婚訴訟」の提起をしましょう。

③訴訟

「離婚訴訟」では、当事者の主張や提出された資料・証拠をもとに裁判官によって判断が下されます。そして、当事者は確定した判決に従わなければなりません。

そのため、どんなに相手が「養育費は支払いたくない」と主張したとしても、裁判官によって支払いを命じられた場合、相手には支払い義務が生じるのです。

(2)離婚後で養育費について取り決めていない

養育費について取り決めず離婚をした場合、「調停」「審判」どちらかの方法で養育費についての取り決めを行いましょう。

①調停

離婚後に養育費についての取り決めを行う場合に申し立てるのが「養育費請求調停」です。

調停で合意に至れば裁判所に「調停調書」を作成してもらいますが、調停不成立の場合には自動的に「審判」の手続きに移行します。

②審判

「養育費請求審判」では、当事者の主張や提出資料をもとに、裁判官によって養育費に関する審判が下され、当事者は確定した審判に従わなければなりません。

なお、離婚時には審判よりも先に調停を行う必要がありますが、離婚後の養育費請求に関しては最初から「審判」を選択することができます。調停の成立が難しそうな場合は最初から「審判」を検討しましょう。

(3)離婚後で養育費について取り決めている

離婚前に取り決めていた養育費の支払いを拒否された場合、取り決め方により対処法が異なります。

①離婚協議書の場合は「調停」か「審判」

離婚協議書の場合は、「離婚後で養育費について取り決めていない」ケース同様、「養育費請求調停」か「養育費請求審判」を行って再度裁判上で養育費についての取り決めを行わなければなりません。

②公正証書の場合は「強制執行」

強制執行認諾文言付きの公正証書の場合、前述のとおり「強制執行」による相手の給与や預貯金を差し押さえることができます。

③調停調書や判決書の場合は「履行勧告」や「強制執行」

調停や訴訟で取り決めた養育費の支払いを拒否された場合に検討すべきは、「履行勧告」や「履行命令」の手続きを行って支払いを促す方法と「強制執行」による差し押さえをする方法です。

まずは「履行勧告」などを行い、拒否された場合に「強制執行」をすることできますし、いきなり「強制執行」をすることもできます。

このように、養育費の支払いを拒否された場合の対処法はケースに応じて異なるため、ケースに応じて対処法を検討することが大切です。

3. 養育費を請求できない(もらえない)ケース

養育費は原則請求できますが、例外的に請求できないケースがあります。

相手に養育費を請求できないケースをみていきましょう。

(1)相手が無職のケース

相手が無職で収入がない場合、養育費を請求できないことがあります。

ただし、無職であっても「潜在的稼働能力がある」と判断された場合は養育費を請求できるでしょう。「潜在的稼働能力」は「働いてお金を稼げる力」のことです。

無職の理由が「病気」や「介護」など、請求が難しい場合があるものの、「解雇」や「自主退職」の場合は潜在的稼働能力があるとみなされ、養育費を請求できる可能性があります。

(2)親権者が再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組したケース

前述したとおり、親権者が再婚し、子どもと再婚相手が養子縁組すると、非親権者に代わって扶養義務者になるのは「再婚相手」です。そのため、このようなケースでは養育費が請求できなくなる可能性があります。

ただし、再婚相手に十分な収入がない場合は、養子縁組後も非親権者に養育費を請求できることもあるでしょう。

このように、相手に養育費を請求できないケースがありますが、中には養育費の支払いから逃れるために相手がわざと無職になるようなケースもあります。

そのような相手から養育費を支払ってもらうためには、弁護士に相談することがおすすめです。

4. 養育費の請求や取り決めのサポートは弁護士に相談を

養育費をもらうためには、養育費の取り決めを行い、それに応じた請求方法を選択する必要があります。

養育費の取り決め方も、離婚前か離婚後かで異なる上、支払いを拒否している相手との交渉や調停を自分だけですることは、精神的にも大変な負担になるでしょう。

養育費について夫婦間で話し合う際、法的な知識の欠如から自分に不利な内容で合意してしまう場合や、本来は請求できるはずのケースで諦めてしまう場合もあります。

弁護士に相談をすると、そもそも養育費が請求できるケースなのかという判断や、養育費の取り決め方、適正な金額や養育費未払いへの備え方などへのアドバイスを受けることが可能です。

また、支払いを拒む相手との交渉を代わってもらうことや調停や訴訟の対応も任せることもできます。

養育費問題でお困りの場合は、お早めに弁護士に相談しましょう。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年11月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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