自己破産とは。破産手続きの流れと、他の債務整理との違い

自己破産とは。破産手続きの流れと、他の債務整理との違い

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

借金が膨らんでどうにもならない! と思ったとき、脳裏をよぎるのは「自己破産」という言葉ではないでしょうか。

本コラムでは、自己破産ができる条件や自己破産の流れ、他の債務整理との違いについてご紹介します。

1. 自己破産とは

自己破産とは、借金の問題を解決するための方法のひとつで、多額の借金を抱えてしまい返済できる見込みがないため、

  • 全財産で借金を清算して
  • 残った借金を免除する

という手続きです。

実際には「経済生活の再生の機会の確保を図ること」(破産法1条)に配慮した運用がなされており、一般的に持たれているイメージとは異なる点も少なくありません。

(1)どんな人が自己破産できる?

「支払不能な状態」にあると裁判所に認められることが自己破産の条件です。

財産や収入、家族構成にもよりますが、家賃や住宅ローンを除いた生活費の3分の1以上を返済にあてていることが一応の基準といえます。

この基準に当てはまらない場合でも自己破産できることもありますし、他の方法で債務整理をした方がいい場合もあります。

(2)自己破産をすると財産や仕事を失う?

生活の維持に必要な財産は、そのまま保有することが法律上認められています。

裁判所によって基準が異なりますが、処分価格が20万円以下の財産や現金、預貯金を合計99万円分まで保有できると考えていいでしょう。

また、適用法令に基づき、警備員(警備業法)、生命保険募集人(保険業法)、パチンコ店店長(風営法)などの職業や、損害保険代理業(保険業法)、建設業(建設業法)、運転代行業(自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律)などの自営業者は、資格の制限を受けますが、破産手続きが終了するとその制限もなくなります。

(3)借金の原因は何でもいい?

事業によるもの、保証人になったもの、生活費として使ったものなど、通常の経済活動による借金であれば破産手続きで問題視されることはありません。

ただし、浪費やギャンブル、FXなどの投機が借金の原因である場合は、「免責不許可事由」に該当して免責が許可されない可能性もあります。

また、過去に自己破産をして免責が許可されてから7年が経過していない場合も同様です。

しかし、自己破産以外の方法で救済することが難しい場合、条件は厳しくなりますが、裁判所の裁量により免責が許可されることも少なくありません。

(4)周囲に「破産者」であることが知られてしまう?

「破産者」というのは裁判所の破産手続き内で用いられる呼称であり、通常の生活において「破産者」といわれるようなことは一切ありません。

破産手続きはすべての債権者に参加の機会を与える必要があり、国が発行する官報に破産したことが掲載されますが、それを一般の方が目にして知れ渡るということはほとんど考えられません。

もっとも、2019年3月に発生した「破産者マップ」事件は記憶に新しいところです。これは、「破産者マップ」というウェブサイトの運営者が、官報の破産者情報を集めてデジタル化したものです。

具体的には、Google マップに関連付け設定を施し、破産手続きをした者の住所がGoogleマップ上にピン(目印)の形で現れ、これをクリックすると、破産者の個人情報が記録されたウインドウが立ち上がるという仕組みのサイトでした。もちろん、現在では閉鎖されておりますが、かように思いがけない不利益を被ることもあります。

2. 自己破産の手続きの流れ

破産手続きは、財産を処分して借金を清算する手続きと、借金の返済を免除する免責手続きの2本立てになっています。

併せて、返済中の住宅ローンや自動車ローンがどうなるかについても解説します。

(1)財産で借金を清算する手続き

自己破産の申し立てをして、裁判所が支払不能な状態と認めると、破産手続開始決定がなされます。

次のいずれかに当てはまる場合、破産管財人が選任されて、財産の処分と債権者への配当、破産へ至った経緯の調査が行われます。

  • 一定の基準以上の財産がある場合(基準は裁判所によって異なります)
  • 破産手続き前に財産を処分したり、一部の債権者のみを優遇したりした行為がある場合
  • 免責不許可事由がある場合

破産管財人が選任されない場合、破産手続開始決定と併せて破産手続きが廃止されて免責手続きに移行します(同時廃止)。

(2)借金を免除する免責手続き

裁判所で行われる免責審尋に出席して裁判官の質問を受けたのち、裁判所の免責許可または不許可の決定を待つことになります。

免責許可が確定すると、法的に借金の支払い義務がなくなり、自己破産による資格制限も解除されます。

(3)返済中の住宅ローンや自動車ローンはどうなる?

住宅ローンや自動車ローンで設定される抵当権などの担保権は、破産手続きによらず実行することができます。

自己破産の申し立てをすると、抵当権などの担保権が設定された住宅や自動車は、競売にかけられたり引き上げられたりすることは避けられません。

なお、住宅ローンや自動車ローンも破産の対象となるため、免責が許可されると残債の支払い義務はなくなります。

3. 他の債務整理との比較

借金の問題を解決するための債務整理は、自己破産のほかに「任意整理」や「個人再生」という手続きもあり、数多く利用されています。

それぞれの手続きの特徴や利用条件、メリットとデメリットを解説します。

(1)任意整理

①特徴

  • 裁判所を通さずに債権者と直接交渉して返済条件を変更する方法
  • 弁護士が委任を受けて任意整理をする場合、完済まで発生する利息を免除してもらった上で3年から5年かけて分割返済することが一般的

②利用条件

  • 継続的な収入があること

③メリット

  • 持ち家や自動車など残したい財産を処分せずに借金の負担を減らすことが可能
  • 保証人がいる場合も対応可能
  • 借金の原因は問題にならない
  • 職業などの資格制限を受けない

④デメリット

  • 任意整理に応じてもらえないこともある
  • 取引期間が短い場合は借金の減額幅があまりないことが多い
  • 給料の差し押さえなど強制執行を止めることはできない

(2)個人再生

①特徴

  • 裁判所に申し立てをして、強制的に借金を減額(最大9割)してもらうことが可能

②利用条件

  • 継続的な収入があること
  • 借金の総額が5000万円以下であること(住宅ローンを除く)

③メリット

  • 住宅ローンの支払いを続けて持ち家を維持することも可能
  • 借金の原因は問題にならない
  • 職業などの資格制限を受けない

④デメリット

  • 裁判所に納める予納金が高額な場合がある(東京地裁の場合15万円以上)
  • 債権者の半数以上または債権額にして半数を超える同意を得る必要がある。※不同意があると手続きが打ち切られる(小規模個人再生の場合)

債務整理の方法は自己破産以外にもあり、どの方法を選ぶべきなのかは個人の状況により異なります。債務整理をしたいと思ったら、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士JP編集部
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  • こちらに掲載されている情報は、2021年09月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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