借金問題を解決する任意整理とは? 流れをわかりやすく解説

借金問題を解決する任意整理とは? 流れをわかりやすく解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

借金が膨らみ、債務整理をお考えの方もいらっしゃるでしょう。債務整理の方法の一つ、任意整理は、文字通り、裁判所を通すことなく「任意」で債権者と交渉をして借金を減額する交渉をすることを指します。

本コラムでは、任意整理について手続きの流れなど解説していきます。

1. 任意整理とは?

任意整理とは、借金の返済が困難になった場合の債務整理の一つであり、裁判所を通さずに債権者と交渉して新たな返済条件を定める手続きです。

返済が困難になった場合、まずは支払いコースの変更により返済額を減らす方法を考えられるかもしれません。

これは、病気や急な出費により一時的に返済が厳しい場合は有効な方法ですが、借金の額が大きくなり過ぎた場合には、裁判所を介する自己破産や個人再生によって抜本的に解決する必要があります。

一方で、任意整理では、月々の返済額だけではなく、利息のカットを骨子とした交渉を行います。しかし、利息をカットしてもらうといっても、どれくらいのメリットがあるのかピンとこないかもしれません。

たとえば、200万円の借金(利息年15%・毎月の返済額5万円)があるケースで、

  • 契約どおりに返済
  • 支払いコース変更により返済額を減らす
  • 任意整理により利息をカット

の3パターンで完済までの返済総額、返済期間を比較すると次のようになります。

契約どおり返済 支払いコース変更
(5万円→4万円)
任意整理により
利息をカット
月々の返済額 5万円 4万円 4万円
利率 年15% 年15%
完済までの利息 約79万円 約115万8000円
返済総額 約279万円 約315万8000円 200万円
返済期間 56か月 79か月 50万円

利息のカットにより、約79万円の金利負担がなくなり、月々の返済額と返済期間を減らすことが可能になります。

2. 任意整理のメリット・デメリット

任意整理にはメリットがある反面、自己破産や個人再生に比べて劣っている点もあり、注意が必要です。

(1)任意整理のメリットとは

任意整理のメリットとしては以下のことが挙げられます。

①手続き負担が小さい

上述した通り、任意整理の場合は裁判所を通さず、債権者との交渉によって進められるため、書類の準備などにかかる負担が自己破産や個人再生と比較し小さいと言えます。

②返済負担軽減

利息カット、遅延損害金減免、返済額・回数の見直し、利息制限法に基づく計算見直しなどにより、毎月の返済を楽にすることができます。

また、ケースによっては、完済までの出費を減らすことができます。

さらに、一括請求されている場合に、任意整理により分割和解することで月々の負担を減らすことができます。

③財産手放しの必要性がない

任意整理の場合、対象に含める債権者を自由に選択できるため、自宅や車などの資産を維持しながら、債務整理を進めることが可能です。

④職業・居住制限がない

自己破産に比べて、仕事や住居に関する制限がないため、生活やキャリアに影響を及ぼしません。

⑤保証人の迷惑を減らす

保証人付きの債権も選別して対象外にすることができるため、保証人に負担をかけずに手続きを進めることができます。

⑥介入業者を選ぶことができる

もっともメリットの多い債権者だけの介入を選択できるなど、介入業者を選ぶことができます。

これらのメリットから、任意整理は、自己破産や個人再生に比べて、比較的負担が少なく、生活スタイルを維持しながら債務問題を解決する有効な手段と言えるでしょう。

(2)任意整理のデメリットとは

任意整理にはいくつかのデメリットもあり、注意が必要です。

任意整理の場合、着手には債権者の合意が必要となるほか、元本の減額はほとんどの場合認められず、債務の大幅な減額は見込めないというデメリットがあります。

また、新規借入の制限というデメリットも存在します。任意整理に着手すると、信用情報機関に事故情報が登録され、しばらくの間、新規の借入やクレジットカードの利用が一時的に制限されます。

そのため、債務整理に着手する前に、任意整理を選ぶべきか、それとも他の債務整理を検討するべきか、弁護士のアドバイスを求めてみましょう。

3. 任意整理の手続きの流れ

任意整理は私的な交渉であり、法律で手続きが決まっているわけではありません。

弁護士に相談して任意整理をすることになった場合、次のような流れで手続きを進めるのが一般的です。

(1)債権者へ受任通知

まず、弁護士が委任を受けて、債権者に任意整理を行うことを通知(受任通知)します。受任通知により、債権者は、本人に対して取り立てや催促をすることはできなくなります。

任意整理を開始すると、原則としてすべての返済は停止することになりますが、返済資金は弁護士へ預けて弁護士費用や任意整理後の返済に充てることになります。

(2)取引履歴の開示請求

受任通知と併せて、契約当初からの借り入れと返済を記録した取引履歴の開示を請求します。

平成22年以前から融資を受けていた場合、現在は認められていない「グレーゾーン金利」により利息計算されている可能性が高く、払い過ぎている利息がないか確認する必要があるためです。

取引期間が長い方は、債務額が大幅に減少したり、逆に過払い金を請求できるケースも少なくありません。また、すでに完済している借金でも、過払い金を請求できる可能性があります。

利息を支払い過ぎていても、自動的に引き直し計算してもらえるわけではなく、過払い金を請求できる場合でも、最終の弁済日から10年が経過すると時効が成立するので注意が必要です。

(3)和解案の作成・交渉

取引履歴により債務額を確認したら、

  • 3年から5年程度の分割払い
  • 和解日までの利息(経過利息)の免除
  • 和解日から完済までの利息(将来利息)の免除

による和解案を債権者に提案して交渉を行います。

業者によっては、会社の方針により利息の免除には一切応じないという対応をするところもあります。

また、融資を受けてほとんど返済していない状態では、任意整理に応じてもらえない可能性が高くなります。任意整理が難しい場合には、自己破産や個人再生による解決も選択肢となるでしょう。

4. 任意整理を弁護士に依頼すべき理由

任意整理の手続きは、法律知識が必要不可欠というわけではなく、自己破産や個人再生に比べて難易度が高いわけではありません。

しかし、個人の方が任意整理の交渉をしてもまったく応じてもらえないばかりか、不利な条件での和解に持ち込まれるリスクもあります。

(1)任意整理は債務整理全般の知識と経験が必要

任意整理による利息の免除は、債務者から見ると大きなメリットですが、債権者にとっては収益源である利息収入がなくなることになり、大きな痛手となります。

また、債権者には任意整理に協力しなければならない法的な義務があるわけでもありません。

一方で、任意整理に協力しない場合には、債権者にとってよりダメージが大きくなる自己破産や個人再生を選択されるリスクも考慮しなければなりません。

債務整理や訴訟対応の経験が豊富な弁護士が任意整理を受任している場合、元金だけでも回収できる可能性が高い任意整理に協力したほうが得策、という判断になりやすいといえるのです。

(2)不利な条件で和解をしてしまうリスクも

債務者本人が任意整理をしようとした場合、債権者は一般の顧客向けに用意している支払いコースの変更へ誘導されるのが一般的です。

しかし、返済額を減らすだけでは、一見月々の返済金が少なくなって楽になるメリットに惑わされがちですが、現実には金利負担が膨らむとともに返済期間が長期化して借金の悩みが長引くことによるデメリットの方が遥かに上回ることは先ほどのシミュレーションで紹介したとおりです。

一方で、債権者としても、一部の顧客のみを優遇することは会社の信用を損なうことにもなりかねず、顧客本人の申し入れにより利息の免除に応じるのは立場上難しいという面もあります。

また、貸金業者などの任意整理の担当者は、日々弁護士などを相手に少しでも有利な条件で和解するために交渉している熟練者です。

債務整理に不慣れな弁護士には対応を変えるノウハウも持ち合わせているといわれており、ましてや個人の方が交渉に臨むと不利な条件で押し切られるリスクが極めて高いといえます。

任意整理をお考えなら、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士JP編集部
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