
- 犯罪・刑事事件
オレオレ詐欺で逮捕されそう! できることはある?
オレオレ詐欺や振り込め詐欺といわれる特殊詐欺が後を絶ちません。検挙される受け取り役(受け子)の多くは、ツイッターなどで募集される「闇バイト」や「裏バイト」に応募した人だといわれています。
もしもそのような「バイト」に加担してしまった場合、どのような罪に問われることになるのでしょうか。
また、警察に逮捕されたらどうなるのか、被害者への対応はどうすればいいのかについても見ていきましょう。
1. オレオレ詐欺で問われる詐欺罪について
オレオレ詐欺などの特殊詐欺は、詐欺罪に該当します。
- 詐欺罪とはどういう犯罪なのか
- 受け子はどれくらいの刑になるのか
- オレオレ詐欺と知らなかった場合でも罪になるのか
について見ていきます。
(1)詐欺罪とはどういう罪?
詐欺罪とは➀人を欺罔し、②錯誤に陥らせて③財産の交付を受ける行為です。この詐欺罪の要件を典型的なオレオレ詐欺の例に当てはめると次のようになります。
- うそなどにより人をだます⇒電話で被害者の親族になりすまして援助を求める
- だまされた人の判断を誤らせる⇒被害者に金銭を交付させることを決意させる
- 金銭などの財物を交付させる⇒金銭を直接交付させたり郵送させたりする
オレオレ詐欺などの特殊詐欺は手口が巧妙化していますが、基本的にはこれらの要件が当てはまると考えてよいでしょう。
詐欺罪の罰則は「10年以下の懲役」です(刑法246条)。
(2)受け子はどれくらいの刑になる?
オレオレ詐欺の受け子は厳罰になる傾向があり、たとえ加担した事件が1件だけで初犯であっても2年程度の実刑(懲役刑)になることが多いようです。
なお、詐欺行為の一部にすぎない現金の受け取り行為だけで、詐欺罪の責任を負わされるのは理不尽と感じられるかもしれません。
しかし、詐欺であると認識しうる状態で、一部の実行行為を担当した場合でも、「共同正犯」として、一人で全部の実行行為をした場合と同等の刑事責任を問われるのです。これを刑法上では一部実行全部責任の原則といいます。たとえ一部しかやっていなくても、共同して法益を侵害している以上、その責任は全部に対して負うべきとされるのです。
もっとも、共犯全員が同じ刑になるわけではなく、役割の重要性や主導性、分け前の割合、被害弁償の有無などによって、個別に刑が判断されます。
なお、初犯で被害金の全額を賠償した場合は、実刑を免れて執行猶予となる可能性が高くなるようです。
(3)オレオレ詐欺と知らなかった場合でも罪になる?
詐欺グループは、受け子に詐欺であることを説明することはまずありません。しかし、現金受け取りの際には、偽名を指示されるなど、「オレオレ詐欺かも」と疑うべき状況が存在するのが一般的です。
また、単に箱を運ぶだけで数万円の報酬をもらえるという場合も「詐欺に加担しているかも」と疑うべきです。このような状況がある以上、裁判では詐欺とは知らなかったという弁解は通用しないケースがほとんどです。
もっとも、詐欺であることを認識しうる状況ではなく、無罪とされたケースがまったくないわけではありません。
また、初めから詐欺であることを明確に認識していた場合、犯行の途中で「詐欺かも」と認識した場合、強制されて断れない状況で加担した場合とでは、責任の重さは異なります。
2. 警察に逮捕されたらどうなる?
振り込め詐欺で逮捕されるとどうなるのでしょうか。また、その場合に知っておきたい注意点についても見ていきます。
(1)身柄拘束は長期化する可能性が高い
警察は個々の詐欺事件だけではなく、詐欺グループの全容解明を目指して捜査をします。そのため、受け子が詐欺グループと連絡を取らないように逮捕されるのは避けられないでしょう。
また、逮捕されると、長期間、弁護士以外との面会が制限される可能性が高くなります。捜査のための身柄拘束は最大23日間ですが、加担した事件が複数ある場合は、それぞれに逮捕状が発付されて、再逮捕の連続で23日間の身柄拘束が繰り返されることもあります。
オレオレ詐欺は、初犯であっても実刑が予想される重い罪であるため、刑事裁判中も身柄が拘束され、そのまま刑務所に収容されるケースも珍しくありません。
(2)見知らぬ弁護士が面会にくることも
逮捕されると、詐欺グループの依頼を受けた弁護士が面会に訪れることがあります。振り込め詐欺に詳しく、無料で親身に弁護活動をしてくれているように見えるため、つい頼りたくなってしまうでしょう。しかし、その目的は捜査が詐欺グループに及ばないようにすることなのです。
捜査官や裁判官はそのようなことは百も承知で、そのような弁護士に弁護を依頼すると、詐欺グループと手を切るつもりがない、事案の解明に協力する気もないという目で見られてしまう可能性もあります。
(3)逮捕される前に弁護士に依頼するのがベスト
逮捕されると、家族とも面会できなくなり、心当たりの弁護士がいない場合は適切な弁護が受けられない可能性もあります。
そのような状況を避けるためには、逮捕される前に弁護士に相談し、信頼できそうな弁護士であれば弁護を依頼することが賢明です。
警察に自首する場合でも、弁護士に同行を依頼したり、取り調べにあたってのアドバイスを受けたりしておくことも有効です。
3. 被害者への対応はどうすればいい?
特殊詐欺の被害者は高齢者が多く、貴重な老後資金を失った怒りと喪失感、詐欺グループへの恐怖感で悲惨な状況に置かれることになります。
被害者へ謝罪したい、少しでも弁償したいと思うのはもっともですが、直接被害者と接触するのは逆効果になる可能性があります。被害者へ謝罪の気持ちを伝えたい場合は、弁護士に手紙を託して、弁護士が被害者の許しを得てから送付するのが穏当な方法です。
また、金銭被害の弁償については、自分が受け取った報酬分を弁償すればいいわけではありません。複数人が共同して詐欺を行った場合、民事上は各人が連帯して全額を賠償する責任があります。つまり、被害者は犯人の一人から全額を弁償してもらうことができ、あとは共犯者間で負担割合を決めて精算する、ということになります。
なお、特殊詐欺により銀行振り込みがされた場合、金融機関は受け取り先の口座を凍結し、被害者の請求によって、被害回復分配金として返金する制度もあります。この制度によって被害回復がされた場合でも、慰謝料として別に数十万円程度を賠償しなければ、示談に応じてもらうことは難しいかもしれません。
- こちらに掲載されている情報は、2022年05月01日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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