
子どもが大麻で逮捕されたら…処分の流れや初犯の場合について解説
最近、未成年の子どもによる薬物犯罪が注目されています。中でも大麻は入手がしやすいことから、子どもが手を染めてしまう危険がとても高い薬物といえます。
本コラムでは、子どもが大麻事犯を起こした場合どうなるのかについて解説します。
1. 大麻事件を犯してしまう子どもが増えている
20歳未満の少年による大麻事犯は増加傾向にあります。「令和5年版 犯罪白書」によると、2014年(平成26年)~2021年(令和3年)において、20歳未満の少年による大麻事犯は一貫して増加しました。2022年(令和4年)は久しぶりに前年度よりやや減少しましたが、912人と依然として高い数値を示しています。

少年事件全体は減少傾向にあると言われている中、大麻事犯が増加傾向にあるということは由々しき問題といわざるを得ません。
2. 子どもが大麻を使用したら
子どもが大麻を所持・使用していた場合には、大麻取締法に基づいて処分されることとなります。
以下、大麻取締法について解説します。
(1)大麻取締法とは
大麻取締法(以下「法」といいます)とは、大麻(法により「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」と定義されています)の用途を学術研究および繊維・種子の採取だけに限定して大麻の取り扱いを免許制とし、免許を有しないものによる大麻の取り扱いを禁止するとともに違反行為を特定して罰則を設けた法律です。
罰則の対象となるのは、以下の行為です。
-
栽培、輸入、輸出(法24条)
法定刑は7年以下の懲役ですが、営利目的の場合は加重され10年以下の懲役および300万円以下の罰金となります。
-
所持、譲り受け、譲渡(法24条の2)
法定刑は5年以下の懲役刑ですが、営利目的の場合は加重され7年以下の懲役刑および200万円以下の罰金となります。
-
使用
法定刑は5年以下の懲役ですが、営利目的の場合には加重され7年以下の懲役刑および200万円以下の罰金となります。
以前は、使用は罰せられておらず、使用が発覚した場合も所持罪で処罰されていました。しかし、近年大麻使用が増加したことから2023年12月に法改正により使用罪が新設され施行されています。
(2)14歳以上であれば逮捕される可能性がある
大麻を使用した者が20歳に達していなくても、14歳以上の場合には逮捕され、少年審判の結果、処分される場合がありえます(刑法41条には「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定されています)。以下、一般的な手続きの流れを説明します。
①逮捕
警察で取り調べが行われ、必要があれば48時間以内に検察官に送致されます(刑事訴訟法203条)。
検察で勾留の必要性があると認めた場合、24時間以内に裁判官に対し勾留請求(同法205条1項)、あるいは勾留に代わる観護措置(少年鑑別所送致等)の請求(少年法43条)を行います。
逮捕から勾留請求等までの時間は合計72時間を超えてはなりません(刑事訴訟法205条2項)。
②勾留または勾留に代わる観護措置
逮捕に続き、勾留または勾留に代わる観護措置がとられます。
勾留は、逮捕の後、所定の要件をみたす場合に認められる長期の身柄拘束です。勾留の要件は「勾留の理由」と「勾留の必要性」です。
勾留の理由とは、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある場合で、かつ、
- 住所不定
- 罪証隠滅のおそれ
- 逃走のおそれ
のいずれかが認められることをいいます(刑事訴訟法207条1項、60条1項)。また、被疑者が勾留により被る不利益が大きい場合には「勾留の必要性」が認められません。
これらに加え、少年の場合は「やむを得ない場合」でなければ勾留が認められないことになっています(少年法43条3項、48条1項参照)。
勾留の期間は原則として10日ですが、延長して最長20日間勾留され、事情聴取の他捜査が進められます(刑事訴訟法208条)。
勾留に代わる観護措置は、少年鑑別所での最長10日間の身柄拘束であり、延長はありません(少年法44条3項)。
③家裁送致
少年事件については、全件が家庭裁判所に送致されます。そして、家庭裁判所において、
- 観護措置をとって少年を少年鑑別所に収容する
- 在宅での観護措置とする
- 成人と同様の刑罰を科すために事件を検察官に送る(逆送)
のいずれかの判断がされることとなります。
3. の逆送が選択されるのは、成人に近い年齢の者が、殺人や傷害致死事件等の重大事件を起こしたときに限られる傾向にあり、多くの場合は1. が選択されます。
④観護措置
観護措置がとられた場合には、原則的に少年は少年鑑別所に収容されます(少年法17条1項)。収容期間は原則2週間で、特に必要があるときはさらに1回延長可能です(合計4週間)。
ただし、一定の事件について証拠調べが必要な場合はさらに2回延長可能で、合計8週間の身柄拘束が認められています(少年法17条3項、4項)。
その間、家庭裁判所調査官や法務技官が少年の行動を観察したり、心理テストを行ったり、あるいは来歴や事件について話を聞いたりして、どのような処分が適切かを調査します。
⑤少年審判
観護措置の後、家庭裁判所で少年審判が実施されます。少年審判は非公開の手続きで、傍聴が認められていません(少年法22条2項)。
基本的には、裁判官が、少年と保護者から話を聞き、処分を言い渡します。弁護士等の「付添人」の出席も認められています。
事実関係に争いがない場合は、1回の審判で処分が言い渡されます。
しかし、少年の処分を直ちに決めるのが難しい場合には、少年を適当な期間家庭裁判所調査官の観察下に置き、その間の行動や言動等を元に後日改めて少年審判を開き、処分が言い渡される場合もあります(少年法25条)。
少年事件の処分は、
- 保護観察
- 児童自立支援施設等送致
- 少年院送致
の3種類があります(少年法24条)。
1. 保護観察は、少年を保護観察所および保護観察所から委託を受けた保護司の監督下に置き更正を図るものです。
2. 児童自立支援施設等送致は、「児童自立支援施設」または「児童養護施設」に入所させるものです。「児童自立支援施設」は犯罪などの不良行為をするおそれがある児童や家庭環境等から生活指導を要する児童のための施設、「児童養護施設」は保護者のいない児童や虐待されている児童のための施設です。
3. 少年院送致は、少年を少年院に送り、その中で教育を受けて更正を図るものです。6か月以下の短期処遇とおおむね1年程度の長期処遇があります(長期処遇は期間が延びることもあります)。
いずれの保護処分も、期間は厳格には区切られていません。
(3)初犯の場合の処分は?
大麻使用や所持が初犯の場合、量にもよりますが保護観察処分になることが多いと考えられます。ただし、使用が常習的である場合や所持が営利目的の場合には、少年院送致となる可能性が高いといえます。
3. 子どもが大麻で逮捕された場合は弁護士に相談を
もし、ご自身のお子さんが大麻事犯で逮捕された場合には、早急に弁護士に相談することが非常に望ましいといえます。
弁護士に相談すれば、おおよその処分の見立てをすることが可能となります。
また、いち早くお子さんに接見して、取り調べに対する対応をアドバイスすることも可能です。さらに、家庭裁判所の調査官と面接してもらうこと、少年審判に「付添人」として同席してもらうこともできます。
加えて、学校や職場に知られないようにする、あるいは学校や職場から厳しい処分がされないように交渉するなどの対応をしてもらうことも考えられます。 釈放後の支援体制をいち早く整えることのアドバイスも可能であり、そうすることによって、処分が軽くなる可能性もあります。
- こちらに掲載されている情報は、2024年11月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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大久保 潤 弁護士
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