
保釈金の相場とは? 高額になる場合や支払えないときの対処法を解説
「家族が刑事事件を起こして逮捕・勾留されてしまった。保釈金を支払って一時的に身体拘束を解きたいが、金銭面で余裕がない……。」
こんな悩みを抱えていませんか?
実は、保釈金を支払うことが難しい場合でも、保釈金の支援制度を利用することで保釈金を立て替えてもらえる場合があります。
そこで、本コラムでは、保釈金の概要・相場や、保釈金を支払えない場合にとるべき対応について解説します。
1. 保釈金とは
(1)保釈の趣旨
保釈とは、保釈金を裁判所に納付したうえで、暫定的に被告人の身柄を解放してもらう制度をいいます。
刑事裁判では、有罪が確定するまでは、被告人は罪を犯していないものとして扱わなければならないという「無罪推定の原則」があります。しかし、起訴後の勾留期間は初回に2か月、その後に1か月毎の更新があり得るため、被告人の生活の基盤が失われてしまうおそれが生じます。
そこで、裁判所へ確実に出廷することを条件に、裁判で判決が出るまでの期間、暫定的に身柄を釈放することを認めるのが保釈制度の趣旨です。
(2)保釈手続きの流れ
保釈手続きの流れは、以下のとおりです。
- 裁判所に対する保釈請求
- 裁判官による審査
- 保釈許可
- 保釈金の納付
- 被告人の保釈
1. 裁判所に対する保釈請求
まずは、「保釈の請求をすることができる人」が裁判所に対して保釈請求(保釈申請)をする必要があります。
保釈の請求をすることができる人は、勾留されている被告人またはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹です(刑事訴訟法第88条第1項)。
2. 裁判官による審査
次に、裁判官が保釈の可否を決定するための審査をします。審査にあたっては、担当の検察官の意見を聴く必要があります(刑事訴訟法第92条第1項)。
3. 保釈許可(または保釈却下)
検察官の意見も踏まえ、裁判官が保釈の可否を決定します。
4. 保釈金の納付
保釈をしてもらうためには、必ず保証金を納める必要があり(刑事訴訟法第94条第1項)、この保証金を保釈金と称しています。
5. 被告人の保釈
保釈金が支払われた後、被告人が保釈されます。
(3)保釈の種類
保釈には、権利保釈(刑事訴訟法第89条)と裁量保釈(刑事訴訟法第90条)の2種類があります。保釈にあたっては、まず権利保釈が検討され、権利保釈が認められない場合に裁量保釈が検討されることになります。
・権利保釈
以下①〜⑥の要件をすべて満たした場合、裁判所は保釈を許さなければなりません。
- 一定の重大犯罪でないこと
- 重大犯罪の前科がないこと
- 一定の犯罪について常習性がないこと
- 罪証を隠滅するおそれがないこと
- 被害者や親族などに危害を加えるおそれがないこと
- 氏名住所がわかること
・裁量保釈
権利保釈の要件を満たさない場合でも、裁判所は職権で保釈を許可することができます。
裁量保釈の可否の判断においては、犯罪の軽重、犯罪の性質・態様、犯罪事実の認否、被告人の経歴、家族関係、前科前歴の有無などを評価し、出頭が確保できるか、保釈金以外の条件を付すことにより、裁量保釈を許可できるかという視点から、裁量保釈の可否について個別具体的な判断がなされます。
(4)保釈と釈放の違い
保釈と似た概念として「釈放」があります。釈放とは、逮捕・勾留により警察の留置場で身体を拘束されている被疑者が解放されることをいいます。
保釈と釈放は、身柄拘束から解放されるという点で共通していますが、次のような違いがあります。
釈放 | 保釈 | |
---|---|---|
対象 | 逮捕・勾留中の被疑者・被告人 | 起訴後の被告人 |
請求可否 | 不可 | 可能 |
身体拘束を解放する人 | 警察・検察 | 裁判所 |
費用 | 不要 | 必要(保釈金) |
2. 保釈金の相場はいくら?
(1)保釈金が決まる基準とは?
保釈金の相場は、150万円から300万円程度です。
ただ、法律では保釈金の上限・下限は決められておらず、さまざまな考慮要素をもとに決定されることになっています(刑事訴訟法第93条第2項)。
刑事訴訟法第93条第2項保証金額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならない。
実務では、考慮要素のうち「被告人の資力」と「犯罪の性質」が重要視されます。
たとえば、被告人が犯した罪が重い、または被告人の年収が高いほど、保釈金額が高めに設定される傾向にあります。
(2)保釈金は返ってくるのか?
保釈金は、いわば逃亡抑止のための「保証金」という性格を持つものなので、被告人が逃亡せず出廷して判決が下されれば、基本的には全額返還されます。
もっとも、以下5つのケースに該当する場合には、保釈が取り消され、保釈金が没収される場合があるので、注意が必要です(刑事訴訟法第96条)。
- 正当な理由なく裁判に出頭しないとき
- 逃亡する、又は逃亡のおそれがあるとき
- 証拠隠滅する、又は証拠隠滅のおそれがあるとき
- 被害者の関係者などに危害を加えた、又は畏怖させたとき
- 住居制限などの、裁判所が定めた保釈の条件に違反したとき
3. 保釈金が支払えない場合の対処法とは
金銭面で余裕がなく、保釈金を用意するのが難しい方も多いのではないでしょうか?
そんなときは、「一般財団法人 日本保釈支援協会(支援協会)」または「全国弁護士協同組合連合会(全弁協)」による保証金支援制度を利用しましょう。
主な支援制度は、以下の3種類です。
- 保釈保証金立替システム(支援協会)
- 保釈保証書発行システム(支援協会)
- 保釈保証書発行システム(全弁協)
以下の表で、各支援制度の共通点・相違点をまとめました。
保釈保証金立替システム(支援協会) | 保釈保証書発行システム(支援協会) | 保釈保証書発行システム(全弁協) | |
---|---|---|---|
申込人 | 被告人の関係者(配偶者、親族、同僚、友人、恋人、内縁など) | 被告人の関係者(配偶者、親族、同僚など)収入が少ない場合、申込人は2名必要 | |
立替(保証)限度額 | 500万円 | 300万円 (※例外あり) | 300万円 (※薬物事案では200万円) |
立替(保証)期間 | 立替金送金日より2か月間 | 裁判終了まで | |
自己負担金(担保金) | 金額により異なる(保釈許可決定額200万円の場合の立替手数料は5万5000円) | 保証金額の1.5% | 保証金額の2%(薬物事案では3%) |
申し込みから保釈までの所要日数 | なし(※一部自己負担金を要する場合あり) | なし(※一部自己負担金を要する場合あり) | なし(薬物事案では20%) |
申し込みから保釈までの所要日数 | 手続き次第で当日保釈も可能 | 概ね2日~3日 | 概ね8日~9日 |
保釈保証金立替システムと保釈保証書発行システムの違いについて|一般財団法人 日本保釈支援協会
立替が必要な金額や、保釈から裁判終了までに要する期間などを考慮したうえで、どの支援制度を使用するか決めるのがよいでしょう。
なお、どの支援制度を利用する場合であっても、申込人の資力・該当する事件の内容・被告人の前科の有無など、審査が必要となる点には注意が必要です。
4. 保釈の悩みは刑事弁護に詳しい弁護士に相談を
保釈制度を利用することで、起訴後も被告人が継続的に就業できる可能性が高くなり、経済的な破綻を防ぎやすくなります。また、裁判準備のために弁護士と余裕をもって打ち合わせができるほか、実刑判決で刑務所に入所することになった場合に事前の家族・親族へのケアもできます。
刑事弁護に詳しい弁護士に相談することで、保釈の許可に向けた裁判所・裁判官へのはたらきかけをしてもらえることが期待できます。保釈金が用意できない場合でも、減額にむけたサポートや、適切な支援制度の利用に関して、アドバイスをもらえるでしょう。
保釈制度を利用しないことで、身柄拘束がどんどん長引いてしまいます。弁護士に相談するタイミングは早ければ早いほどよいでしょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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