子どもへの養育費の支払い期間を短縮したい!

子どもへの養育費の支払い期間を短縮したい!

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもがいる夫婦が離婚するときには親権者や養育費について取り決めを行います。養育費について取り決める内容は養育費の金額、支払い期間、支払い方法などです。

では一度決めた養育費の支払期間は短縮することはできるのでしょうか?

本コラムでは養育費の支払い期間の変更について解説していきます。

1. 養育費はいつまで払う必要がある?

養育費とはそもそもどういう費用なのか、支払い期間はいつまでなのかみていきましょう。

(1)養育費とは

養育費は未成熟子(経済的・社会的に自立していない子ども)に対して支払われる費用です。親には未成熟子の監護・教育のための費用(生活費、教育費、医療費など)を支払う義務があり、夫婦の離婚に伴い非親権者になったとしても、その支払い義務はなくなりません。

養育費の支払い義務は「生活保持義務」で、「最後のパンもわけあう」という例えのように、自分に余力がない状況にあっても子どものために養育費を支払わなければならない非常に重い義務です。

(2)養育費支払い期間

養育費は未成熟子に対して支払われる費用であることから、子どもが成熟子になるまでの期間支払う必要があります。しかしそれは何歳までなのか、法律で一律には定められていません。では何歳まで支払われるのが一般的になのでしょうか?

実務上、養育費の支払い義務は子どもが成熟子とされる「20歳になるまで」とされています。これは令和4年の「成年年齢の引き下げ」によって成年年齢が18歳になったからといって変わりません。

ただし、夫婦の話し合い次第では子どもの年齢が20歳を超えても支払い義務が続くケースもあります。たとえば、子どもの大学進学を想定して「養育費は子どもの大学卒業まで」という取り決めを行った場合、または夫婦双方が大学卒である場合には、20歳を超えても大学を卒業までは養育費を支払う義務があるとされることが多いです。

逆に、「養育費は子どもが成人するまで」という取り決めをしていた場合は支払い義務が20歳よりも短い18歳までになります。

このように、養育費をいつまで支払うのかはケースバイケースなのです。

2. 後から支払い期間を変更できる?

協議離婚のときに作成していた公正証書(公証人に作成してもらう公文書)や離婚調停などで養育費の期間についての取り決めを行っていた場合も、その後の状況によっては支払い期間を変更することができます。

では、支払い期間を変更できるのはどういう状況なのでしょうか? 以下のケースでは養育費の支払いを短縮できる可能性があります。

  • 子どもが高校卒業後に就職した場合
  • 子どもが20歳になる前に結婚した場合
  • 養育費を受け取る側が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合

養育費は未成熟子に対して支払われる費用なため、子どもが就職や結婚をして「成熟子」と認められるケースでは支払いを短縮できる可能性が高いでしょう。

また、養育費を受け取る側が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をすると、子どもに対する扶養義務は再婚相手の方が優先されます。そのことから、養育費の支払いを短縮できる可能性もあるのです。ただし、再婚相手の収入によっては認められない可能性もあることを留意しておきましょう。

3. 養育費の支払い期間を短縮するには?

前述の養育費の支払い期間を短縮できるケースに該当する場合、期間を短縮するために必要な手順をみていきます。

(1)当事者同士で話し合いをする

まずは養育費についての取り決めをしたときから事情が変化したことを理由に、当事者同士で話し合いをしましょう。

この話し合いで条件の変更に合意できれば、裁判所に行かなくても養育費の支払い期間を変更することができます。

その際には、変更内容を公正証書にすることがおすすめです。公正証書を作成しておくことで後の言った・言わないのトラブルに備えることができます。たとえば、子どもが高校卒業後に就職したことを理由に養育費の支払いを終了することに合意したにもかかわらず、後日「やっぱり当初の約束通り20歳まで支払ってほしい」と言われて揉めるケースもあるからです。

そのため、協議で養育費の支払い期間短縮に合意ができた場合も、公正証書を作成しておいた方が良いでしょう。

(2)家庭裁判所に調停または審判を申し立てる

協議で養育費の支払い期間を短縮することに同意を得られなかった場合、家庭裁判所に「養育費変更の調停」か「養育費変更の審判」を申し立てましょう。

「養育費変更の調停」は調停委員や裁判官の仲介のもと当事者で話し合いを行い、合意に至れば調停が成立、合意に至らなかった場合は自動的に「養育費変更の審判」に移行します。

審判では当事者の主張や提出された資料・証拠をもとに、裁判官に養育費の変更を認めるか否かの審判を下されるのです。

なお、養育費に関しては調停ではなく、はじめに審判を申し立てることもできます。調停は何度も話し合いを繰り返すことから時間も手間もかかるため、一刻も早く養育費の支払い期間を変更したい場合は調停ではなく審判を申し立てることも検討しましょう。

4. 養育費の支払いを一方的に拒否してしまうとリスクがある?

いくら養育費が短縮されるケースに該当するからといって、協議もなしに一方的に支払いを辞めてしまうとさまざまなリスクがあります。

1つ目は「強制執行」のリスクです。

「強制執行」は債務を履行しない債務者に対して、裁判所が強制的に債務を履行させる手続きを指します。協議離婚の際、公正証書に「養育費の支払いが滞った場合、強制執行を受けることに同意する」という強制執行認諾文言を付けていた場合、勝手に支払いを辞めると強制執行により給与や預貯金を差し押さえられてしまう可能性が高いのです。調停離婚や裁判離婚の場合も同様に強制執行を受ける可能性があります。また、給与口座や預貯金、不動産の有無については、裁判所を介して照会できるため、相手方に知られていないはずだとして安易に安心することはできません。

2つ目は「遅延損害金」が発生するリスクです。

養育費の支払いは金銭債務であることから、滞った分の養育費の金額に加えて法定利率3%の遅延損害金も支払わなければならない可能性があります。なお、民法改正前の2020年3月31日までに養育費の取り決めをしていた場合の法定利率は5%です。

このように、養育費の支払いを勝手に辞めてしまうと、「強制執行」や「遅延損害金」のリスクがあります。それを防ぐためにも、正しい手続きを経て養育費の支払い期間を変更することが重要です。

また、支払い期間の短縮以外にも、養育費の減額が認められるようなケースもありますが、その場合も適切な手続きを踏む必要があるため、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

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