浮気は犯罪になるか? 法的意味と制裁、慰謝料請求の要件と相場も解説
浮気は、社会では「悪いこと」とされています。なかでも既婚者の浮気は「不倫」とされ、とりわけ不道徳なものと考えられています。しかし、実際に浮気をした場合に犯罪として処罰されるのでしょうか。あるいは、それ以外に何かペナルティがあるのでしょうか。
本コラムでは、既婚者が浮気した場合に法的にどのようなペナルティを受けるのかについて解説します。
1. 浮気だけでは「犯罪」にならない
(1)現在の日本での取り扱いは「不法行為」と「離婚原因」
浮気は道徳的には悪いことですが、残念ながら今の日本では、犯罪には該当しません。
しかし、民法上の「不法行為」(709条)に該当し、慰謝料の請求の対象となる可能性があります。また、婚姻中の者が浮気をした場合には、裁判離婚原因(民法770条1項1号)に該当するとされています。
(2)浮気は戦前は「犯罪」だった
なお、戦前の刑法では「姦通(かんつう)罪」が定められていました。これは、夫のある女性が夫以外の男性と性的関係を結んだときに、夫が告訴すればその女性と男性が処罰されるというものでした。
夫が独身女性と浮気した場合には姦通罪で処罰されず、不公平なものでした。
(3)浮気が犯罪とされている国もある
また、浮気が現在でも犯罪とされている国があります。まず、フィリピンには姦通罪があります。また、イスラム法では婚外交渉を禁止されており、アフガニスタン、イラン、パキスタン等では石打ちによる死刑となります。
2. 浮気したら不法行為になる人間関係
浮気をした場合に不法行為が成立する可能性があると解説しましたが、全ての人間関係でそうなるわけではありません。
以下、浮気がどのような人間関係において不法行為となるかについて解説します。
(1)法律婚の場合
法律婚をしている人が配偶者以外の人と浮気をした場合には、不法行為が成立します。
(2)事実婚の場合
現在は、戸籍上の届出をしていない事実婚のカップルも法律婚と同様の法的保護を可能な限り受けることとされています。したがって、事実婚をしている人がパートナー以外の人と浮気をした場合には、不法行為に該当します。
(3)同性パートナーの場合
同性パートナーがいる人がパートナー以外の人と浮気をした場合については、2021年に最高裁で慰謝料請求できるという判断がされました(最高裁令和3年(2021年)3月17日決定)。
(4)婚約状態の場合
婚姻に至る前の婚約状態にあるカップルの一方が浮気した場合、不法行為が成立することがあります。
たとえば、結納を済ませた場合、両親や友人知人に婚約の報告をした場合、結婚式場を予約している場合など、前婚状態にあることが明らかな場合です。
(5)交際相手の場合
事実婚を含む婚姻をしておらず、婚約もしていない単なる交際相手が浮気をした場合には、不法行為は原則として成立しないと考えられています。単なる恋愛関係は、法律上保護すべきほど成熟しておらず、相手方に対する信頼は、法的保護に値しないと考えられているのです。
3. 不法行為・離婚原因に該当する浮気とは
次に問題となるのは、どのような「浮気」が不法行為ないしは離婚原因に該当するかということです。単に「浮気」といってもその行為形態の範囲は広く、全てが不法行為・離婚原因に該当するわけではありません。
以下、不法行為や離婚原因に該当する浮気はどのようなものか解説します。
(1)肉体関係がある場合
浮気相手との間で肉体関係を持った場合には、原則として不法行為や離婚原因に該当することとなります。
(2)肉体関係に至らない性的接触がある場合
肉体関係はなくともそれに準じるような性的接触がある場合(裸で抱き合う、性器に触れる等)は、不法行為や離婚原因に該当します。他方、キス(接吻)は直ちには不法行為や離婚原因には該当しませんが、反復継続して行われれば該当する可能性があります。
(3)性的接触がない場合
一緒に食事をしたり、手をつないだりする程度では、不法行為や離婚原因には該当しません。それすらない「プラトニックな関係」の場合に該当しないのは当然です。
4. 慰謝料請求できる要件と金額の相場
(1)慰謝料請求の相手方
浮気が不法行為に該当する程度に達している場合、慰謝料請求できる相手は、自分の配偶者・パートナーと浮気相手の両方です。
両者は、共同で不法行為をした者となり、連帯して慰謝料を支払う責任を負います。すなわち、配偶者・パートナーと浮気相手のいずれに対しても全額を請求することができます(民法719条参照)。
(2)不法行為の要件とは
不法行為は、以下の要件を満たした場合に成立します(民法709条参照)。
- 故意、または過失により
- 他人の権利や法律上保護された利益を侵害し
- これによって損害が生じた場合
肉体関係やそれに準じる性的接触を伴う浮気は、婚姻生活の維持やそれに準じる法律上の利益を侵害し、精神的苦痛を与えて損害を生じさせるため、不法行為が成立し、慰謝料を支払う責任を負うこととなります。
(3)慰謝料の金額の相場
浮気を理由とする慰謝料の金額は、婚姻期間や当事者の年齢、行為態様に加え、浮気していた期間や、頻度、子どもの有無やその年齢、婚姻関係やこれに準じる関係が破綻したかどうかなどの要素により決まります。
金額には幅がありますが、50万円から500万円の間になることが多いといえます。
(4)慰謝料請求権の消滅時効
浮気を理由とする慰謝料請求権は、①浮気を知ったときから3年、または②浮気の時から20年が経過すると事情により消滅します(民法724条)。したがって、これらの時効期間内に訴えを提起する必要があります。ただし、時効期間満了前に催告すれば、6か月間、時効の完成が猶予されます(民法150条参照)。
5. 慰謝料請求の方法
(1)示談交渉(話し合い)
慰謝料請求の方法としてまず挙げられるのは、話し合いによる方法です。
話し合いのきっかけとして、浮気をしたパートナーやその相手に対して、内容証明郵便などを用いて慰謝料を支払うよう求める通知を送り、その後、金額などの折り合いがつけば、和解成立となります。
話し合いがついた場合には、口約束にせず、金額や支払いの期日などを和解契約書の形に残し、可能であれば公正証書、特に「強制執行認諾文言付公正証書」を作成するのが望ましいです。
強制執行認諾文言付公正証書を作成しておけば、仮に支払日に慰謝料の支払いがなかった場合、別途訴訟を起こさなくても、預金口座や給与を差し押さえることが可能です(民事執行法22条5号参照)。
(2)訴訟
パートナーや浮気相手が請求を無視する、浮気を認めないといった事情により話し合いで解決しない、そもそも相手と交渉したくないという場合には、両者を相手取って訴訟(裁判)を起こして慰謝料を請求することができます。
訴訟で自分の主張が認められるためには、浮気を証明する証拠をそろえる必要があります。十分な証拠があれば、裁判に勝つことができますし、または裁判官が相手方を説得して裁判上の和解をすることも可能です。
上訴されずに確定した勝訴判決と裁判上の和解は同じ効力を持っていて(民事訴訟法267条参照)、相手がこれらに従わずに支払いをしてこない場合には、預金口座や給与を差し押さえることができます(民事執行法22条1号・7号)。
6. 弁護士に相談する必要性とメリット
浮気された場合の慰謝料請求やパートナーに対する離婚請求については、弁護士に相談するのが適切です。
慰謝料や離婚を請求する場合、浮気の証拠は請求する側(=浮気をされた側)がそろえる必要があります。どのような証拠が必要か、探偵に依頼して集める必要があるかといった判断は、専門家たる弁護士が判断するのが確実です。
また、訴訟を起こす手前の示談交渉において、浮気したパートナーや浮気相手と自ら交渉するのは、さらに精神的な苦痛を大きくするものです。このような交渉を専門家である弁護士に依頼すれば、心の負担が少し軽くなることでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年09月27日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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