交通費の不正受給は詐欺か横領か? ばれる理由とばれた場合のペナルティも解説
会社から通勤交通費(通勤費・通勤手当)を不正に受給すると、詐欺罪や業務上横領罪で罰せられるおそれがあります。もし不正受給をしてしまったら、会社に対して速やかに申し出るとともに、刑事弁護について弁護士に相談しましょう。
本コラムでは、交通費の不正受給について、成立する犯罪(詐欺・業務上横領)、ばれる原因、ばれた場合のリスク、不正受給に気づいた場合の対応などを解説します。
1. 交通費の不正受給のよくあるパターン
従業員が会社から交通費を不正受給するケースは、金額の大小はあれども、それほど珍しいものではありません。
たとえば、以下のような方法によって交通費を不正受給する例がよく見られます。
- 住所を実際よりも遠方であると偽り、交通費を多めに受け取る
- 実際よりも遠回りな通勤経路や高価な交通手段を申告して、交通費の一部を浮かせる
- 交通費を申請しつつ、実際には徒歩や自転車で通勤する
- 架空の出張を申請して、交通費を丸ごとだまし取る
など
2. 交通費の不正受給は「詐欺罪」や「業務上横領罪」で罰せられることも
交通費の不正受給については、「詐欺罪」や「業務上横領罪」が成立します。実際に起訴されるかどうかは被害金額などによりますが、交通費の不正受給は犯罪にあたることを正しく理解しましょう。
(1)交通費の不正受給が詐欺罪にあたるケース
詐欺罪(刑法246条)は、他人をだまして財物を詐取し、または経済的利益を得る犯罪です。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」とされています。
たとえば、実際よりも多い金額の交通費精算を意図的に申請した場合や、交通費をだまし取る目的で架空の出張を申請した場合などには、詐欺罪によって罰せられる可能性があります。
また、引っ越して職場が近くなったのに、新しい住所を会社に伝えず従前同様の交通費を受け取り続けた場合にも、詐欺罪が成立することがあります。
会社から交通費を受給している従業員は、必要な交通費が減少したことを会社に伝える義務(=作為義務)があると考えられるためです。
なお、引っ越しによる交通費の減少を会社に申告しなかったとしても、意図的ではなく単に忘れていただけの場合は、犯罪の故意がないので詐欺罪は成立しません。
ただし、気づいた後も申告しないでいると、詐欺罪により処罰されることがあります(刑法246条2項)。
(2)交通費の不正受給が業務上横領罪にあたるケース
業務上横領罪(刑法253条)は、業務上自己の占有する他人の物を横領する犯罪です。業務上横領罪の法定刑は、詐欺罪と同様に「10年以下の懲役」とされています。
交通費の不正受給が業務上横領罪にあたるのは、会社から交通費として預かったお金を使い込んだり、自分の懐に入れたりしたケースです。
たとえば、会社から交通費の決済用として預かったクレジットカードを使って、業務上必要のない移動(旅行・観光など)をした場合は、横領行為として業務上横領罪によって罰せられる可能性があります。
3. 交通費の不正受給がばれる主な原因
交通費の不正受給は、以下のようなきっかけでばれることが多いです。
- 不正受給の現場を同僚に目撃される
- 不正受給について話を聞いた同僚が上司に密告する
- 不正受給について同僚と話している様子を、上司に目撃される
- 従業員に対して恨みを抱いている人(元交際相手など)が、勤務先に不正受給の事実を連絡する
- 不正受給を窺わせるSNS投稿を会社の人に発見される
など
ささいなきっかけから不正受給がばれるケースもよくあるので、決して不正受給に手を出すことがないようにしましょう。
4. 交通費の不正受給がばれたらどうなる?
交通費の不正受給がばれたら、以下のような事態が発生します。
-
不正受給した額を返金しなければならない
-
懲戒処分を受けるおそれがある
-
刑事罰を受けるおそれがある
(1)不正受給した額を返金しなければならない
不正受給した交通費は、従業員は保持することができない「不当利得」にあたります。また、「不法行為」によって会社に与えた損害ととらえることもできます。
したがって従業員は、不正受給した交通費全額を会社に返金しなければなりません(民法703条・704条、709条)。さらに、不正受給の時から年3%の割合による遅延損害金を併せて請求される可能性もあります(民法419条、404条)。
(2)懲戒処分を受けるおそれがある
交通費の不正受給をした従業員は、会社から懲戒処分を受けるおそれがあります。
会社が行うことのできる懲戒処分の重さ(戒告・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇など)は、従業員による不正行為の性質や態様などによって決まります。
交通費の不正受給は詐欺罪や業務上横領罪にあたる犯罪であり、かつ会社に直接損害を与える重大な背信行為であるため、懲戒解雇処分を受けることもあり得るでしょう。
懲戒処分に不服がある場合は労働審判や訴訟で争うこともできますが、交通費の不正受給をした事実を否定できない状況では、従業員側は苦しい戦いを強いられてしまいます。
(3)刑事罰を受けるおそれがある
前述のとおり、交通費の不正受給には詐欺罪や業務上横領罪が成立します。
特に不正受給の額が大きい場合は、会社の刑事告訴によって捜査機関が動き、逮捕されてしまう可能性も否定できません。最終的に刑事裁判で有罪判決が確定すれば前科が付いてしまうほか、情状によっては刑務所に収監されてしまうおそれもあります。
5. 交通費を不正受給していると気づいた場合の対応
交通費を不正受給していることに気づいたら、すぐに勤務先の会社へ報告しましょう。故意でなければ犯罪にあたりませんし、自主的に報告すれば懲戒処分も回避できる可能性があります。
また、意図的に不正受給をしてしまっていた方も、発覚する前に会社へ正直に話しましょう。刑事告訴を控える、懲戒処分を軽く済ませるなど、会社が寛大に対応してくれる可能性が高まります。
6. 交通費の不正受給が不安になったら弁護士に相談を
会社から受け取っている交通費が不正受給ではないかと不安になった方は、速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
刑事事件を得意とする弁護士に相談すれば、不正受給が発覚することによるリスクを最小限に抑えるための対応について、状況に即したアドバイスを受けられます。また、会社との和解交渉が必要な場合には、弁護士に代理で対応してもらうことも可能です。
特に交通費の不正受給について、会社が詐欺事件や業務上横領事件として刑事告訴しようとしている場合には、すぐに弁護士へ相談しましょう。重い刑事処分を避けるためには、弁護士のサポートを受けることが必須となります。
交通費の不正受給をとがめられるのではないかと心配な方は、お早めに弁護士へご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年09月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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