- (更新:2021年08月13日)
- 犯罪・刑事事件
日本の性交同意年齢は13歳からなのか?
近年、性犯罪に関する法改正が行われて強制性交等罪が作られ、罪が成立する範囲が広がり、刑が重くなりました。日本の刑法は明治時代に作られたこともあり、アップデートの議論が必要な点があるのは、私も実務において感じるところです。
たとえばトイレで盗撮をした犯罪において、盗撮行為そのもの(都道府県条例違反)よりも、トイレに入ったこと(建造物侵入)の方が法定刑を重く設定しているのには、犯罪の実態と離れた違和感を覚えます。
しかし、法改正に関するニュースを見ていると、現行法の状態や法改正の必要性について誤解があるのも見受けられます。中にはすでに犯罪であるものを、犯罪でないかのように誤解している発言や記事なども見られ、それは本人にとっても、誤解に基づき性の対象にされてしまう側にとっても、全く良いことではないでしょう。
そこで今回は、今後も議論が見込まれる未成年との性的関係を取り締まる法律について、性交同意年齢、あるいは性的同意年齢という法律要件の意味と共に、概観してみます。
1. 18歳未満との同意性交は、現在も犯罪である!
何よりも重要な大前提ですが、この点から誤解されているようです。刑法以外の法律に犯罪が規定されているのもひとつの要因でしょう。
もっとも基本となるのが、各都道府県が設けている「青条例(青少年保護育成条例)」と言われる条例です。
名前は各県によって微妙に違うのですが、内容はおおむね共通しており、たとえば東京都だと「18歳未満とのみだらな性交又は性交類似行為」に、刑事罰を科しています。これを基本形として、金銭授受のような手段を用いると「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」、いわゆる児ポ法により、18歳未満を保護すべき立場であると児童福祉法により、そして親のようなより近接した関係だと監護者性交等罪により、青条例より重い刑罰を科しています。
つまり現在でも、18歳未満との性交は同意があろうが犯罪行為になりますし、その手段や関係性によって、さらに重い刑罰を科されることになります。もちろん、刑事訴訟法上の要件である、罪証隠滅のおそれ(≒被害者と接触する可能性)や逃亡のおそれが認められれば、逮捕・勾留にも至ります。
2. 「真摯(しんし)な交際」といった弁明は容易ではない
犯罪が成立する範囲に関する誤解は、法律の存在は知っていても、各要件の解釈について誤解しているというパターンもあるようです。「みだらな性交」や「淫行」を罰するということは、マジメな恋愛であれば該当しないという論理自体は存在しています。
しかし、この論理について先例となる福岡県青少年保護育成条例違反事件(昭和60年10月23日刑集39巻6号413頁)は、正確には「婚約中~又はこれに準じる真摯(しんし)な交際関係」と言っています。このように結婚を軸とした客観的に評価可能なものが求められているため、いくら当事者たちが「自分たちは真剣に愛し合っているのだ」と言っても、婚姻に向けたような段取りが踏まれていないようであれば、通じません。私の実務上の経験で言えば、18歳未満の子どもの両親と面会し交際や外出への了承を得ていたといった事案くらいですと、ようやく真摯だと自信を持って評価できます。
なお、よくある弁明として「18歳未満と知らなかった」というものもあるのですが、これも基本的に通りません。各青条例や児童福祉法には、無過失でなければ年齢を知らなかったという弁明を認めない規定が作られており、そもそも子どもらしい相手と接する時には十分に確認し配慮するよう命じています。
このように、子どもを保護するために作られている各法律は、18歳未満との性交は同意があろうが、容易には認めない作りになっています。
3. 「性交同意年齢」とは何なのか?
このように法制度を概観してみると、18歳未満の子どもが同意してようがその主観には関係なく、性的関係をもった大人は処罰されることになっています。そのため、法制度全体で言えば、本当に自由に性的関係を結べるようになるのは、18歳からであると言えます。それでは、しばしば議論にあがる「性交同意年齢」という言葉は、いったい何なのでしょうか。
法律家の視点として述べれば、これは強制性交等罪という重い罰を科す前提条件のひとつということになります。強制性交等罪は、本来的には、暴力的な手段を用いたり(暴行・脅迫)、睡眠薬を用いたり(抗拒不能)、親という子どもが逃げられない立場(監護者)を利用して性的関係を結ぶなど、性犯罪の中でも相手の自由意思を蹂躙するような悪質な手段が設定されています。それに合わせて、法定刑も懲役5年以上と、殺人罪と同じ下限を設定しています。執行猶予は懲役3年以下でしか認められないため、原則執行猶予も認めず、1発で刑務所に入れる犯罪として規定されています。
そして、そのような最も重い犯罪類型に加えるものとして、現在は13歳未満との性交も置かれていることになります。
このような位置づけにあるため、私個人の見解としては、性交同意年齢という言葉はミスリーディングと考えています。あくまで国家が刑罰の重さとして有期懲役5年以上に該当するものをくくりだす基準としての存在であるという前提は、法改正の議論の前提として共有されるべきです。その上で、〇〇歳以下がそれだけの犯罪に相当するかといった評価を論じていくのが建設的でしょう。
4. 性犯罪の外注状態をやめるべきではないか
本稿では、あくまで法律家の目線に徹して、18歳未満を対象とした性行為を取り締まる法律を概観し、「性交同意年齢」という概念の位置づけにも言及してきました。
社会において誤解が多いのも問題と感じているところですが、その根本的な原因は、統一された体系として犯罪が規定されていないところにあります。淫行に限らず、冒頭で述べた盗撮や、その他痴漢など、それぞれが別の時代に別の法律として作られていることにより、法定刑のバランスが崩れていて、また一般の人たちにとってもどこまでが犯罪なのかわかりにくくなっているのは、大いに問題です。
個人的には、よりマクロに、性犯罪を大きく整理しなおすような議論もあってしかるべきではないかと考えているところです。
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