
第三者弁済とは? 借金の肩代わりが有効になる要件と注意点
借金の返済が難しくなったとき、家族や友人が代わりに返済してくれることもあるでしょう。
このような第三者弁済は一見ありがたいものの、後に「返した分を払え」と請求されたり、債権者との関係が複雑になったりする可能性があるため、注意が必要です。
本コラムでは、第三者弁済の仕組みや第三者弁済ができないケース、第三者弁済をするにあたっての注意点を解説します。
1. 第三者弁済とは?基本的な仕組み
まず、第三者弁済の基本的な仕組みについて確認しておきましょう。
(1)第三者弁済とは、支払い義務のない第三者による弁済
第三者弁済とは、債務者以外の第三者による弁済をいいます。根拠条文は民法第474条です。
(第三者の弁済)参照:民法| e-Gov 法令検索第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。
たとえば、Aさん(債務者)が、Bさん(債権者)からお金を借りていたとします。本来ならAさんが返済するべきですが、何らかの理由で返済できなくなってしまいました。ここで登場するのが、第三者であるCさんです。Cさんは、Aさんが借金の返済に困っていることを心配し、Aさんの代わりにBさんへお金を支払います。これが第三者弁済の仕組みです。

なお、ここでいう「第三者」とは、債務について法律上の利害関係を有しない者をいい、以下のような人が該当します。
-
債務者の親族(父母、配偶者など)
-
債務者の友人
(2)保証人等が支払うのは「代位弁済」
第三者弁済と類似の制度として、代位弁済があります。
代位弁済とは、保証人や物上保証人(債務者の債務の担保として、自らの不動産に担保権を設定した人)が債務者に代わって弁済することをいいます。第三者による弁済で、元の債権債務が消滅するのが通常ですが、代位弁済の場合には、返済をした第三者が債権者の立場を引き継ぎ、債務者に対してその権利(求償権)を行使できます。
求償権が発生する法的根拠は、以下のとおりです。
- 民法第459条(委託を受けた保証人の求償権)
- 民法第462条(委託を受けない保証人の求償権)
- 民法第351条(物上保証人の求償権)

代位弁済と第三者弁済は、債務者以外の人物が弁済するという点は共通しますが、債務者に借金を返す責任があるかが異なります。もともと返済する義務がある人物の弁済が「代位弁済」、返済の義務がない人物の弁済が「第三者弁済」です。
(3)第三者弁済ができるケースとできないケース
第三者弁済は、どのような場合でもできるわけではありません。以下のように、できるケースとできないケースが定められています。
第三者弁済ができるケース | 第三者弁済ができないケース |
---|---|
①弁済について「正当な利益」を有するとき ②債務者の意思に反しないとき ③債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとき |
①債務者の意思に反する弁済で、債権者の同意がないとき ②債務の性質が第三者弁済を許さないとき ③当事者間で第三者弁済を禁止していたとき |
以下、それぞれを解説します。
【できるケース】
①弁済について「正当な利益」を有するとき
「正当な利益」とは、弁済をすることについて法律上の利害関係を有することをいいます。債務者本人が弁済をしないことで自身の利益が失われる可能性があるため、正当な利益を有する者は債務者の意思に関係なく第三者弁済ができます。
例:物上保証人が、第三者弁済を行なった
②債務者の意思に反しないとき
債務者が返済について同意しているのであれば債務者に不利益を与えないため、第三者弁済は有効になります。
例:子どもの同意を得たうえで、親が子どもの借金を肩代わりした
③債務者の意思に反することを債権者が知らなかったとき
債務者が「他人が返済しないでほしい」と思っていたとしても、それを知らずに債権者が第三者からの弁済を受けた場合には、債権者保護の観点から、第三者弁済は有効とされます。
例:本人が知人に借金を肩代わりしてほしくないと伝えていたが、知人が勝手に消費者金融へ弁済したとき、消費者金融が本人の意思を知らなかった。(=第三者弁済は有効となる。)
【できないケース】
①債務者の意思に反する弁済で、債権者の同意がないとき
上記の「できるケース①〜③」に当てはまらない場合は、第三者弁済は認められません。
例:債務者の知人と称する第三者が、債務者の借金を肩代わりすると主張してきた。(=本人から委託を受けていることを消費者金融が知っていた場合を除き、第三者弁済は無効となる。)
②債務の性質が第三者弁済を許さないとき
本人でなければ契約の目的を果たせない内容の債務については、第三者弁済はできません。
例:イラストレーターが、「依頼されたイラストを自分で描く」という約束をしていた。
③当事者間で第三者弁済を禁止していたとき
当事者間で第三者弁済を禁止する旨を合意した場合には、合意内容が優先され、原則として第三者弁済はできません。
例:債務者と債権者の契約で、「第三者からの弁済は一切認めない」と明確に定めた。
2. 第三者弁済をするとどうなる?
有効な第三者弁済が行われた場合に発生する法的効果について、債務者をAさん、債権者をBさん、第三者をCさんとして考えてみましょう。
(1)債務者と債権者間:債権債務は消滅
CさんがAさんの借金を肩代わりした場合、AさんとBさんの間の債権債務は消滅します。第三者弁済により、本来の債務が履行されたとみなされるためです。
(2)債務者と第三者間:弁済により代位が発生
CさんがAさんの借金を肩代わりした場合、もともとBさんが持っていたAさんに対する権利がCさんに引き継がれ、Aさんに債務を行使できます。これを「弁済による代位(民法第499条)」といいます。
ただし、Cさんが弁済による代位を行使するためには、次のいずれかの条件を満たしている必要があるため、注意が必要です。
- BさんがAさんに対して、Cさんから弁済があった旨を通知すること
- Aさんが、Cさんが代わりに返済した旨を承諾すること
3. 第三者弁済に潜むリスクとは?事前に知っておきたい注意点
他人の借金を肩代わりできる第三者弁済は便利な制度ですが、リスクもあるので、慎重に利用しましょう。
ここでは、主なリスクを紹介するので、しっかりと確認しておきましょう。
(1)債権者に弁済を拒否される場合がある
2020年に民法が改正される前は、債権者は第三者からの弁済を正当な理由なく拒否できませんでした。
しかし、後になって第三者弁済が債務者の意思に反していたことが判明すると、第三者弁済は無効とされ、債権者は金銭を返還する必要がありました。つまり、債権者は最初に断ることができないのに、後から「無効だったので」と、返すよう求められるリスクを負わなければなりませんでした。
そこで、現在ではルールが見直され、債権者は「正当な利益がない第三者」からの弁済を拒否できるようになりました。
(2)支払い義務は免除されない
第三者弁済により債権者への支払い義務は消滅しますが、上述のとおり「弁済による代位」が発生し、新たに第三者に対する支払い義務が発生する可能性があります。
(3)「返済代行」と第三者弁済の違い
返済代行とは、債務整理の手続きのひとつである任意整理後に、債務者が用意した返済資金をもとに債権者へ代わりに返済するサービスです。主に弁護士や司法書士が行うサービスで、返済の遅れによる貸金業者などからの支払督促、突然の電話や訪問といった執拗な取り立てに悩む債務者の精神的な負担を軽くする目的があります。
返済代行は、あくまで債務者の資金を弁済に用いるので、第三者が自己の資金で弁済を行う「第三者弁済」とは性質が異なります。
返済代行の仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
4. 第三者弁済でトラブルになった場合には、弁護士に相談を
第三者弁済は、債務者と第三者、債権者との関係性や契約内容によって、効力の有無が異なるので、トラブルへと発展する場合があります。
トラブルを防ぎたい場合や、トラブルが発生した場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すると、以下のようなメリットがあります。
-
第三者弁済に関する契約書の作成、内容確認を行ってもらえる
-
法的リスクの回避方法についてアドバイスを受けられる
-
トラブル発生時の対応方法についてアドバイスを得られる
弁護士の助言を得ながら、安心して第三者弁済を進めましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年06月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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