親の介護を放棄することはできる?
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親の介護を放棄することはできる?

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

親が高齢に差し掛かってくると、子どもは親の介護をどうするか検討しなければなりません。

法律上も、親の介護は子の義務とされているため、介護を一切放棄することはできません。兄弟姉妹の間で話し合って、早めに介護の方針を決めておきましょう。

今回は、親の介護に関する子どもの義務内容や、介護に関する相談先などを解説します。

1. 親の介護は法律上の義務

子どもにとって、親の介護は大きな負担になりがちです。しかし法律上、子どもには扶養義務があり、介護の放棄は犯罪に問われるケースもあるので注意する必要があります。

(1)子には親に対する扶養義務がある

民法第877条第1項では、直系血族は互いに扶養をする義務がある旨が定められています。扶養義務とは、経済的に自立できない人を援助する義務のことです。

親子は直系血族の関係にあるため、子どもは親に対して扶養義務を負います。介護も扶養義務の一環であり、一般的には、子どもは親の介護をするか、または介護費用(介護施設の利用料金など)を負担する義務を負うと解されています。

ただし、その程度は、扶養義務のある者が、自分の家族が社会的地位、収入等に相応した生活をしたうえで、それでも余力のある範囲で、生活に困窮する親族を扶養する義務であると解釈されています。

また、仮に子に収入や財産があるとしても、親と子が独立して生活しており、親に収入や財産がない場合は、生活保護を申請できる場合もあります。

(2)介護放棄には保護責任者遺棄罪が成立する可能性あり

親が老年者・身体障害者・病者である場合、扶養義務を負う子どもが介護を放棄すると、「保護責任者遺棄罪」によって罪に問われる可能性があります(刑法第218条)。

保護責任者遺棄罪の法定刑は、「3か月以上5年以下の懲役」です。

(3)子が複数いる場合、誰が親を介護する?

子どもが複数いる場合、親に対する扶養の順位は、扶養義務者である子どもの間の協議によって定めます(民法第878条)。したがって、誰が親の介護をするか(または介護費用を負担するか)についても、子ども同士で話し合って決めるのが原則です。

もし協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に「扶養請求調停」を申し立て、扶養の順位を審判により決めてもらいます。家庭裁判所は、各扶養義務者の資力・居住場所・親との関係性などを総合的に考慮して、扶養の順位を決定します。

(参考:「扶養請求調停」(裁判所))

2. 親の介護に関する悩み・不安の相談先

親の介護は肉体的にも精神的にも負担が大きく、一人で抱え込むのは非常に危険です。

親の介護について、少しでも悩みや不安を感じたら、以下の窓口へ早めに相談することをお勧めいたします。

(1)自治体の窓口

各自治体では、介護に関する相談窓口を設置しているケースが多いです。

自治体の窓口では、要介護認定や介護保険制度の利用を申請できるほか、介護のつらさに関する相談などにも応じてくれます。

市区町村役場に連絡をとれば、介護に関する相談窓口を案内してもらえますので、電話などで連絡してみましょう。

(2)医療機関の相談室

病院や診療所などの医療機関では、介護に関する相談室を設置している場合があります。医療機関に在籍するソーシャルワーカーなどの専門家から、介護サービスの利用に関する提案や、今後の生活に関するアドバイスなどを受けられます。

(3)居宅介護支援事業所・ケアマネジャー

要介護1以上の認定を受けた方については、居宅介護支援事業所の介護サービスを利用できます。

居宅介護支援事業所には、介護を専門とするケアマネジャーが常駐しており、自宅に介護者が訪問して適切な介護サービスを提供してもらうことが可能です。居宅介護支援事業所の利用料金は、介護保険料から全額賄われるため、無料で利用できます。

自力で親の介護をすることが難しいと感じている場合には、最寄りの居宅介護支援事業所に相談してみましょう。

(4)地域包括支援センター

地域包括支援センターは、高齢者の保健医療の向上・福祉の増進を包括的に支援することを目的として、市町村が設置している機関です。

地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなどの専門家が配置されており、高齢者の生活や介護に関する幅広い相談を受け付けています。設置箇所も全国に5000か所以上(支所を含めると7000か所以上)と非常に多いため、どの地域にお住まいの方でも相談しやすいのが大きな特徴です。

地域包括支援センターの所在地や連絡先などは、管轄の市町村のホームページで確認できるほか、市町村役場の窓口でも案内を受けることができます。

(参考:「地域包括ケアシステム 2.地域包括支援センターについて」(厚生労働省))

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  • こちらに掲載されている情報は、2022年07月04日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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