少年院と少年刑務所の違いとは。それぞれの役割や収容生活を紹介
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少年院と少年刑務所の違いとは。それぞれの役割や収容生活を紹介

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

民法改正により令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることになり、同日より改正少年法等も施行されました。改正少年法施行後も、非行をした20歳未満の者については「少年」といって少年法の適用があり、20歳以上の者と異なる手続にのることになります。

今回は、改正少年法の内容を踏まえて、非行をした少年が収容される可能性のある少年院と少年刑務所の違いについて解説します。

1. 少年院と少年刑務所の違い

(1)少年院とは

少年院とは、主に家庭裁判所の少年審判により少年院送致の保護処分が下された場合に少年が収容される矯正施設です。少年院では、自らの行為について反省を深め更生の機会を与えるとともに、少年が社会生活に適応できるようにすることを目的として、以下のような矯正教育を行っています(少年院法23条~29条)。

  • 生活指導(社会人としての知識や生活態度の習得を狙いとする。)
  • 職業指導(勤労意欲の喚起、職業上の知識や技能の習得を狙いとする。)
  • 教科指導(基礎学力の向上を狙いとする。)
  • 体育指導(基礎体力の向上を狙いとする。)
  • 特別活動指導(社会貢献活動、野外活動、運動競技、音楽、演劇などを行い、情操を豊かにし、人格を高めることを狙いとする。)

少年は少年院において規律ある生活を送ることになります。各少年院によって、一日のスケジュールは様々ですが、例えば以下のようなスケジュールで生活することとなります。

6:30 起床・役割活動
7:40 朝食・自主学習など
8:50 朝礼(コーラス・体操)
9:00 生活指導、教科指導、職業指導、体育指導、特別活動指導、運動など
12:00 昼食、余暇など
13:00 生活指導、教科指導、職業指導、体育指導、特別活動指導、運動など
17:00 夕食・役割活動
18:00 個別面接、集団討議、教養講座、自主学習、日記記入など
20:00 余暇(テレビ視聴など)
21:00 就寝

(参照:「少年院のしおり」(2022/6/19時点で法務省HPに掲載されています。))

(2)少年刑務所とは

少年刑務所とは、刑事裁判において懲役または禁錮の有罪判決を受けた少年受刑者が収容される刑事施設です。少年の場合には、その他の受刑者から悪影響を受けることのないようにするために、隔離された場所で刑の執行を受けることとなっています。有罪判決を受けた少年のうち14歳以上16歳未満の少年は少年院に収容されることもありますので(少年法56条3項)、少年刑務所に収容されるのは主に16歳以上20歳未満の少年ということになります。

少年刑務所に収容された懲役受刑者の一日のスケジュールの一例は、以下のとおりです。

6:45 起床
7:00 点検、朝食、工場へ移動
8:00 作業開始
10:00〜10:30 運動
12:00〜12:40 昼食等
14:30〜14:40 休憩
16:40 作業終了、入浴、居室へ移動
17:00 点検、夕食
18:00~21:00 余暇時間
21:00 就寝

(参照:「日本の刑事施設」(2022/6/19時点で法務省HPに掲載されています。))

2. 少年事件の流れ

以下では、非行少年のうちもっとも多くの割合を占める罪を犯した少年について、少年事件の手続きの流れを説明します。

(1)事件の発生

少年による犯罪行為があった場合には、捜査機関による捜査が行われます。逮捕・勾留される可能性もあります。逮捕されると警察の留置施設等に収容され、警察による取り調べを受けることになります。

逮捕をされずに在宅事件となった場合には、警察から取り調べのための呼び出しを受けることがあります。

(2)家庭裁判所への事件の送致

捜査機関の捜査の結果、少年に犯罪の嫌疑があると判断された場合には、家庭裁判所に事件が送致されます。20歳以上の刑事事件の場合には、軽微な犯罪について捜査機関段階で手続きを終了させることもありますが、少年事件の場合にはこのような取り扱いはありません。少年事件においては、原則として全件家庭裁判所に送致されることとなっています。この理由は、軽微な罪を犯したに過ぎなくても見守りの必要が大きい少年に対し、できるだけ更生教育の機会を与えることにあります。

(3)家庭裁判所の調査と少年鑑別所送致

家庭裁判所は、審判を行う必要がある少年については調査をします。この調査は、家庭裁判所が家庭裁判所調査官に命令する方法で行われています。家庭裁判所調査官は、少年の生活環境面を含めた社会調査をします。

家庭裁判所がさらに少年の資質面に重点を置いた調査をしたいとき又は少年の身柄を確保したいときには、少年を少年鑑別所に送致することがあります。少年鑑別所では、各種検査や行動観察を通じて、少年の処遇意見をまとめた鑑別結果通知書が作成されます。

少年鑑別所に収容される場合、収容期間は通常4週間以内であることが多いですが、法律上は最大8週間まで収容される可能性があります。

(4)家庭裁判所の審判不開始決定

実は、家庭裁判所に送致された少年事件のうち、審判が開始されずに終了する事件は約半数弱あります(令和3年版犯罪白書117頁等参考)。理由は様々ですが、手続きが進行する中でされた教育的働きかけにより、少年の内省が深まり審判を開始する必要がなくなった場合が含まれます。

(5)家庭裁判所の審判

審判が開始されると、非公開の審理がされ、家庭裁判所は最終的に以下のいずれかの処分を下すことになります。

  • 保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致の3種類があります。)
  • 不処分
  • 検察官送致
  • 知事または児童相談所長送致

(6)検察官送致がされた場合

検察官送致がされた場合には、成人と同様に刑事裁判が開かれることになります。

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