
未成年の子どもが盗撮で逮捕されたら…処分の流れや対処法を解説
未成年の子どもが盗撮事件を起こしてしまった場合、その後に行われる処分や手続きの種類が、成年者とは異なります。また、子どもの親には、適切な対処を行う必要性が生じます。
今回は、未成年者の子どもが盗撮事件を起こした場合に罪に問われることがあるのか、どのような手続きでどのような処分が課されるのかなどについて解説します。
1. 未成年の子どもの盗撮はどのような罪に該当する?
まず、そもそも未成年者が盗撮をした場合に、成年者と同様に罪に問われるのかという問題があります。
少年法は、20歳未満の者を「少年」としたうえで、以下のように分類し、成人と異なる扱いをしています。
- 犯罪少年:14歳以上で罪を犯した少年(刑事責任を問われる可能性がある)
- 触法少年:14歳未満で罪を犯した少年(刑事責任を問われない)
- 虞犯(ぐはん)少年:性格・環境にてらし、将来、罪を犯す可能性がある少年
盗撮を行った場合は、これらのうち、年齢に応じて犯罪少年(14歳以上)または触法少年(14歳未満)に該当することになります。
次に、盗撮をする行為は、「性的姿態撮影等処罰法」に定められている性的姿態撮影罪に該当します。
性的姿態撮影罪の実行行為は、「人の性的姿態」を撮影することであり、人の性的姿態とは、以下をさします。
- 性器や臀部(でんぶ)、胸部などの性的な体の部位
- 性的な部位を隠すために着用している下着
- わいせつな行為や性交等がされている間の姿態
性的姿態撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁または300万円以下の罰金です。
なお、性的姿態撮影等処罰法が施行されたのは2023年7月13日からなので、同年7月12日以前の盗撮行為に関しては、軽犯罪法違反や各都道府県の迷惑防止条例違反に該当することとなります。
2. 未成年者が盗撮事件で逮捕された場合の処分の流れ
未成年者による盗撮事件が発覚し逮捕された場合の処分に至る流れを解説します。未成年者の場合は、成人のように法律に定められた刑罰を受けるのではなく、再非行を防ぐ観点から必要な「処分」がなされることとなります。
(1) 14歳以上は刑事責任を問われる可能性も
①逮捕
未成年者でも、14歳以上であれば逮捕され、少年審判が行われ、処分を受ける可能性があります。
逮捕には、現行犯逮捕と逮捕状を要する通常逮捕・緊急逮捕がありますが、盗撮の場合は、盗撮を行っている最中やその直後に現行犯逮捕されるケースが多いです。
逮捕された後、警察で取り調べを受け、必要があれば48時間以内に検察官に送致されます(刑事訴訟法203条)。検察でさらに勾留の必要性があると認めた場合、24時間以内に裁判官に対して「勾留」の請求(同205条1項)、または「勾留に代わる観護措置」の請求(少年法43条)を行います。
逮捕から勾留の請求または観護措置の請求までの時間は、合計72時間を超えてはなりません(刑事訴訟法205条2項)。
②勾留または「勾留に代わる観護措置」
逮捕後に続いて法律上認められる身柄拘束は、「勾留」または「勾留に代わる観護措置」です。勾留も、勾留に代わる観護措置も、期間が10日である点は共通しています。
しかし、勾留はさらに最大10日間延長できるのに対して、勾留に代わる観護措置は期間延長することができないという違いがあります。
勾留は、逮捕の後に所定の要件のもとで認められる長期の身柄拘束です。原則として10日、延長により最長20日まで認められます(刑事訴訟法208条)。
勾留の要件は「勾留の理由」と「勾留の必要性」です。また、少年の場合は「やむを得ない場合」でなければ認められません(少年法43条3項、48条1項参照)。
勾留の理由は、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ、①住所不定、②罪証隠滅のおそれ、③逃走のおそれ、のいずれかがあることをさします(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。
「勾留の必要性」は、被疑者が勾留により被る不利益が大きい場合には認められません。
勾留はほとんどの場合、警察署の留置施設において行われます。
これに対し、「勾留に代わる観護措置」は、少年鑑別所での最長10日間の身柄拘束であり、延長がありません。
③家裁送致
勾留または勾留に代わる観護措置の期間が終了すると、犯罪の嫌疑が不十分な場合を除いて、未成年者事件は全て検察官から家庭裁判所に送致されます。
なお、在宅事件の場合も同様に、捜査の結果、犯罪の嫌疑が十分にあると判断される場合には、事件が家庭裁判所に送致されることとなります。
家裁送致されると、家庭裁判所は、後述する少年審判を行うために必要があると認められる場合に観護措置を取ることができます。観護措置がとられると未成年者は少年鑑別所に収容されます。
収容期間は原則として2週間であり、さらに延長ができます。実務的には約1か月間収容されることが多いです。
なお、盗撮事件が在宅事件として取り扱われる場合には、観護措置がとられることはあまりありません。
家裁送致後は、家庭裁判所による法的調査と社会調査が行われます。
法的調査は、非行事実の有無に関する調査であり、社会調査は、要保護性(未成年者が将来再び非行を行う可能性)に関する調査です。
このうち、法的調査は、裁判官が記録を精査することによって行います。一方、社会調査は、家庭裁判所調査官が行います。家庭裁判所調査官とは、裁判所の職員で、心理学や社会学の専門家です。
家庭裁判所調査官は、未成年者や保護者と面談して、非行の動機や交友関係、家庭環境などを調べます。そして、未成年者やその環境の問題点から、要保護性の程度を明らかにし、再非行を防止するためにどのような方法が適しているかを検討します。
調査終了後、家庭裁判所調査官は、調査結果と終局処分に関する意見を報告します。裁判官は、調査官の意見やその他の証拠書類を総合的に検討して、終局処分を決定します。
そして、その結果、審判不開始という結論が出た場合には、この段階で手続きが終了します。
審判不開始になるのは、未成年者の環境が調整され再非行の見込みがなくなり、要保護性の観点から問題がないと家庭裁判所が判断した場合です。
④少年審判
少年審判は、家庭裁判所内の審判廷という場所で、非公開の手続きで行われます。少年審判では、未成年者と両親などの保護者が必ず呼び出され、また付添人が出席します。付添人は通常弁護士が務めます。
少年審判は、原則として一人の裁判官が担当します。裁判官や未成年者に対して、非行の経緯や再非行を防ぐ具体策を質問し、保護者に対しては再非行の防止に協力するよう促します。
付添人も未成年者や両親に質問することができ、裁判官に対し再非行の恐れがないことなどをアピールします。
審理終了後、裁判官から以下の処分のいずれかが言い渡されます。
- 保護観察
- 少年院送致
- 児童自立支援施設等送致
- 検察官送致
- 不処分
- 知事または児童相談所長送致
処分を少しでも軽くする場合には、未成年者自身が事件の原因をしっかりと考えて再び盗撮をしないようにするための対応策を立てることが必要です。言葉だけで「反省している」と述べるだけでは足りません。
未成年者の盗撮は、初犯の場合は不処分になることも少なくありません。ですが、態様が悪質な場合や盗撮を何度も繰り返している場合には、保護観察や少年院送致といった処分が下されることもあります。
(2) 学校からの処分を受ける可能性がある
学生が事件を起こした場合、警察や家庭裁判所から学校に対して成績や日頃の生活状況などの照会が行われるため、ほとんどのケースで学校側が事件を知ることになります。
そのため、学校側から未成年者や両親が呼び出されて事情の聴き取りが行われます。
高校生や大学生の場合、停学処分や退学処分などの処分が下される場合もあります。
3. 子どもが盗撮事件を起こしてしまったら、弁護士に相談を
未成年の子どもが盗撮事件を起こしたら、まず弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士が付添人に就任することにより、家庭裁判所調査官と面談して未成年者の反省の状況や環境改善策を伝えることができます。
少年事件の場合は、処分を決めるにあたり、先ほど解説した要保護性が考慮されることから、被害者と示談が成立しても直ちに不処分にはなりません。
しかし、被害を回復したことにより、少年の処分がより軽いものになる可能性があります。こういった活動も弁護士が担当します。
また、学校との間で退学処分などの重い処分を回避するよう活動してもらうことが可能です。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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