離婚調停が不成立になったら? その後の対応、不成立を防ぐ手立てを解説

離婚調停が不成立になったら? その後の対応、不成立を防ぐ手立てを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

離婚をする場合、一般的には、まず夫婦間で話し合いを行います。しかし、夫婦間での話し合いでは、感情的になってしまうなどの理由で話し合いが進まないこともあります。そのような場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。

ただし、離婚調停を申し立てれば必ず離婚できるというわけではありません。離婚調停は離婚の条件について合意ができないなど、一定の事由がある場合には、不成立になる場合もあります。

本コラムでは、離婚調停が不成立になる3つのケースと不成立になった場合の対応を解説します。

1. 離婚調停が不成立になるケースとは

離婚調停はどのような場合に不成立になるのでしょうか。以下では、離婚調停制度の概要と離婚調停が不成立になるケースを説明します。

(1)離婚調停の制度の概要

「離婚調停」とは、離婚に関する夫婦の争いごとを家庭裁判所の調停手続きを利用して話し合う手続きです。

離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って紛争の解決に向けた話し合いを行いますので、夫婦だけの話し合いよりもスムーズに進むことが期待できます。

なお、離婚に関しては「調停前置主義(裁判や訴訟を提起する前に、調停を経なければならないとする制度や主義のこと)」がとられていますので、離婚訴訟を提起する前に、必ず離婚調停の申し立てを行う必要があります。

(2)離婚調停が不成立になる3つのケース

離婚調停が不成立になるケースとしては、以下の3つのケースが挙げられます。

①調停委員会による調停不成立の判断(家事事件手続法272条1項)

調停委員会が調停で合意が成立する見込みがないと判断すると、調停が不成立となります。調停は、あくまでも話し合いの手続きになりますので、当事者双方の合意がなければ調停を成立させることができません。

以下のようなケースでは、合意が成立する見込みがないとして、調停が不成立になる可能性が高いです。

  • 相手が離婚を拒否している
  • 離婚条件(親権、養育費、慰謝料、財産分与など)がまとまらない
  • 相手が不倫、DV、モラハラなどの離婚原因を認めない
  • 当事者が調停の欠席を繰り返す

なお、最終的には調停委員会の判断にはなりますが、合意の見込みがない場合には当事者から調停不成立を促すこともできます。

②申し立ての取り下げ(家事事件手続法273条)

離婚調停は、調停を申し立てた申立人による取り下げにより終了することもあります。調停の取り下げは、申立人が自由に行うことができ、相手の承諾も必要ありません。

離婚調停の取り下げは、主に以下のような場合に行われます。

  • これ以上調停を続けても合意が得られる見込みがない
  • 離婚したいという気持ちが変わってしまった

③当事者の死亡

当事者の双方またはいずれか一方が死亡した場合には、当事者死亡により調停は不成立となります。

2. 離婚調停が不成立になった後の対応

調停が不成立になったとしても不服申し立ての制度はありません。そのため、調停が不成立になった場合には、以下のような対応が必要になります。

(1)再び離婚協議をする

離婚調停が不成立となった後、再び夫婦で離婚協議を行い、離婚の合意に至れば離婚することができます。

調停で問題点が整理されていれば、調停前よりもスムーズに話し合いができる可能性もありますので、協議離婚が成立する可能性もあります。

ただし、調停不成立後すぐに話し合いをしようとしても、相手が応じてくれないケースもあるため、ある程度時間を置かなければ難しいといえます。

(2)離婚裁判の提起

調停が不成立になったときは、家庭裁判所に「離婚裁判」を起こすことができます。離婚裁判とは、裁判官が離婚の可否や離婚条件の判断を行う手続きで、調停とは異なり、夫婦の合意がなかったとしても、離婚をすることが可能です。

ただし、離婚裁判では、以下の5つの法定離婚事由のうちいずれかが認められなければ離婚を命じてもらうことはできません。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みのない強度の精神病
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

そのため、離婚を請求する側は、上記の法定離婚事由に該当する事実を証拠に基づいて主張立証していかなければなりません。

(3)審判離婚(家事事件手続法284条)

「審判離婚」とは、調停が不成立になった後、家庭裁判所の裁判官がこれまでの調停の経緯を踏まえて離婚の判断を行う手続きです。審判離婚は、離婚裁判のように裁判官が離婚の可否や離婚条件を判断するという特徴があります。

このような審判離婚は、主に以下のようなケースで利用されます。

  • 離婚についての合意ができているものの、些細な意見の相違や離婚条件の折り合いが付かず調停が成立しなかった
  • 離婚や離婚条件について合意ができているものの、当事者が出頭できないため調停が成立しなかった

ただし、審判に不服がある場合には、審判の告知を受けた日から2週間以内に異議申し立てをすれば審判の効力は失われ、抗告審にて再度審議されます。当事者間で意見の対立があるようなケースでは、審判離婚は不向きであるため、利用されることはほとんどありません。

3. 離婚調停が不成立になるのを防ぐ手立て

離婚調停が不成立になると離婚裁判が必要になるため、解決まで時間と費用がかかります。そのような負担を軽減するには、できる限り離婚調停の成立を目指す必要があります。

そのためにできる対処法としては、以下のものが考えられます。

(1)離婚理由を明確にし、必要な証拠を揃えておく

単に「離婚をしたい」と言っても、相手は簡単には納得してくれないでしょう。相手が離婚に応じてくれない場合には、離婚理由を明確にして、それを裏付ける証拠をしっかりとそろえておくことが大切です。

たとえば、不貞行為が離婚の理由である場合には、以下のような証拠が必要になります。

  • 配偶者と不倫相手が性行為を行っている動画や画像
  • ラブホテルに入室するところの動画や画像
  • 性行為があったことをほのめかすようなLINEやメール
  • 不貞行為を認める会話の録音
  • 探偵事務所の調査報告書

(2)離婚の条件を明確にし、優先順位をつける

離婚に合意できたとしても、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流などの離婚条件で争いがあると、簡単には離婚が成立しません。調停はあくまでも話し合いの手続きですので、自分が希望する離婚条件に固執していると、調停の成立は困難です。

そのため、調停の不成立を回避するには、離婚の条件を明確にし、優先順位をつけることが大切です。優先順位の低い条件であれば譲歩することで、優先順位の高い条件を希望どおりの内容で実現できる可能性があります。

(3)弁護士に相談する

調停は、話し合いの手続きですので、弁護士を利用せずに調停手続きを進める方も少なくありません。しかし、はじめての調停をスムーズに進めるためには、専門家である弁護士のアドバイスやサポートが必要になりますので、調停前に弁護士に相談するのがおすすめです。

4. 離婚調停、離婚裁判については弁護士に相談を

離婚調停や離婚裁判をお考えの方は弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで、以下のメリットがあります。

(1)離婚調停に同席してサポートしてもらえる

初めての離婚調停だと不安を感じる方も少なくありません。弁護士に依頼をすれば調停期日に弁護士が同席してくれますので、初めての離婚調停でも安心して臨むことができます。

離婚調停での解決を希望する場合には、離婚条件に優先順位を付けて、相手との交渉を行ってくれますので、希望する条件で離婚できる可能性が高くなります。

(2)離婚裁判の手続きを任せることができる

離婚裁判では、法定離婚事由に該当する事情を、証拠に基づいて主張立証していかなければなりません。一般の方では、複雑な裁判手続きを適切に進めていくのは困難ですので、専門家である弁護士に任せた方が安心です。

弁護士に相談すれば、そもそも裁判離婚が可能なケースであるかを判断してもらうことができ、裁判離婚に必要となる証拠収集もサポートしてもらうことができます。有利な条件で離婚するためには事前準備が重要となりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。

弁護士JP編集部
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