
借金取り立ての訪問はある?対処法や借金の法的解決方法も紹介
借金を滞納したときに気になるのが自宅や勤務先に借金取り立ての訪問があるのかという点です。結論から言うと借金取り立ての訪問は、法律により厳しく規制されていますので、借金を滞納したとしても基本的にはありません。
ただし、借金を滞納したままの状態が続くと債権者から訴訟提起され、財産を差し押さえられるなどのリスクがありますので、返済が厳しいと感じるときはすぐに弁護士に相談するようにしましょう。
本記事では、借金取り立て訪問の対処法や借金の法的解決方法について解説します。
1. 借金取り立ての訪問は「基本的に」ない
貸金業法では、借り主の保護と貸金業の適正化を図るために、貸金業者による不当な取り立てを禁止しています。借金取り立ての訪問に関しても厳しいルールが設けられていますので、基本的には貸金業者が借金取り立てのために訪問してくることはないでしょう。
業者側も費用対効果の観点から、度重なる催告・督促を無視する、連絡がまったくとれないなど他に手段がない場合でなければ訪問するメリットが少ないことも、借金取り立ての訪問がなされない理由の一つといえます。
2. 貸金業法によって禁止されている取り立て行為
貸金業法21条では訪問に関する一定の行為が規制されており、これは金銭消費貸借契約書で同意があっても排除することのできない強行規定です。
このような貸金業法による規制に違反した場合、貸金業者には業務停止命令などの行政処分や2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらの併科という刑事罰が科されます。
以下では、貸金業法で禁止されている取り立て行為を説明します。
(1)訪問に関連する規制
貸金業法21条では、取り立て行為の規制がなされていますが、そのうち「訪問」に関連する規制としては、以下のようなものが挙げられます。
①正当な理由なく早朝や深夜に訪問すること
貸金業者は、正当な理由なく午前8時以前または午後9時以降に債務者の自宅を訪問することが禁止されています。正当な理由の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 債務者の自発的な承諾がある場合
- 債務者と連絡をとるための方法がない場合
②返済の連絡をしたのに自宅を訪問すること
貸金業者は、債務者から返済に関する連絡や連絡を受ける時期の申し出があった場合、正当な理由なく午前8時以前または午後9時以降以外の時間帯に自宅を訪問することが禁止されています。
正当な理由の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 返済や連絡について具体的な期日の申し出がない
- 直近において債務者からの返済や連絡に関する申し出が履行されていない
③勤務先への取り立て
貸金業者は、正当な理由なく借金取り立てのために債務者の勤務先など自宅以外の場所を訪問することが禁止されています。
正当な理由の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 債務者の自発的な承諾がある場合
- 債務者と連絡をとるための方法がない場合
- 債務者の連絡先が不明で、連絡先を確認することを目的として電話連絡をする場合
④退去すべき旨の意思表示をしたのに退去しない
貸金業者は、債務者から退去すべき旨の意思表示があったときは直ちに退去しなければなりません。
⑤債務者の私生活に関する事実を明らかにする取り立て
貸金業者は、張り紙、立て看板などの方法で債務者の借り入れに関する事実や私生活に関する事実を債務者以外の人に明らかにすることが禁止されています。
これは、債務者に心理的な圧迫を加えて弁済を強要することを禁止する趣旨の規定です。
(2)その他の規制
貸金業法21条では、以下のような訪問に関連しない取り立て行為についても規制されています。
- 他社からの借り入れで返済するよう要求すること
- 債務者以外の家族に返済を要求すること
- 家族が協力を拒否しているのに無理やり借金取り立てに協力させること
- 弁護士から受任通知が届いた後の取り立て
- 禁止されている取り立て行為をする旨告げること
3. 一般的な借金取り立ての流れ
以下では、一般的な借金取り立ての流れを説明します。
(1)案内による督促
返済期日を過ぎても借金の返済ができない場合、債権者から電話や手紙による督促が行われます。
(2)内容証明郵便による督促
借金の滞納をしたまま一定期間が経過すると債権者から内容証明郵便による督促が行われます。
この段階になると借金の残額を一括で返済するよう求められてしまいます。それができないと裁判などの法的手続きに移行することになります。
(3)仮差し押さえ
債権者は、裁判をする前に債務者の財産を保全する目的で仮差し押さえの申し立てをすることがあります。たとえば、預貯金の仮差し押さえが認められると、預貯金の自由な引き出しができなくなりますので、生活にも支障が生じてしまうでしょう。
(4)裁判
内容証明郵便による督促後も返済がない場合、債権者は、裁判手続きにより債権回収を図ります。債権回収に利用される手続きとしては、通常の訴訟手続きと支払督促の2種類があります。
裁判所から訴状や支払督促が届いたときは無視せず適切に対応するようにしてください。
(5)強制執行
通常訴訟や支払督促により債権者の請求が認められると、債権者は、最終的に強制執行の申し立てをして、債務者の財産(給料、預貯金など)から強制的に未払い債権の回収を実現します。
4. 借金取り立ての訪問に対する対処法
債権者から借金取り立ての訪問をされた場合、以下のような対処法を検討しましょう。
(1)用件を聞いて帰ってもらう
貸金業法では借金取り立ての訪問に関して厳しいルールを設けていますので、違法なヤミ金業者でない限りは、暴力や脅迫などの乱暴な借金取り立てをされることはありません。
また、自宅に居座る行為は禁止されていますので、債権者が自宅を訪問してきたときは、余計な言動(借金の存在を認める言葉を吐く、手元のお金で返済するなど)はせずに、用件だけ聞いて退去してもらいたい旨の意思表示をして、早々に帰宅してもらうのが最善です。
なお、債権者の言動によっては、住居侵入罪(刑法130条前段)、不退去罪(刑法130条後段)、脅迫罪(刑法222条)、暴行罪(刑法208条)などの犯罪が成立する可能性もあります。
(2)債務整理をする
債権者から借金取り立ての訪問をされた場合、上記の対応によりその場をしのぐことができますが、それだけでは根本的な解決にはなりません。借金の返済が難しい状況であればすぐに弁護士に相談して債務整理をするようにしましょう。
債務整理とは、借金を減額または免除することにより、借金返済の負担を軽減することができる方法です。債務整理には主に以下の3つの方法があります。
-
任意整理
債権者との交渉により借金返済負担を軽減する方法
-
自己破産
裁判所に申し立てをして借金の返済義務を免除してもらう方法
-
個人再生
裁判所に申し立てをして借金総額を大幅に減額してもらう方法

債務整理の方法にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、自分に合った最適な方法を選択するためにもまずは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士に債務整理を依頼すれば、債権者からの直接の取り立てを避けることができます。
債務整理に関しては初回無料相談を受け付けている法律事務所もありますので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
(3)ヤミ金を利用して困っている場合は警察か弁護士に相談を
ヤミ金業者は、消費者金融とは異なり貸金業法などの規制を無視して、違法な取り立てをしてくることがあります。
ヤミ金業者からの借金が返せず、厳しい取り立てを受けているときは、すぐに警察か弁護士に相談するようにしてください。
ヤミ金業者は、警察沙汰になるのをおそれていますので、弁護士が介入すれば無理な回収を控えてくれる可能性が高くなります。
また、弁護士からヤミ金への返済義務がないことを通知することでヤミ金への返済も免れることが可能です。
借金問題はひとりで悩んでいても解決困難ですので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2025年07月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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