盗撮の時効|問われる罪と処罰、時効成立を待つリスクについて解説

盗撮の時効|問われる罪と処罰、時効成立を待つリスクについて解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

盗撮などの性犯罪をすると、犯罪の責任を問われる可能性があります。公訴時効が成立すれば刑事事件として訴追されることはなくなりますが、時効成立を待つことにはリスクもあるので注意が必要です。

本コラムでは、盗撮について成立する犯罪と時効について解説します。

1. 盗撮をした場合に問われる罪と時効

盗撮行為や、盗撮した動画を所持・提供する行為については、さまざまな犯罪が成立します。各犯罪については、法定刑に応じて公訴時効期間(=刑事訴追できる期間)が設けられています。

(1)性的姿態等撮影罪

正当な理由がないのに、他人の性的な部位や、わいせつな行為または性交等がされている間の姿態をひそかに撮影した場合は、「性的姿態等撮影罪」によって処罰されます(性的姿態撮影等処罰法第2条)。

性的姿態等撮影罪の法定刑は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。公訴時効期間は、犯罪行為が終わった時から3年とされています(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。

(2)迷惑防止条例違反

盗撮行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例でも禁止されています。

たとえば東京都の迷惑防止条例によれば、盗撮行為をした者は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(同条例第5条第1項第2号、第8条第2項第1号)。

この場合、公訴時効期間は、犯罪行為が終わった時から3年です(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。

(3)軽犯罪法違反

正当な理由がなく、人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為は、軽犯罪法違反に該当します(同法第1条第23号)。

軽犯罪法違反の法定刑は「拘留または科料」です。公訴時効期間は、犯罪行為が終わった時から1年とされています(刑事訴訟法第250条第2項第7号)。

なお、のぞき見に加えて撮影行為もした場合、軽犯罪法違反は性的姿態等撮影罪または迷惑防止条例違反に吸収されます。

(4)児童ポルノ禁止法違反

自己の性的好奇心を満たす目的で、18歳未満の者の性的な姿態を撮影した児童ポルノを所持した者は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(児童ポルノ禁止法第7条第1項)。

また、児童ポルノを他人に提供した者は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処されます(同条第2項)。

さらに、児童ポルノを不特定もしくは多数の者に提供し、または公然と陳列した者は「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」に処され、または懲役と罰金が併科されます(同条6項)。

児童ポルノの所持・提供等の公訴時効期間は、不特定多数の者に対する提供については犯罪が終わった時から5年、それ以外の行為については犯罪が終わった時から3年です(刑事訴訟法第250条第2項第5号、第6号)。

(5)建造物等侵入罪

盗撮する目的で駅などの建造物に立ち入った場合は、建造物侵入罪によって処罰されます(刑法第130条前段)。

建造物侵入罪の法定刑は「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。公訴時効期間は、犯罪行為が終わった時から3年とされています(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。

2. 2種類の時効|刑事上の公訴時効と民事上の消滅時効

盗撮を含む犯罪行為については、主に2種類の時効が問題となります。1つは刑事上の公訴時効、もう1つは民事上の消滅時効です。

(1)公訴時効|刑事訴追できる期間

「公訴時効」とは、犯罪が終わった時から一定期間を経過すると、検察官が被疑者を起訴できなくなる制度です。

時間の経過によって社会的な処罰感情が希薄化すること、および犯罪の証拠が散逸することなどを理由として、殺人などの重大犯罪を除き公訴時効が設けられています。

「1. 盗撮をした場合に問われる罪と時効」で紹介した時効期間は、いずれも公訴時効に関するものです。

盗撮行為が終わった時から公訴時効期間が経過すると、その盗撮行為について起訴されることはなくなるため、刑事罰を科されることもなくなります。

公訴時効期間は、犯罪の法定刑などに応じて決まります。

たとえば、「長期10年未満の懲役または禁錮」にあたる罪については5年、「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金」にあたる罪については3年とされています(刑事訴訟法第250条第2項第5号、第6号)。

(2)消滅時効|損害賠償を請求できる期間

「消滅時効」とは、一定期間権利が行使されない場合に、その権利を消滅させる制度です。

長年続いた事実を尊重することや、権利を行使しない者については保護の必要性が薄れることなどを理由として、権利の種類に応じた消滅時効期間が設定されています。

盗撮は不法行為に該当するため、加害者は被害者に対して慰謝料などの損害賠償責任を負います(民法第709条)。

その一方で、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効が完成した後、加害者が時効を援用した場合には、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できなくなります。

盗撮に関しては、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、以下のいずれかの期間が経過すると完成します(民法第724条)。

  1. 盗撮されたことおよび加害者を知った時から3年
  2. 盗撮行為の時から20年

ただし、内容証明郵便の送付や訴訟の提起などが行われると、消滅時効の完成が猶予されます。また、訴訟などによって損害賠償請求権が確定すると、時効が更新されてゼロからカウントし直されます。

3. 公訴時効成立を待つリスクと、時効成立後も残るリスク

盗撮行為をした後、処罰を免れるために公訴時効の成立を待とうと考えている方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、公訴時効の成立を待つことにはリスクがあるほか、仮に公訴時効が成立したとしても、民事上の消滅時効は完成しておらず、損害賠償を請求されることがあります。

(1)公訴時効成立を待つことのリスク

公訴時効が成立するまでは、盗撮行為を理由に刑事訴追される可能性が残ります。盗撮をした時点から1年、2年と経過しても、警察は捜査を続けており、いずれは逮捕されるかもしれません。

捜査の末に盗撮が発覚して逮捕されると、自首した場合よりも刑事処分が重くなるケースが多いです。捜査による発覚を待つことなく、自首することをおすすめします。

弁護士に刑事弁護を依頼すれば、不起訴となるケースも多く、有罪判決を受けた場合でも執行猶予が付されることがあります。

(2)公訴時効成立後も残るリスク

刑事上の公訴時効が成立したとしても、損害賠償請求権に関する民事上の消滅時効は完成していないケースがあります。

たとえば、性的姿態等撮影罪の公訴時効と不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効はいずれも「3年」ですが、起算点が以下のとおり異なります。

性的姿態等撮影罪の公訴時効 犯罪行為が終わった時
不法行為に基づく損害賠償請求権 盗撮されたことおよび加害者を知った時

被害者が加害者を知るのが遅れた場合は、公訴時効が成立しても、不法行為に基づく損害賠償請求権はしばらく残ることになります。

被害者から損害賠償を請求されることが不安な場合は、お早めに弁護士へご相談ください。

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