
住民税を滞納するとどうなる? 借金問題と併せて解決する方法とは
住民税を滞納すると、延滞金が加算されるだけでなく、最終的には財産を差し押さえられるおそれがあります。
税金は債務整理の対象外ですが、借金を抱えている場合は債務整理で返済の負担を軽減することにより、住民税の滞納を解消しやすくなります。
本記事では、住民税を滞納することによるリスクや解決方法などを解説します。
1. 住民税の滞納が続いた場合のリスク
会社員なら一般的に給料から住民税が天引きされるので、滞納する心配はありません。しかし、自営業の方は自分で住民税を納付しなければならないため、お金に余裕がないときは滞納してしまうこともあるでしょう。
住民税を滞納すると、以下のようなリスクが生じます。
(1)延滞金がかかる
住民税を定められた納期限(毎年6月、8月、10月、1月の末日ころ)までに納付しなければ滞納となり、1日ごとに延滞金が加算されます。
延滞金の額は、次の計算式で算出されます。
延滞金=未納税額×延滞金の割合×延滞日数÷365日
延滞金の割合は、以下のとおりです。
-
納期限の翌日から1か月以内
「年7・3%」または「特例基準割合+1%」のいずれか低い方
-
納期限の翌日から1か月が経過した後
「年14・6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い方
特例基準割合は1年ごとに定められるため、延滞金の割合は年によって変動することがあります。令和4年(2022年)~令和7年(2025年)では、延滞金の割合は以下のとおりとされています。
-
納期限の翌日から1か月以内
年2・4%
-
納期限の翌日から1か月が経過した後
年8・7%
滞納を放置すると延滞金が加算され続けるため、納税の負担が重くなることに注意が必要です。
(2)督促状が自宅に届く
住民税の滞納が発生してから20日以内に、役所から自宅へ督促状が発送されます。
督促状は納税を促すための書類ですので、受け取った後、速やかに滞納を解消すれば大きな問題にはなりません。
ただし、家族に督促状を見られると滞納がバレるおそれはあるでしょう。
(3)滞納処分がなされ財産を差し押さえられる
役所が督促状を発送してから10日以内に滞納を解消しなければ、滞納処分として財産を差し押さえられる可能性が出てきます。
もっとも、通常はその後もある程度の期間は催告が繰り返されますし、実際に差押えが行われる前には財産調査も行われます。直ちに財産を差し押さえられるわけではありません。
なお、役所の滞納処分による差押えは、借金を滞納した場合の差押えとは異なり、裁判を経ずに行われます。したがって、「裁判所から書類が届くまでは放置しても大丈夫」などと考えるのは危険です。
(4)社会的信用を失う
差押え前の財産調査では、滞納者の自宅だけでなく、職場も捜索されます。自営業者の場合は、売掛債権などを調査するために、取引先も捜索の対象となります。
そのため、家族はもちろんのこと、会社員なら勤務先の会社、自営業者なら取引先にも滞納がバレてしまい、社会的信用を失うおそれがあります。
差し押さえられた財産は換価処分となり、滞納税に充てられてしまいます。給料や預金口座を差し押さえられた場合には、生活費に窮することもあるでしょう。自営業者の場合は、預金口座を差し押さえられるとその銀行からの融資が難しくなるため、資金繰りが苦しくなり、事業の継続が危ぶまれる可能性も高いです。
2. 住民税を納付できないときの対処法
住民税の滞納をすぐに解消できない場合は、放置せず、速やかに以下のように対処しましょう。
(1)役所への相談
まずは、役所の担当課へ相談しましょう。なるべく、督促状が発送されてから10日以内に相談することが望ましいです。
住民税をすぐには納付できない事情を具体的に伝えて、少しずつでも納付する意思があることを伝えれば、ある程度の期間は滞納処分を待ってもらえる可能性があります。
その間に滞納の解消を目指すことになりますが、支払いのめどが立たない場合には、以下の納税猶予や換価猶予の申請を検討しましょう。
(2)納税猶予の申請
以下の事情により納税が困難な場合には、原則1年以内に限り、納税を待ってもらえる可能性があります。この制度のことを「納税猶予」といいます。
- 災害や盗難などで財産上の被害に遭った
- 本人または家族の病気やけが
- 廃業や休業
- 事業場の著しい損失
納税が猶予されたら、1年以内に一括で支払う(延納)か、分割で支払う(分割納付)ことになります。役所の担当者にご相談の上、要件を満たす場合は申請するとよいでしょう。
(3)換価猶予の申請
滞納が続いて財産を差し押さえられたとしても、以下の要件を満たす場合は、原則1年以内に限り、換価処分(差押財産の売却など)を待ってもらえる可能性があります。この制度のことを「換価猶予」といいます。
- 納税すると事業の継続や生活の維持が困難となるおそれがある
- 納税について誠実な意思があると認められる
ただし、換価猶予を認めてもらうためには、原則として納期限から6か月以内に申請をする必要があります。納税が難しい場合には、早めに役所へ相談することが重要といえるでしょう。
3.借金で住民税の滞納を解消するのはあり?
住民税を滞納してしまう状況では、生活費の支払いも苦しいことが多いでしょう。そんなときに、借金をして生活費の不足を補うことは問題ありません。
また、税金の滞納は債務整理の対象外であるのに対して、金融機関などからの借金は債務整理で解決することが可能です。そのため、借金を抱えている場合には、借金返済より住民税の支払いを優先するのも得策といえます。
しかし、返済できないと知りつつ借金をするのは詐欺罪に該当することに注意が必要です。刑事告訴されるケースはまれですが、自己破産をしても免責が認められない可能性があるなど、債務整理に支障をきたすおそれもあります。
また、支払いのために借り入れをすると利息の負担が重くなるため、借金が膨らむ可能性も高いです。安易に借り入れを重ねるのではなく、借金問題の根本的な解決を検討した方がよいでしょう。
4.借金がある場合は債務整理が有効
借金がある場合は、債務整理で借金返済の負担を軽減することにより、住民税を納付しやすくなります。
債務整理とは、法律に従った正当な手段により、借金を減免することが可能な制度のことであり、主に次の3種類の手続きがあります。
-
任意整理
債権者との直接交渉によって将来利息のカットや返済期限の延期などを認めてももらい、返済の負担を軽減させる手続き
-
個人再生
裁判所への申し立てにより借金を5分の1~10分の1程度にまで減額できる手続き
-
自己破産
裁判所への申し立てにより借金の返済義務をすべて免除してもらえる手続き
どの手続きが適しているかは、個別の状況に応じて異なります。適切な手続きを選ぶためには専門的な知識も要しますので、弁護士へのご相談をおすすめします。
債務整理を弁護士に依頼すれば、まず、受任通知が送付されます。金融機関などの債権者が弁護士からの受任通知を受け取った後は、督促がいったん止まります。返済もストップしますので、住民税の滞納も解消しやすくなるでしょう。
債務整理の複雑な手続きは弁護士に一任できますので、スムーズな解決も期待できます。
借金問題でお困りの際は、住民税の滞納を早めに解消するためにも、弁護士にご相談の上で根本的な解決を目指しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年06月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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