株で借金を抱えた場合の解決方法と繰り返さないためにできること

株で借金を抱えた場合の解決方法と繰り返さないためにできること

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

資産運用の手段として株式投資をしている方もいると思います。

通常の株取引(現物取引)であれば、購入時の価値よりも下がってしまうことはあっても、借金を抱えることはありません。しかし、信用取引による株の購入、追証の発生、借金を元手に株を購入、空売りで株価が上がったような場合には、借金を抱えてしまうことがあります

株式投資で抱えた借金をそのままにするのは危険ですので、債務整理などの方法で借金問題を解決するようにしましょう。

本記事では、株で借金を抱えた場合の解決方法と繰り返さないためにできることを解説します

1. 株式投資で借金を抱えてしまう主な原因

通常の株取引(現物取引)であれば、借金を抱えることはあり得ません。
しかし、現物取引ではなく以下のような方法で株式投資をしている方は、相場の変動により借金を抱えてしまう可能性があります。

(1)信用取引で株を購入した

信用取引とは、証券会社に保証金を預けることで、保証金の約3.3倍までの金額を取引できる仕組みです。たとえば、自己資金として100万円を預けると330万円までの取引が可能になります。
信用取引は、少ない元手で大きな利益が得られるというメリットがありますが、その反面株価が下がったときには元手を上回る損失が生じるデメリットがあります。

信用取引のしくみ

現物取引であれば、株価が0円になったとしても、出資した元手が0円になるだけでマイナスになることはありません。しかし、信用取引だと元手を上回る損失が生じる可能性があるので、借金をしなければならない状況になることがあります。

(2)追証(追加証拠金)の支払いが発生した

追証(おいしょう)とは、正式名称を「追加証拠金」といい、信用取引をしている銘柄に含み損が生じた場合または上場株式を保証金にしていてその価値が下がった場合に、追加で保証金を支払うことをいいます。

追証が支払えないと、強制的に決済(ロスカット)されてしまいますので、大幅な損失となります。ロスカットを避けるためには、追加の証拠金の支払いが必要になりますが、手元に資金がなければ借金して支払うことがあります。

(3)借金を元手に株を購入した

株式投資は、基本的には自己資金により行う方がほとんどですが、中には借金を元手に株を購入する方もいます。

株式投資は、100%もうかる保証はありませんので、借金を元手に購入した株の価値が大暴落すると、株式の売却だけでは借金の返済ができず、多額の借金を抱えてしまいます。株式投資は、リスクがあるため余裕のある自己資金で行うべきでしょう。

(4)空売り(信用売り)で株価が値上がった

信用取引により株を購入することを「信用買い」といいますが、信用取引には「空売り(信用売り)」という特別な取引方法があります。

空売りとは、証券会社から株式を借りて売り付け、決済期日までにその株式を市場から買い戻して証券会社に返して、その差額で利益を得る方法です。
たとえば、証券会社から借りた株式を100万円で売却後、株価が値下がりしたときに70万円で買い戻せば、30万円の利益を得ることができます。

空売りの仕組み

空売りは、株価が値下がりしている状況であれば利益が生じますが、反対に株価が値上がりしている状況だと損失が発生します。損失が拡大すると強制的に決済(ロスカット)されてしまうため、追証の支払いのために借金をしてしまうケースもあります。

2. 株式投資による借金を解決する方法

株式投資による借金を解決するには、以下のような方法が考えられます。

(1)借金を放置・滞納しない

株式投資により借金を抱えた場合、そのまま放置して滞納するのは危険です。
借金の滞納が続くと債権者から訴訟を提起され、支払いを命じる判決が確定すれば、債務者の財産を差し押さえるために強制執行の申し立てをされてしまいます。強制執行の申し立てがされると預貯金や給料を差し押さえられてしまうリスクがあるので注意が必要です。

(2)自力で返済もしくは家族の援助を得る

株式投資による借金を抱えてしまったときは、それ以上借金が増える前に取引をやめ、きちんと借金の返済をしていくことが大切です。

自力で返済が難しいようであれば、家族に借金のことを正直に話し、家族の援助を得て借金の返済をしていくようにしましょう。借金の返済のために借金を重ねることは根本的な解決にはなりませんので、絶対にしてはいけません。

(3)債務整理を行う

借金の返済が難しいときは債務整理を検討しましょう。債務整理には、任意整理・自己破産・個人再生の3種類があり、それぞれに異なる特徴があります。

任意整理・個人再生・自己破産のメリットとデメリット

①任意整理

任意整理とは、債権者との交渉により借金の返済負担を軽減する方法です。任意整理をすると以下のような効果が期待できます。

  • 遅延損害金の減額、免除
  • 将来利息のカット
  • 毎月の支払金額、支払期間の変更
  • 利息制限法に基づく引き直し計算

任意整理は、自己破産や個人再生のように大幅な借金減額の効果は期待できませんが、対象となる債権者を自由に選べるので、ほかに借金がある場合でも株式投資による借金のみを対象に債務整理を行うことが可能です。

②自己破産

自己破産とは、裁判所から免責許可決定を得ることで借金の返済義務を免除してもらう方法です。

自己破産をすることで基本的にはすべての借金をゼロにすることができるため、借金問題を根本的に解決できます。

しかし、破産法では免責不許可事由が定められており、一定の事由に該当する場合には免責を受けることができません。株式投資による借金は、免責不許可事由のひとつである「射幸行為」に該当しますので、形式的には免責を受けられないことになります。

ただし、免責不許可事由に該当する場合でも裁量免責により免責が受けられる可能性もあるので、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

③個人再生

個人再生とは、裁判所から再生計画案の認可を得ることで借金を大幅に減額、それを原則3年(最長5年)の分割払いにできる方法です。
個人再生は、自己破産のように免責不許可事由はありませんので、株式投資が原因の借金であっても個人再生の対象になります。ただし、個人再生を利用するには安定した収入が必要となりますので、無職の方は利用できません。

3. 株式投資の借金は弁護士への相談がおすすめ

株式投資で借金を抱えてしまった方は、借金問題を解決するために弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼することで次のようなメリットが得られます。

(1)最適な債務整理の方法を選択可能

債務整理には、任意整理・自己破産・個人再生の3種類があり、それぞれに異なる特徴があります。
どのような手段が最適であるかは、具体的な状況によって異なりますので、弁護士に相談してアドバイスしてもらうようにしましょう。
弁護士であれば状況に応じた最適な債務整理の方法を選択できるため、株式投資による借金問題を効率的に解決できます。

(2)債務整理の交渉を一任できる

弁護士に依頼すれば債務整理の交渉を一任できます。

債権者を相手に有利な条件で和解するには、知識や経験が不可欠なので、自分で対応するよりも専門家である弁護士に任せた方が安心です。

また、弁護士から債権者に受任通知を送れば、債権者からの取り立てをストップでき、不安な生活からも解放されるでしょう。

(3)煩雑な事務手続きから解放される

債務整理は、債権者との交渉、裁判所への申し立て、裁判所とのやり取りなど煩雑な事務手続きが発生します。これらの手続きをすべて債務者自身で行うのは負担が大きいでしょう。

弁護士に依頼すれば債務整理に関するすべての手続きを任せられるので、煩雑な事務手続きからは解放されます。

4. 株式投資で借金を繰り返さないためには?

株式投資で借金を繰り返さないためにはどうしたらよいのでしょうか。

(1)現物取引のみで運用する

株式投資による借金を回避するには、信用取引ではなく現物取引のみで運用するべきです。

現物取引であれば、株価が暴落して損失が発生したとしても、出資した元手が減るだけなので借金を抱える心配はありません。

(2)銘柄を分散する

株式投資のリスクを最小限に抑えるなら、複数の銘柄に分散して投資することをおすすめします。

投資対象を分散させることで、1つの銘柄が暴落したとしても、(1銘柄あたりの)投資金額が少ない分だけ損失のダメージは低く済みます。また、他の銘柄の値上がりが損失を相殺してくれる可能性も期待できます。これにより借金のリスクを低く抑えることが可能です。

分散投資の仕組み

(3)余剰資金で運用する

株式投資をするなら借金ではなく余剰資金で運用するべきです。
余剰資金であれば株価が暴落して損失が発生したとしても、生活に支障は生じませんので借金をするリスクは生じません。多くの利益を得たいという気持ちも理解できますが、借金をしてまで株式投資をするのはおすすめできません。

(4)株を売るタイミングを定める

株価が下がっていると「今売っても損をする」「また上がるかもしれない」などと考え、なかなか損切りをすることができません。しかし、そのまま株価が下がり続けると損失が拡大してしまうため、株を売るタイミングが重要です。
株式投資をする際には、「購入時より〇%下がったら絶対に売る」などのルールを設けておくことで損失の拡大を防ぐことができます。

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  • こちらに掲載されている情報は、2025年06月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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