
借金返済を弁護士に相談するメリットとは|費用や選び方を解説
借金問題を抱えている人の中には、弁護士に依頼して解決したいと思うものの、依頼することにどのようなメリットがあるのかわからない人や、弁護士費用の点が気になっている方もいらっしゃることと思います。
そこで今回は、借金問題を弁護士に依頼するメリットや弁護士費用などについて解説します。
1. 借金返済の悩みを弁護士に相談するメリット
本項ではまず、借金問題を放置するリスクを解説し、それを踏まえて弁護士に相談するメリットを解説します。
(1)借金問題を放置しておくリスクとは
①遅延損害金が発生する
遅延損害金とは、金銭債務の支払いが遅れた場合に損害賠償として支払う金額です。利息とは別に発生します。
借金を放置していると遅延損害金の金額はそれだけ膨大になります。遅延損害金は利息と同様、支払わなければ元本に組み入れられ「複利」で増えていくので、返済すべき総額が大きくなることもあります。この点は大きなリスクといえるでしょう。
②債権者から督促の連絡がくる
借金を放置していると、債権者から督促の連絡がきます。
電話や手紙、SNSや場合によってはEメールなどにより督促されることもあります。
借金を放置すればするほど、督促の連絡も頻度が高くなります。
そのため、心理的なストレスも大きなものとなります。
③ブラックリストに掲載される
借金を一定期間放置すると、支払いが滞っている事実が信用情報機関に事故情報として登録され、いわゆる「ブラックリストに載る」こととなります。
ブラックリストに載ると、クレジットカードが作れなくなったり、携帯電話の契約ができなくなったりするなどの不利益が発生します。
④財産が差し押さえられる可能性がある
借金問題を放置しているうちに、債権者が裁判や支払督促などの法的手続を採り、これにも対応しないでいると、判決や支払督促に基づいて、預貯金や給与などを差し押さえられてしまうリスクがあります。
給与を差し押さえられると、借金があることが勤務先に知られてしまいます。
(2)「過払い金返還請求」ができる場合も
2010年6月17日以前に借入をした人が、利息制限法が定める15〜20%(元本の額による)を超える利息を払い続け、同じ貸金業者から借入と返済を繰り返している場合には、いわゆる「過払い金」が発生し、返還請求できる可能性があります。
過払い金返還請求権は原則として「権利を行使することができる時から10年」で時効消滅します。つまり、利息制限法の上限の利息で計算して「完済した」といえる時から10年経つと、請求できなくなります。しかし、同じ貸金業者から借入と返済を繰り返している場合は、全体が一連一体の取引として扱われ、時効消滅していない可能性があります。
(3)弁護士に相談・依頼するメリットとは
以上のようなリスクがある借金問題を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下のとおりです。
①依頼した時点で借金の取立てがストップする
弁護士に借金の整理を依頼すると、弁護士は数日内に「受任通知」を債権者に送付し、以後の問い合わせの窓口が弁護士になること、直接本人に督促してはならないこと等を知らせてくれます。
貸金業法などにより、貸金業者は、受任通知を受け取った後に債務者への督促を行うことを禁じられているので、これにより取立てがストップすることとなります。
②複雑な手続きを任せることができる
借金の整理には、複雑な手続きが必要なことも少なくありません。
例えば、自己破産の申立の場合には、収入や資産に関する資料を収集して「申立書」を作成し、裁判所に申し立てる必要があります。
任意整理の場合にも「和解契約書」を作成し、相手方に送付するなどの手続きが必要です。
これらは、専門的な知識が要求され複雑・煩雑なものなのでで、債務者が自ら行うことは難しいものです。
弁護士に依頼するとこれらの手続きを任せることができます。
③返済を有利に進めることができる
自分で債権者に頼んでも応じてもらえなかったことでも、弁護士に任意整理を依頼すれば応じてもらえることは少なくありません。
例えば「遅延損害金のカット」や「分割払い」などを認めてもらえることがあります。
これにより、無理なく返済ができるようになる可能性があります。
④自分の状況にあった解決方法を提案してもらえる
後述するように借金の整理方法は主に4種類ありますが、弁護士に相談すれば、自身の収入や資産、他の借金の状況などに応じて、最も適切な方法を提案してもらうことができます。
この点も、弁護士に相談する大きなメリットのひとつです。
(4)債務整理の種類
では、債務整理にはどのような方法があるかをそれぞれ解説します。
①おもに任意整理、個人再生、自己破産、特定調停の4種類
債務整理の方法は、おもに以下の4種類に分類されます。
- ア 任意整理
- 任意整理は、裁判所を介さずに、弁護士と債権者との交渉で借金を整理する方法です。
- 交渉がうまくいけば、遅延損害金のカットや、分割払いに応じてもらえることがあります。
- イ 個人再生
- 個人再生は、裁判所に申し立てをすることにより、債務が5分の1から10分の1の額に圧縮され、原則として3年から5年の間に返済していくというものです。
- ウ 自己破産
- 自己破産は4種類の方法のなかで唯一借金を「ゼロ」にすることができるものです。裁判所に自己破産を申し立てると、原則として破産管財人が資産や免責を許可すべきでない事情がないかなどを調査し、債権者集会を経て、最終的に問題がなければ債務が免責されることになります。
- エ 特定調停
- 特定調停は、簡易裁判所に債務者が債権者との調停を申し入れ、調停委員を介した協議を行って、遅延損害金のカットや分割払いに応じてもらえれば調停を成立させるというものです。
- 任意整理や、個人再生、自己破産は弁護士が依頼を受けて行うことがほとんどですが、特定調停は、債務者自らが起こすことが多い手続です。
②4種類それぞれのメリット・デメリット
上記の方法にはそれぞれメリット・デメリットがあります。
- ア 任意整理のメリット・デメリット
- 任意整理のメリットとして、個人再生や自己破産など裁判所を利用する手続に比べて、解決までの期間が早いということが挙げられます。
- これに対しデメリットとしては、債権者側が応じてくれる内容には限界があり、自分が希望したとおりの減額や分割払いに応じてもらえない場合があるということが挙げられます。
- イ 個人再生のメリット・デメリット
- 個人再生のメリットは、大幅に借金を減額できる点にあります。
- これに対し、デメリットは、借金が完全になくなるわけではなく、返済期間も3年から5年と比較的長いため、返済のために経済的に苦しい状況が続く可能性があることです。
- ウ 自己破産のメリット・デメリット
- 自己破産のメリットは、借金が完全になくなるということです。
- これに対し、デメリットは、債権者に配当するために一定金額以上の資産を失うことです。
- エ 特定調停のメリット・デメリット
- 特定調停のメリットは、弁護士に依頼せず自分自身で手続きを行えること、その場合には費用が非常に低額で済むということが挙げられます。
- これに対し、デメリットとして、任意整理同様、債権者が希望通りの減額や分割払いに応じてくれないことも少なくないことが挙げられます。
2. 弁護士費用はどれくらいかかる?
(1)弁護士に依頼する場合の費用
債務整理をする場合に必要となる費用には、法律相談料、契約締結時に払う着手金、債務整理終了時に支払う報酬金があります。
ただし、最近は、債務整理に関する法律相談料を無料とする法律事務所も多くなっています。
【債務整理の弁護士費用相場】
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①任意整理の場合の相場
任意整理の場合の費用の相場は、債権者1件につき5万円から15万円程度です。
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②個人再生の場合の相場
個人再生の場合の費用相場は、20万円から40万円程度です。
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③自己破産の場合の相場
自己破産の場合の費用相場は、20万円から50万円程度です。
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④特定調停の場合の相場
先にも述べたとおり、特定調停は弁護士に依頼せず自分で行うこともでき、その場合は1000円程度で足ります。
弁護士に依頼する場合の費用相場は10万円から30万円程度です。
(2)費用を支払えない場合は
債務整理を弁護士に依頼したくても弁護士費用を支払うのが難しいケースもと考えられます。
その場合には、以下のような対応が可能です。
①分割払いに応じている弁護士事務所を利用する
法律事務所の中には、弁護士費用の分割払いに対応しているところもあります。特に、任意整理に関しては、着手金について、貸金業者に支払っていた金額の全額またはその一部を積み立てる「積立方式」を採用しているところもあります。
そういった法律事務所を利用すれば、一度に多額の弁護士費用を支払わずに済みます。
②法テラス(日本司法支援センター)の弁護士費用立て替え制度を利用する
収入や資産が一定金額以下の方については、法テラスが行っている民事法律扶助事業の一環である弁護士費用の立替制度を利用することが可能です。
これは、法テラスが弁護士費用を立て替えて弁護士に支払い、これを利用者が後日法テラスに対して分割払いで返済していく制度です。
法テラスを利用すると弁護士費用自体も低く抑えることができるため、負担を少なくして弁護士を利用することが可能です。
3. 借金返済を相談する弁護士の選び方
では、借金返済を相談する弁護士はどのように選ぶべきでしょうか。
(1)実績が豊富な弁護士・事務所を選ぶ
まずは、債務整理の実績が豊富な弁護士や事務所を選ぶことが重要です。実績や弁護士の経歴はHPや著書等でチェックすることをおすすめします。
そのような弁護士・法律事務所であれば、適切な債務整理の方法を提案し、迅速に借金問題を解決してもらえる可能性があります。
(2)料金体系を確認し、相場と比較する
また、弁護士や法律事務所のウェブサイト等で料金形態を確認し、それが上述した費用相場と比較することも必要です。
ただし、一概に金額の高低のみで判断すべきではありません。高額な場合でも、それに見合ったきめ細かいサービスを受けられる場合があります。これに対し、低額すぎる場合には適切な対応をしてもらえない危険性があります。実際に連絡または訪問して話を聞いてみるなど、慎重に検討を行う必要があります。
(3)無料相談を活用する
借金が多い人には、法律相談料も大きな負担となります。
前述したように、債務整理については無料相談を実施している法律事務所も増えてきています。法テラスや一部の弁護士会、自治体などでも、無料法律相談が実施されています。
このような無料相談を活用すれば、負担を抑えることができます。
(4)相談に行く前に準備しておくべきこと
法律相談に行くにあたっては、以下のものを準備しておくと、相談がスムーズに行われ、受任もしてもらいやすいというメリットがあります。
【弁護士相談で事前に準備すべきもの】
- 借金の総額
- 借入先と各借入先に対する残債務の金額のリスト
- 自身の収入・資産がわかる資料
- こちらに掲載されている情報は、2025年02月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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