
傷害未遂で前科がつく? 暴行罪との違い・逮捕リスク・示談を解説
傷害罪の未遂を処罰する規定はないため、「傷害未遂罪」で処罰されることはありません。
しかし、暴行した結果、傷害が未遂でとどまった場合は暴行罪が成立するので、暴行罪により逮捕・起訴される可能性があります。犯行後すぐに適切な対応をしなければ前科が付くリスクがありますので、早めに弁護士に相談しましょう。
本記事では、傷害が未遂に終わったときの逮捕の可能性と対処法などを解説します。
1. 傷害未遂とは? 暴行罪との違いを理解する
傷害未遂がどのような場合に罪に問われるかを理解するためには、傷害罪と暴行罪の違いを押さえておく必要があります。まずは、傷害罪の成立要件と、暴行罪との違いをみていきましょう。
(1)傷害罪とは
傷害罪とは、人の身体を傷害した場合に成立する犯罪です(刑法204条)。
「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えることをいい、暴行による打撲や傷などの外傷が典型例です。また、精神的な苦痛を与えてPTSD(心的外傷後ストレス障害)や精神疾患などの症状が生じることも傷害にあたります。
なお、傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。
(2)傷害「未遂」が罰せられるケースとは
そもそも「未遂」とは、犯罪の実行行為(結果発生の現実的危険性のある行為)に着手したものの、結果が発生しなかった場合をいいます。未遂は法律上の刑の減軽事由とされていますので、未遂になれば罪が軽くなる可能性があります。
もっとも、未遂が処罰されるのは「未遂を処罰する規定」がある場合に限られます(刑法44条)。刑法には傷害罪の未遂を処罰する規定がないため、傷害未遂で処罰されることはありません。
ただし、暴行による傷害罪の場合は、暴行をしても結果的に傷害が発生しなければ「暴行罪」が成立します。つまり、傷害未遂が暴行によるものであれば、傷害未遂ではなく暴行罪として処罰される可能性があるのです。
すなわち、傷害「未遂」が罰せられるのは暴行による傷害未遂の場合であり、暴行によらない傷害行為については結果が発生しなければ処罰されません。
なお、暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料と定められています。
2. 傷害が未遂で終わった場合に逮捕される可能性はある?
以下では、傷害が未遂に終わった場合における逮捕の可能性について説明します。
(1)傷害が未遂で終わった場合に逮捕される?
暴行をしたものの傷害の結果が発生しない場合は、傷害未遂ではなく暴行罪が成立しますので、逮捕される可能性があります。
傷害未遂による暴行罪で逮捕するには、以下の要件をいずれも満たす必要があります。
-
逮捕の理由
罪を犯したと疑うに足りる相当な理由
-
逮捕の必要性
逃亡のおそれまたは証拠隠滅のおそれ
警察官が犯行現場の状況、被害者および加害者の供述内容、目撃者の証言などから暴行が行われたことが明らかであれば、「逮捕の理由」という要件を満たします。
もっとも、暴行罪は比較的軽微な犯罪ですので、初犯であり当事者同士の面識がない場合などは、逃亡または証拠隠滅のおそれがないとして逮捕されないケースもあります。
ただし、たとえばナイフなどの凶器を振り回すなど暴行の悪質性が高い事案では、重く処罰される可能性が高いと判断され、逃亡のおそれが認められて逮捕される場合があります。また、お互いに面識がある状況で、加害者が被害者を脅すなどして証拠隠滅を図るおそれがあると判断された場合にも、逮捕される可能性があります。
(2)警察・検察の判断ポイント
傷害未遂による暴行罪で逮捕・起訴される可能性が高いのは、以下のようなケースです。
- 通報により駆けつけた警察官の前で暴行をしていたケース
- ナイフなどの凶器を用いて暴行がなされたケース
- 被害者の処罰感情が強く、被害届の提出を希望しているケース
- 加害者が身分を明らかにせず、犯行現場から逃走しようとしたケース
- 加害者に前科があるケース
- 加害者が執行猶予中のケース
3. 傷害が未遂で終わった場合の逮捕後の流れと対処法
傷害が未遂に終わった場合でも、暴行罪が成立すると逮捕される可能性があります。以下では、逮捕後の流れと対処法について説明します。
(1)逮捕後の流れ
傷害未遂による暴行罪で逮捕されると、そのまま警察署に連行され、警察官による取り調べを受けます。警察は、逮捕後48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致し、検察官が引き続き身柄拘束が必要だと判断すれば24時間以内に勾留請求を行います。
裁判官は、勾留を許可するかどうか審査し、勾留が許可されると原則10日間、延長も含めると最大20日間の身柄拘束が行われます。
すなわち、傷害未遂による逮捕・勾留は、最長で23日間にも及ぶことになります。

(2)傷害が未遂で終わった場合に示談交渉が重要な理由
傷害が未遂に終わったとしても、以下のような理由から早期に被害者との示談を行うことが大切です。
①被害届の提出前であれば逮捕を回避できる
被害者が被害届を提出する前に示談を成立させることができれば、捜査機関に事件が発覚しませんので、逮捕されるおそれがなくなります。暴行罪として事件化されないため、当然前科が付く心配もありません。
②逮捕後でも示談が成立すれば早期釈放が期待できる
逮捕による身柄拘束は最長72時間であるのに対して、勾留は最長20日間にも及ぶため、勾留を阻止できるかどうかが重要なポイントです。
暴行罪は比較的軽微な犯罪ですので、逮捕後でも早期に示談が成立すれば、勾留されずに釈放される可能性があります。
③不起訴処分により前科を回避できる可能性がある
事件を起訴するか不起訴にするかは、最終的に検察官が判断します。証拠上、傷害未遂による暴行罪の成立が明らかでも、さまざまな事情を考慮して不起訴(起訴猶予)になるケースもあります。その際に重視されるのが被害者との示談の有無です。
被害者との間で示談が成立していれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
4. 傷害が未遂で終わった場合でも弁護士に相談すべき理由とは?
傷害が未遂に終わった場合でも暴行罪が成立する可能性があるため、対応を誤ると前科が付くリスクがあります。したがって、傷害未遂による暴行事件を起こしてしまったときは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
(1)放置するとどうなるのか
傷害が未遂に終わった場合でも暴行罪が成立しますので、そのまま放置していると被害者が被害届を提出し、警察による捜査の結果、逮捕されるおそれがあります。
逮捕・勾留されると最長23日間も身柄を拘束され、その間は仕事や学校に行くことができず、外部との連絡も制限されます。長期の身柄拘束が続くと、職場を解雇されるなど大きな不利益を被る可能性があります。
さらに、検察官が事件を起訴すると、99%以上の確率で有罪判決となるため、前科が付いてしまうリスクが非常に高いのです。
このように、傷害が未遂に終わった場合でも放置すればさまざまなリスクが生じるため、早期に弁護士に相談するようにしましょう。
(2)弁護士ができること
弁護士に相談すると、すぐに被害者との示談交渉に着手し、示談の成立に向けた弁護活動を依頼できます。
加害者本人が直接示談交渉をしようとしても、被害者の心情として加害者と話したくない場合が多く、交渉自体を拒否されてしまうケースがほとんどです。しかし、弁護士が間に入ることで被害者も安心して話し合いに応じやすくなるため、スムーズに示談を成立させられる可能性が高くなります。
(3)警察から呼び出されたらすべき行動
被害者に暴行をして逮捕されなかった場合でも、後日捜査の結果、警察から事情聴取の呼び出しが行われる可能性があります。
警察の呼び出しに応じる義務はありませんので、拒否することも可能です。しかし、警察の呼び出しを拒否すると逃亡のおそれがあるとして逮捕されるリスクが高まるため、基本的には呼び出しに応じたほうがよいでしょう。
(4)逮捕を回避するために弁護士に相談しよう
弁護士に相談すれば、被害者との示談交渉を通じて逮捕を回避できる可能性がありますので、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
なお、刑事事件の弁護士費用の相場は60万円~100万円程度ですが、実際には依頼する弁護士によって金額は異なります。刑事事件について無料相談を実施している法律事務所もありますので、まずは無料相談を利用して弁護士に相談してみるとよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年06月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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