自己破産をすると住宅ローンはどうなる? 自宅を残す債務整理の方法は?
自己破産をお考えの場合、自宅に住み続けることができるのか、気になっている方もいらっしゃるでしょう。本コラムでは、自己破産手続きの流れや特徴から、自宅での居住及び住宅ローンの返済を続けながら債務整理をする方法まで解説します。
1. 自己破産すると借金はどうなる?
自己破産は、裁判所から債務のすべてを免除してもらう、債務整理の最終手段ともいえる手続きです。
自己破産の手続きはどのように進むのか、住宅などの財産がどうなるのかについて解説します。
(1)自己破産手続きの流れ
自己破産の手続きは、「財産を調査、処分して債権者に配当を行う破産手続き」から「借金を免除する免責手続き」の順に進められます。手続きの大まかな流れを解説します。
① 破産手続き開始決定・事件の振り分け
裁判所に自己破産の申し立てをすると、裁判所は財産と債務の状況を書面で審査し、「支払い不能の状態」と認めれば破産手続き開始決定をします。
破産手続きは、原則として破産管財人を選任して行う必要があり、最低でも破産管財人の報酬として20万円の費用(予納金)が必要です。財産がその費用にも満たない場合は、破産手続きを行う必要もなく、破産手続き開始決定と同時に破産手続きが廃止(同時廃止)されて③の免責手続きへ移行します。
裁判所により異なりますが、概ね30万円以上の現金か個別に評価して20万円以上の財産がある場合は破産管財人が選任され、ない場合は同時廃止として処理される運用が一般的です。
② 破産管財人による管財業務・債権者集会
破産管財人が選任されると、財産の処分や債権者への配当が行われます。
個人の方の場合、破産手続き開始決定から約3か月後に開かれる第1回債権者集会までに管財業務が終了することがほとんどです。
管財業務が終了すると破産手続きは終了し、免責手続きへ移行します。
③ 借金を免除する免責手続き
免責の必要性や相当性は自己破産の申し立て時に書面で明らかにしていますが、直接裁判官から質問を受ける免責審尋という手続きが行われます。
特に問題がない場合は、免責審尋から1週間程度で免責許可決定がされることが一般的です。
(2)自己破産をしても引き続き保有できる財産
自己破産は財産の処分が前提となる手続きですが、個人の方は生活の維持のために必要な財産(自由財産)の保有が認められます。
法律上認められる自由財産は
- 99万円以下の現金
- 法律上差押えが禁止された財産(生活必需品や年金や生活保護受給権など)
ですが、これ以外の財産はすべて破産管財人が処分するというのは、費用だけがかさんで債権者の利益にもならないことがほとんどです。
そこで、裁判所の運用により、預貯金や家財道具、自動車など処分価格が20万円以下の財産も一律に自由財産として認められることが多くなっています。
なお、処分すべき財産には、生命保険の解約返戻金や退職金(破産開始時における支給見込み額の8分の1)のように将来発生する債権も含まれます。
(3)所有している住宅や住宅ローンはどうなる?
住宅や土地など比較的高額な財産は、破産管財人により売却されて、債権者への配当原資を構成することになります。
なお、住宅ローンを組んでいる場合は、住宅や敷地に抵当権が設定されていることが一般的ですが、抵当権は破産手続きとは関係なく実行することが可能とされています。
そのため、抵当権が設定された住宅や土地については、抵当権者が競売を申し立て、競売手続きにより売却することで、売却代金から債権を回収することができます。競売手続き後に住宅ローンの債務が残る場合でも、免責許可決定により支払義務が免除されます。
しかしながら、競売手続きでは時間がかかる他、何より売却代金が低廉になりがちで、債務者の利益にも債権者の利益にもなりません。そこで、大抵の場合、破産管財人は、不動産の任意売却の道を模索します。
場合によっては、入札を行い、可能な限り高値で買ってくれる買主を探し、抵当権者から買値について納得を得たら、更に抵当権者と交渉して売却代金の中から幾らを抵当権者に支払うか、幾らを破産財団に組み入れるか、幾らを費用(不動産業者の仲介料や司法書士の登記費用)に充てるか等を合意し、抵当権の抹消に協力してもらった上で買主に売却することになります。
いずれにせよ、自己破産した場合、所有する住宅を手放すことは避けられません。
2. 自宅を残したい場合の債務整理の方法
住宅ローンの返済に加えて、ある程度の返済能力がある場合は、住宅ローン以外の債務を減額してもらい債務整理をする選択肢もあります。
債務整理としてよく利用されている任意整理と個人再生について解説します。
(1)任意整理
任意整理は、債権者との交渉により返済条件を変更する和解契約を締結し、債務整理をする方法です。
弁護士が委任を受けて任意整理を行う場合、利息の免除により和解することが一般的で、完済までの弁済総額は軽減されますが、元金部分を3年から5年で分割弁済する必要があります。
住宅ローンは、金利の減免を受けられる可能性が低く、最大1年程度返済額の減額や猶予(リスケジュール)を受けられるのがせいぜいです。
そのため、住宅ローン以外の債務のみ任意整理を行い、住宅ローンは従前どおり弁済するのが基本的な解決方法になります。
なお、平成22年以前からいわゆる消費者金融との取引がある場合、利息の払い過ぎにより債務の額が減少したり、過払金が発生したりしていることもあります。
取引期間が長い場合は、契約当初からの取引履歴を取り寄せて、債務の額や過払い金の額を調査する必要があります。
(2)個人再生
個人再生は、住宅ローンを除く債務の額が5000万円以下の場合に利用できる手続きです。
自己破産では、自由財産以外の財産を処分して債務の免除を受けるのに対し、個人再生は、財産を処分する代わりにその相当額(または最低弁済額)を3年から5年かけて分割弁済し、残りの債務を免除してもらう手続きです。
財産を処分する必要がなく、高額な財産や退職金支給見込みがない場合は、債務が8割以上カットされる可能性もあります。
さらに、住宅ローンを従前どおり(またはリスケジュールして)弁済しながら、住宅ローン以外の債務を減額してもらう「住宅ローン特則」を利用することもできます。
住宅ローン特則は、
- 住宅ローンが住宅購入やリフォームのため融資であること
- 住宅に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと
- 本人が所有し、居住している住宅であること
など種々の条件があります。
「住宅を残したい」「債務の減額幅を大きくしたい」などの希望によって、その方に合った債務整理の方法も変わりますが、債務の状況が悪化すると、債務整理の選択肢も少なくなってしまいます。
できるだけ早い段階で、債務整理の専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年08月17日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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