執行猶予の取り消しとは? 取り消しがなされるケースと回避する方法

執行猶予の取り消しとは? 取り消しがなされるケースと回避する方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

刑事裁判で有罪判決が言い渡されたとしても、執行猶予が付けば直ちに刑務所に収容されることはありません。

しかし、あくまでも刑の執行が猶予されているにすぎませんので、一定の事由に該当すると執行猶予の「必要的取り消し」または「裁量的取り消し」により、執行猶予が取り消されてしまう可能性があります。

執行猶予中は、再び罪を犯さないよう生活することが大切ですが、万が一罪を犯してしまった場合は、執行猶予取り消しを回避するためにもすぐに弁護士に相談するようにしましょう。

本コラムでは、執行猶予取り消しの概要と、取り消しを回避する方法について解説します。

1. 執行猶予の取り消しとは?

執行猶予制度とは、有罪判決で言い渡された刑の執行を一定期間猶予することができる制度です。

刑事裁判により有罪判決が言い渡されたとしても、執行猶予付き判決であれば直ちに刑務所に収容されることはありませんので、通常の社会生活を送ることができます。

ただし、あくまでも刑の執行を「猶予」されているだけですので、執行猶予期間中に再び罪を犯してしまうと執行猶予が取り消される可能性があります。

執行猶予が取り消されてしまうと、それまで猶予されていた刑罰に加えて、新たに犯した罪による刑罰が科されることになりますので注意が必要です。

2. どのような場合に執行猶予の取り消しがなされる?

執行猶予が取り消されるのはどのような場合なのでしょうか。

以下では、執行猶予が必ず取り消される「必要的取り消し」のケースと執行猶予が取り消される可能性がある「裁量的取り消し」のケースを説明します。

(1)執行猶予が必ず取り消されるケース|必要的取り消し

刑法26条では、以下の事由に該当する場合、執行猶予が必ず取り消されるとしています。

  • 猶予の期間内に更に罪を犯して禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき(1号)
  • 猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その刑について執行猶予の言渡しがないとき(2号)
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられたことが発覚したとき(3号)

たとえば、前回「懲役1年執行猶予2年の有罪判決」を受けたところ、執行猶予期間中に犯した罪により「懲役2年の実刑判決」を言い渡された場合、執行猶予が必ず取り消され、前回と今回の刑罰を合わせた「合計3年の懲役刑」が科されます。

(2)執行猶予が取り消されることがあるケース|裁量的取り消し

刑法26条の2では、以下の事由に該当する場合、執行猶予が取り消される可能性があるとしています。

  • 猶予の期間内に更に罪を犯し、罰金に処せられたとき(1号)
  • 第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき(2号)
  • 猶予の言渡し前に他の罪について禁錮以上の刑に処せられ、その執行を猶予されたことが発覚したとき(3号)

たとえば、前回「懲役1年執行猶予2年の有罪判決」を受けたところ、執行猶予期間中に犯した罪で「罰金20万円の有罪判決」となった場合がこれにあたります。執行猶予が取り消されるかどうかは、裁判官の判断に委ねられています。

3. 執行猶予の取り消しまでの流れ

執行猶予が取り消されるまでは、どのような流れになるのでしょうか。

以下では、執行猶予取り消しまでの一般的な流れを説明します。

(1)執行猶予の取り消し事由に該当

執行猶予期間中に再び罪を犯した場合、前回と同様に捜査機関による刑事事件の捜査が行われ、検察官が事件の起訴または不起訴を判断します。

検察官により事件が起訴されると、刑事裁判により審理が行われ、犯罪行為が認められれば有罪判決を受けます。言い渡された有罪判決の内容によっては、執行猶予の必要的取り消し事由または裁量的取り消し事由に該当することになります。

(2)検察官が裁判所に対し執行猶予取り消し請求

執行猶予期間中の犯罪について有罪判決が確定すると、検察官は裁判所に執行猶予の取り消しを請求することになります。

(3)裁判所からの聴取

検察官から執行猶予の取り消し請求があると裁判所が本人または代理人弁護士から意見の聴取を行います。

必要的取り消し事由に該当する場合、たとえ意見を述べても執行猶予は取り消されてしまいます。しかし、裁量的取り消し事由であれば、意見の内容次第では執行猶予を取り消されずに済む可能性があります。そのため、しっかりと意見を述べるようにしましょう。

(4)裁判所が執行猶予取り消しの決定

裁判所は、執行猶予の取り消しの要件を満たすかどうかを検討した上で、要件を満たすと判断したときは、執行猶予の取り消し決定を行います。

なお、裁判所による執行猶予取り消し決定までの間に執行猶予期間が満了した場合は、刑の言い渡しは効力を失いますので、執行猶予が取り消されることはありません。

4. 執行猶予の取り消しを回避する方法

執行猶予期間中に罪を犯してしまったときは、執行猶予を取り消される可能性があります。

執行猶予の取り消しを回避するためにも以下の方法を検討しましょう。

(1)不起訴、無罪を獲得する

執行猶予期間中に罪を犯したとしても、有罪判決を受けなければ執行猶予が取り消されることはありません。そこで、まずは不起訴処分または無罪の獲得を目指していくことになります。

弁護士に依頼をすれば、早期に被害者と示談交渉を行い、不起訴処分獲得の可能性を高めることができます。また、検察官に起訴されたとしても、冤罪(えんざい)であれば無罪の立証に向けてサポートしてもらうことができます。

(2)再度の執行猶予を獲得する

検察官に起訴されて、罪を犯したのが事実である場合、有罪判決を避けることはできません。

しかし、有罪判決の言い渡しを受けたとしても、再度の執行猶予を獲得することができれば、執行猶予が取り消されることはありません。

再度の執行猶予を獲得するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 判決時に執行猶予中であること
  • 今回の判決が1年以下の懲役または禁錮であること
  • 情状に特に酌量すべき点があること
  • 前回の執行猶予に保護観察がついていないこと

再度の執行猶予を獲得するためには、弁護士に依頼して、被告人の有利な情状を説得的に主張立証することが重要です。

早い段階から弁護活動を開始する必要がありますので、執行猶予中に罪を犯してしまったときは、すぐに弁護士に相談するようにしてください。

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