
- (更新:2025年01月10日)
- 犯罪・刑事事件
落書きは犯罪?逮捕される可能性・刑罰・逮捕後の流れを解説
「旅行の記念に」、「イライラしていたのでうっぷんを晴らすために」、「自分のアートを作りたい」などの理由、気軽に落書きをしてしまう人がいます。しかし、気軽にやってしまった落書きで、実は罪に問われることもあります。
そこで、今回は、落書きにどのような犯罪が成立するのか、落書きをしたことがばれて捜査や逮捕された場合、どのような手続きの流れになるのかなどについて解説します。
1. 落書きは「器物損壊罪」で逮捕されることがある!
軽い気持ちでしてしまった落書きも犯罪として逮捕されてしまう可能性があります。落書きで逮捕されるケースや、問われる罪などについて解説します。
(1)落書きで逮捕されるケース
落書きで逮捕される可能性があるのは、他人が所有する住居や建造物、文化財などに塗料を使用して広範な落書きをしたケースです。
(2)落書きで問われる罪
落書きをした場合、以下の罪に問われる可能性があります。
- 器物損壊罪(刑法261条)
他人の所有物に落書きをした場合、美観が損なわれるようなことがあれば、「損壊」に該当するとして器物損壊罪に問われる可能性があります。なぜなら、「損壊」については、判例・学説上、その物の効用を喪失させる行為だと解されているからです。
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金となっています。
- 建造物損壊罪(刑法260条前段)
他人の建造物に塗料やスプレーなどを使って広範に落書きした場合には、建造物の「効用を失わせる行為」にあたるので、損壊行為に当たると評価され、建造物損壊罪に問われる可能性があります。
建造物損壊罪の法定刑は、5年以下の懲役です。
- 偽計業務妨害罪(刑法233条後段)、威力業務妨害罪(刑法234条)
たとえば、企業所有の景観を売りにしている建造物などに落書きをした場合には、従業員がこれを消す必要が生じ、業務が妨害されたとして威力業務妨害罪に問われる可能性があります。
なお、おおまかにいえば、「偽計」は被害者にわからないように行った場合、「威力」は被害者にわかるように行った場合をさします。
偽計業務妨害罪も威力業務妨害罪も、法定刑はいずれも3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
- 文化財保護法違反(文化財保護法195条1項、196条1項)
歴史的建造物の寺院や、天然記念物の樹木などに落書きした場合に、文化財保護法違反の罪に問われる可能性があります。
文化財保護法違反の法定刑は、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
- 軽犯罪法違反(軽犯罪法1条33号)
落書きが悪質なものでない場合には、軽犯罪法違反で処罰されることになります。
拘留(1日以上30日未満の身体拘束)または科料(1000円以上1万円未満の罰金)が科されます。
- 都道府県等の迷惑防止条例違反
地方公共団体によっては、落書きが迷惑防止条例で禁止されていることがあります。
当該自治体によって刑罰の内容は異なりますが、おおむね数万円程度の罰金が科されることとなります。
(3) 落書きは現行犯逮捕される?
落書きをしている現場が発見されたか、あるいは落書きをしたところが見つかって逃げた直後の場合には、現行犯逮捕されることもあり得ます(刑事訴訟法212条、213条)。
(4) 逮捕されなくても「在宅事件」として捜査される可能性がある
落書きにより逮捕されるのは、逃亡もしくは証拠隠滅のおそれがあると捜査機関が判断した場合です。
家族と暮らしており勤務先もある場合には、身体拘束されずに在宅事件として捜査されることもあります。
よほど悪質な落書きでない限り、在宅での捜査になる可能性が高いと考えられます。
(5) 落書きでの逮捕・起訴の事例
他人の住居の外壁、シャッターに合成塗料を吹き付けて、建造物損壊罪・器物損壊罪により、逮捕・起訴されたという事例があります。
裁判においてはいずれも有罪とされました。
2. 落書きで逮捕された後の流れ
落書きで逮捕された後の流れは以下のとおりとなります。
・勾留請求・勾留
逮捕された後、警察で取り調べを受けます。必要があれば48時間以内に検察官に送致されます(刑事訴訟法203条)。
検察では、必要があれば24時間以内に裁判官に対して「勾留」の請求を行います(同205条1項)。
勾留の必要がある場合とは、住所不定、逃亡の恐れ、罪証隠滅の恐れのいずれかが認められる場合です(同207条1項、60条1項)。逮捕から勾留の請求までの時間は合計で72時間を超えてはなりません(同205条2項)。
裁判官が、上記の3つの要件をみたし勾留の必要があると認められる場合には、これを認容し、勾留状を発付します。被疑者はその後原則10日間、最長20日間勾留されることとなります(同208条)。
検察官が勾留請求の必要がないと判断した場合、また、裁判官が勾留する必要がないと判断した場合には、被疑者は釈放されます。
ただし、その後も在宅事件として、捜査や取調べは続くこととなります。
・起訴または不起訴
検察官が捜査の結果、被疑者を裁判にかけて処罰する必要があると判断したケースでは、勾留している場合には勾留満期日までに、裁判所に起訴することとなります。
逆に、嫌疑不十分の場合や、後述するように被害者と示談が成立して被害回復が図られている場合には、処罰の必要がないとして不起訴にする場合があります。
勾留している場合には、不起訴処分が出された段階で、被疑者は釈放されることとなります。
・裁判での審理、判決
被疑者が起訴された場合には、一定期間後に、裁判が開かれ、証拠の取り調べや、証人尋問、被告人質問などを経て審理が終結、判決が下されることとなります。
・上訴
一審で下された判決に、被告人または検察官に不服がある場合には、控訴することができます
そして、控訴審判決にも不服がある場合、判決に憲法違反や判例違反があれば上告することができます。
3. 落書きで逮捕・捜査された場合の対処方法
落書きで、逮捕・捜査をされた場合、起訴されて有罪判決が下れば、前科がついてしまうこととなります。
そうならないようにするためには、以下のことをする必要があります。
(1)被害者に謝罪や賠償をする
まず、第一に必要なことは被害者に対する謝罪や賠償です。
被害者に謝罪することにより、被害届や告訴を取り下げてもらうことができれば、不起訴になる可能性が高くなります。
したがって、まずは真摯(しんし)に謝罪することが必要です。
また、落書きの塗料を落とすなどの原状回復の費用や精神的な苦痛に対する慰謝料などを賠償することも必要です。
被害回復を図ったことが捜査機関に評価されて、不起訴になる可能性が高まります。
(2)示談の成立を目指す
謝罪や賠償に加え、被害者の方から「処罰を望まない」という言葉をもらい、その言葉を記載した示談書を交わすことができれば、不起訴になる可能性はさらに高まります。
被害を受けた人が、被疑者の処罰を望まないのであれば、その人を処罰する必要性が低くなるからです。
4. 落書きで逮捕・起訴されそうになったら弁護士に相談を
落書きで逮捕・起訴されそうになった場合には、迷わず弁護士に相談してください。
先ほども述べたとおり、落書きで逮捕・捜査された場合には、不起訴処分を得るために、謝罪や賠償、示談が必要となりますが、これらを被疑者本人がすることは難しいことが多いからです。
捜査機関が、被害者の連絡先などを被疑者本人に教えることはまずありません。
弁護士であれば、被害者の了解を得たうえで教えてもらえることが非常に多いのです。
そして、弁護士であれば、どのような言葉でおわびの気持ちを伝えるのが最適かアドバイスすることができますし、賠償の交渉もスムーズにできます。
弁護士に相談・依頼すれば、不起訴になる可能性が高まります。
- こちらに掲載されている情報は、2025年01月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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