他人を脅迫したらどんな罪に問われるか、犯したら何をすべきか

他人を脅迫したらどんな罪に問われるか、犯したら何をすべきか

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

他人を脅す行為は「脅迫」に該当し、犯罪として処罰されるおそれがあります。もし脅迫事件を起こしてしまったら、速やかに刑事弁護について弁護士へご相談ください。

本記事では「脅迫」について詳しく解説します。

1. 刑法上の「脅迫」とは

刑法では、「脅迫」が要件とされている犯罪が複数定められています。基本となるのは「脅迫罪」ですが、犯罪の種類によって脅迫の意義が異なります。

(1)「脅迫」が要件となっている犯罪

刑法では、以下の犯罪について「脅迫」が要件とされています。

  • 公務執行妨害罪・職務強要罪(刑法95条)
  • 強制執行行為妨害等罪(刑法96条の3)
  • 強制執行関係売却妨害罪(刑法96条の4)
  • 公契約関係競売等妨害(刑法96条の6)
  • 加重逃走罪(刑法98条)
  • 逃走援助罪(刑法100条2項)
  • 騒乱罪(刑法106条)
  • 多衆不解散罪(刑法107条)
  • 不同意わいせつ罪(刑法176条)
  • 脅迫罪(刑法222条)
  • 強要罪(刑法223条)
  • 威力業務妨害罪(刑法234条)
  • 強盗罪(刑法236条)
  • 事後強盗罪(刑法238条)
  • 恐喝罪(刑法249条)

※「威力を用いること」や「恐喝」が要件とされている犯罪も含めています。

(2)脅迫罪における「脅迫」とは

脅迫そのものが要件とされているのは「脅迫罪」です。脅迫罪における「脅迫」は、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。

「害悪」とは、告知を受けた者やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に対し害が加えられることを意味します。

害悪の内容は、告知者がコントロールできるものでなければなりません。たとえば「雷を落とす」「地震を起こす」「呪ってやる」などは害悪の告知に当たりません。

脅迫罪における「脅迫」は、明示的または直接的なものに限らず、害悪をほのめかす内容でも足りるとされています。たとえば「どうなるか分かってるな」「覚えとけよ」などと言う行為も、文脈によっては脅迫に当たることがあります。

「訴えるぞ」「警察に通報するぞ」など、正当な権利を行使する旨を告げることは、相手にとって不利益な内容であっても、原則として脅迫罪に該当しません。

ただし、相手を脅す目的がある場合や、伝え方が著しく不適切な場合などには、脅迫罪に当たると判断される可能性があります。

2. 脅迫をしたら成立し得る主な犯罪の構成要件・法定刑

脅迫をした場合に成立し得る刑法上の主な犯罪について、構成要件や法定刑などを解説します。

(1)脅迫罪

脅迫罪は、本人やその親族に対する害悪を告知して、他人を脅迫した場合に成立する犯罪です(刑法222条)。脅迫罪の法定刑は「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」とされています。

脅迫罪の未遂犯は処罰されず、実際に脅迫をした場合に限って処罰の対象となります。実際に相手が畏怖しなくても、相手に対して害悪を告知した時点で脅迫罪が成立します。

(2)強要罪

強要罪は、本人やその親族に対する害悪を告知して脅迫等を行い、義務のないことを行わせ、または権利の行使を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法223条)。

強要罪の法定刑は「3年以下の懲役」とされており、未遂犯も処罰の対象になります。

強要罪が成立する場合は脅迫罪の構成要件も満たしますが、脅迫罪は強要罪に吸収され、強要罪のみが成立します。

(3)恐喝罪

恐喝罪は、人を恐喝して財物を交付させ、財産上不法の利益を得、または財産上不法の利益を他人に得させた場合に成立する犯罪です(刑法249条)。

恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役」とされています。未遂犯も処罰の対象です(刑法250条)。

「恐喝」とは、暴行または脅迫によって被害者を畏怖させることをいいます。恐喝は、財物または財産上の利益の交付に向けられたものでなければなりません。

脅迫罪における脅迫とは異なり、恐喝罪における恐喝(脅迫)は、本人や親族以外の第三者(友人など)に対する加害の告知も含まれると解されています。

脅迫が「恐喝」に当たるためには、相手を単に困惑させるだけでなく、相手を畏怖させ得る程度に強度のものであることが必要です。

ただし、被害者の反抗を抑圧するほど強度な脅迫をした場合は、恐喝罪ではなく強盗罪が成立します。

(4)強盗罪

強盗罪は、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取し、財産上不法の利益を得、または財産上不法の利益を他人に得させた場合に成立する犯罪です(刑法236条)。

強盗罪の法定刑は「5年以上の有期懲役」とされています。未遂犯も処罰の対象です(刑法243条)。

強盗罪における「脅迫」は、被害者の反抗を抑圧するほど強度であることが必要です。脅迫が反抗抑圧に至らない程度であった場合は、強盗罪ではなく恐喝罪が成立します。

(5)威力業務妨害罪

威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です(刑法234条)。

威力業務妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。未遂犯は処罰されません。

「威力」とは、人の自由意思を制圧するに足る勢力をいいます。暴行や脅迫も「威力」に含まれます。

被害者本人やその親族、友人などに対する脅迫だけでなく、全然関係がない人に対する脅迫であっても、業務妨害につながるものであれば「威力」に該当します。

実際に業務が妨害されなくても、威力を用いて業務妨害のおそれがある状態を作り出した時点で威力業務妨害罪が成立します。

(6)公務執行妨害罪

公務執行妨害罪は、職務を執行する公務員に対して暴行または脅迫を加えた場合に成立する犯罪です(刑法95条1項)。

公務執行妨害罪の法定刑は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」とされています。未遂犯は処罰されません。

公務執行妨害罪が成立するのは、適法な職務を現に執行しており、またはその職務をまさに開始しようとしている公務員に対して暴行・脅迫を加えた場合に限ります。

公務員に対して脅迫をしても、職務から離れている状況であった場合などには、公務執行妨害罪は成立しません(脅迫罪などが成立するにとどまります)。

公務執行妨害罪における「脅迫」は、人を畏怖させる害悪の告知を広く含むと解されており、脅迫罪における「脅迫」よりも広い概念です。現実に妨害の結果が発生したことは必須でなく、妨害になり得る脅迫であれば足ります。

3. 脅迫をしてしまったら弁護士に相談を

他人に対して脅迫をしてしまったら、刑事事件として警察に逮捕されるおそれがあります。

逮捕されると、最長23日間の身柄拘束(逮捕3日間+勾留20日間。刑事訴訟法205条2項、208条)を経た後、検察官が起訴するかどうかを判断します。

起訴された場合は、その後も起訴後勾留による身柄拘束が続きます。刑事裁判における有罪率は非常に高いので要注意です。

起訴を回避するためには、脅迫の被害者との示談を成立させることが重要ですが、加害者自身が直接交渉するのは難しいでしょう。弁護士に依頼して、代理人として示談交渉をしてもらうことをおすすめします。

弁護士には、被害者との示談交渉を含めて、早期の身柄解放や重い刑事処分の回避を目指した弁護活動を依頼できます。

弁護士費用を用意できない場合は、当番弁護士制度や国選弁護人制度を利用できることもあります。できる限り早期に弁護士へ相談して、信頼できる弁護士を見つけてください。

弁護士JP編集部
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  • こちらに掲載されている情報は、2025年04月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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