養育費の一括払いは贈与税の対象になる?
「子どもが20歳になるまで相手が養育費を毎月支払うとは思えない」
「離婚しても養育費の支払いという形で相手との関係が続くのは耐えられない」
このような思いから、養育費の一括払いを検討する人も少なくありません。養育費は原則月払いですが、当事者が合意すれば一括払いも認められます。しかし、一括払いには、税制上のリスクも潜んでいます。また、養育費の使いみちによっても税金がかかる場合があります。
本コラムでは、養育費と税金の関係について解説します。
1. 養育費に税金はかかる?
養育費とは、子どもがいる夫婦が離婚した場合に、子どもに対する扶養義務の一環として、親権を有しない側から親権者に支払う費用です。具体的には、子どもの生活費や学費などとして支払うものです。
他人に無償で財産を与える贈与には原則として贈与税がかかりますが、養育費の支払いについては、扶養義務の一環であるため原則として贈与税はかかりません。
2. 養育費を“一括払い”で受け取ると贈与税がかかる可能性も
前述のとおり、養育費には原則として贈与税がかかりませんが、支払方法や支出の仕方によっては、税金がかかる場合があります。
(1)養育費を一括払いで受け取ると贈与税がかかる
養育費は原則として、子どもが20歳に達するまでを基準として、月額を決めて月ごとに支払われるものです。
しかし、なかには、元配偶者と養育費の支払いにより関係が続くことを回避するため、養育費の一括払いがなされるケースもあります。
一括払いの場合、一度に受け取る金銭が多額になる傾向にあり、その場合、贈与税がかかる可能性が高くなります。元配偶者から支払いを受けた養育費のうち、贈与税がかからないのは、子どもの生活費または教育費に充てるために通常必要と認められるものに限られます。
多額の養育費を一括で受け取った場合には、その範囲を超えると判断されやすいため、贈与税が課税されるのです。
贈与税の税率は、贈与額が多額になるほど高率になります。すなわち、一括でもらう養育費の額が多ければ多いほど、多額の贈与税を支払わなければならないことになります。
そのため、養育費の一括払いにすることが本当に必要なのか、一括払いを受けることによって贈与税はどの程度かかるのかなどを、あらかじめ税理士に相談することが必要です。
(2)一括以外での養育費の受け取りに税金がかかるケース
一括払いではなく、一般的な月ごとの支払いで養育費を受け取る場合でも贈与税がかかる場合があるので、注意が必要です。以下で、税金がかかってしまう養育費の受け取り方のケースを説明します。
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預貯金した場合
元配偶者から支払いを受けた養育費のうち、贈与税がかからないのは、子どもの生活費または教育費に充てるために通常必要と認められるものに限られます。
支払われた養育費を子どもの生活費や教育費に充てず、金融機関に預貯金したままにしておくと、子どもの生活費や教育費に「通常必要と認められるもの」に該当しないとみなされ、贈与性が課される可能性があります。
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不動産や株式を購入した場合
養育費として支払われた金銭により、不動産や株式を購入した場合には、その購入金額について贈与税が課される可能性があります。
不動産や株式の購入に充てられるということは、子どもの生活費や教育費に通常必要と認められるものとはいえないと判断されるからです。
3. 養育費を一括払いで受け取っても贈与税がかからない方法とは
養育費を一括払いで受け取ると、原則として贈与税がかかります。しかし、贈与税がかからない方法もあります。それは、信託契約を利用する方法です。
具体的には、以下の方法をとることになります。
- 支払年数分の養育費を子ども名義の普通預金に支払い、子どもが委託者兼受益者となる金銭信託契約を信託銀行と結んで運用する。
- 支払い義務者を委託者兼信託契約解除同意者、受益者を子どもとする信託契約を信託銀行と結び、信託銀行に運用を任せる。
信託契約は複雑で、当事者だけでは対応が難しいので、信託にくわしい弁護士などの専門家に相談して手続きを進めることが必要です。
4. 養育費を一括払いで受け取る場合は扶養控除を受けられない
扶養控除とは、所得税・住民税の申告・納付につき、家族などを扶養している場合に受けられる所得控除で、16歳以上の子どもの養育費を支払っている場合には、扶養控除を受けられる可能性があります。
しかし、養育費を一括払いした場合には、扶養控除を受けることができません。
扶養控除を受けるためには、子どもと「生計を一(いつ)にしている」(=日常生活の財産を共にすること)と評価できることが必要であり、そのような評価を受けるためには、常に養育費を送金していることが必要とされています。養育費を一括払いすると、常に養育費を送金しているとはいえないため、子どもと「生計を一にしている」と評価されず、扶養控除が認められないのです。
5. まとめ
離婚した相手との関係を完全に断ち切るために養育費を一括払いにすることを検討する方もいらっしゃるでしょうが、税金の支払いという観点から見た場合には必ずしも得策でないことがお分かりいただけたと思います。
また、原則どおり月払いでもらっていたとしても、安心することはできません。養育費の支払い方、受け取り方、使いみちには、十分注意する必要があります。
養育費の件で不安なことがある方や疑問がある方は、ぜひ一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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