詐欺の被害額を返金させる方法とは? 法的制度とすべきことを解説

詐欺の被害額を返金させる方法とは? 法的制度とすべきことを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

詐欺の被害に遭った場合、返金を受けるためには迅速な対応が重要になります。速やかに弁護士へ相談して、返金に向けた対応を開始しましょう。

本コラムでは、詐欺被害を回復するための方法として、公的な救済制度や返金請求の方法・ポイントなどを解説します。

1. 詐欺とは

「詐欺」とは、被害者をだまして金品を詐取したり、不当に経済的利益を得たりする行為をいいます。

詐欺の犯人(加害者)は詐欺罪などによって処罰されるほか、民事上は被害者に対して被害金額を返金する責任を負います。

(1)近年よくある詐欺の手口

近年では、以下のような詐欺手口が増加しています。特にSNSでは、これらの詐欺の勧誘が横行しているので要注意です。

  • 投資詐欺

    「お金をプロが運用して増やしてあげます」などと称して、被害者から金銭をだまし取ります。また、投資に関する無意味な情報商材を高く売りつける詐欺手口もよく見られます。

  • 振り込め詐欺

    「子どもが事故を起こしたのでお金が必要」などと被害者の不安をあおり、詐欺グループの口座へお金を振り込ませます。

  • ロマンス詐欺

    恋愛感情などを利用して、被害者の金銭をだまし取ります。

  • ネット通販詐欺

    商品やサービスを提供しない、または粗悪なものを提供するつもりであることを秘して被害者に購入させ、代金をだまし取ります。

(2)詐欺の犯人(加害者)が負う法的責任

詐欺の犯人(加害者)は、詐欺罪による処罰の対象となります。詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です(刑法246条)。

また、詐欺グループが組織的に詐欺行為をした場合は「1年以上の有期懲役」に処されます(組織的犯罪処罰法3条1項13号)。

さらに、詐欺によって締結した契約は取り消すことができます(民法96条第1項)。

それに加えて、詐欺の犯人(加害者)は被害者に対し、不当利得(民法703条・704条)または不法行為(民法709条)に基づいて被害額を返金しなければなりません。

2. 詐欺の被害額を返金させる方法

被害者が詐欺の被害額を回収するためには、以下の方法が考えられます。

(1)公的な救済制度に基づく分配金・給付金の請求

預金口座へ資金を振り込ませるタイプの詐欺や、組織的に行われている詐欺については、公的な救済制度に基づく分配金・給付金を請求することができます。

(2)民事上の手段による返金請求

詐欺の犯人(加害者)に対して返金を請求できるほか、クレジットカードでお金を払わせるタイプの詐欺であれば、「チャージバック」によって引き落としを止めることができます。

(3)刑事告訴

詐欺の犯人を刑事告訴した上で、示談交渉を通じて被害金の返還を求めることが考えられます。

3. 詐欺被害に関する公的な救済制度

詐欺被害に関する公的な救済制度としては、主に以下の2つが挙げられます。

  1. 振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金

  2. 組織的犯罪処罰法に基づく被害回復給付金

(1)振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金

預金口座等へお金を振り込ませる詐欺に遭った場合、被害者は振り込め詐欺救済法に基づく「被害回復分配金」を請求できます。

被害回復分配金を受け取るには、詐欺の被害に気付いた時点で、速やかに振込先口座がある金融機関へ連絡して口座凍結を依頼しましょう。

凍結された口座に残高があれば、その金額から被害回復分配金を受け取ることができます。

また、他の被害者が口座凍結を依頼した場合も、所定の期間内に金融機関へ申し出れば、被害回復分配金を受け取ることが可能です。

ただし、凍結された口座からお金が全部出金されていた場合は、被害回復分配金を一切受け取れません。また、口座残高が被害総額に不足する場合は、残高の限度で被害回復分配金を受け取れるにとどまります。

なお、複数の被害者がいる場合には、被害額に応じて按分(あんぶん)的に被害回復分配金が支払われます。凍結を依頼した被害者が優先的に弁済を受けられるわけではないのでご注意ください。

参考:金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ

(2)組織的犯罪処罰法に基づく被害回復給付金

組織的な詐欺によって得られた犯罪収益は、没収した上で被害者に「被害回復給付金」として支給する制度が設けられています。

参考:検察庁「被害回復給付金支給制度

被害回復給付金を受け取るためには、被害額などの必要事項を記載した申請書や添付書類を検察官に提出する必要があります。

ただし被害回復給付金は、詐欺グループから没収された金額の限度で支払われるにとどまります。没収の対象にならなかった詐欺グループの財産からも被害金を回収するためには、民事的な手段による返金請求を行いましょう。

4. 詐欺被害に関する民事上の返金請求

詐欺の被害額を回収するための民事的な返金請求については、さまざまな方法が考えられます。いずれの方法を用いる場合でも、迅速に十分な準備を整えることが重要です。

(1)民事上の手段による返金請求の方法

詐欺の被害額を回収するための民事上の手段としては、以下の例が挙げられます。

①チャージバック(クレジットカード詐欺の場合)

クレジットカードで詐欺業者から商品やサービスを購入した場合は、カード会社に対して詐欺取消しを主張することにより、代金の引き落としを拒否することができます。

②詐欺グループとの交渉

詐欺グループと直接交渉して、被害額の返金を請求します。ただし、詐欺グループが返金に応じるケースは少ないので、別の方法を併せて検討しましょう。

③支払督促

裁判所に対して申立てを行い、詐欺グループに対して返金を督促してもらいます。詐欺グループが異議を申し立てなければ、強制執行の申立てが可能となります。

④仮差押え+訴訟の提起

裁判所に対して訴訟を提起し、詐欺グループに対して被害額の返還を命ずる判決を求めます。

訴訟を提起する前に、詐欺グループの財産の流出を防ぐため、裁判所に対して仮差押えの申立てを行う必要があります。

(2)返金請求を成功させるためのポイント

詐欺の被害額の返金請求を成功させるためには、以下のポイントに注意して対応しましょう。

①犯人・詐欺グループの情報を把握する

被害額の返金請求にあたっては、犯人や詐欺グループの氏名・名称や住所を特定しなければなりません。弁護士の協力を得ながら調査を行いましょう。

なお、住所が特定できない場合は、訴訟提起にあたって公示送達の申立てを行うことも考えられますので(民事訴訟法110条1項1号)、弁護士にご相談ください。

②犯人・詐欺グループの財産を把握し、迅速に仮差押えを申し立てる

被害額の回収原資となる犯人や詐欺グループの財産を、弁護士会照会などの方法を通じてできる限り把握しましょう。

犯人・詐欺グループの財産を把握できたら、迅速に裁判所に対して仮差押えの申立てを行いましょう。仮差押えが行われれば財産の処分が禁止され、流出を防ぐことができます。

③詐欺の証拠をできる限り確保する

犯人や詐欺グループが言い逃れられないように、詐欺に関するメッセージなどの証拠をできる限り豊富に確保しましょう。

5. 詐欺被害に関する相談先|弁護士への相談がおすすめ

詐欺被害に関する相談先としては、以下の例が挙げられます。

  1. 警察

  2. 消費生活センター・消費者ホットライン

  3. 弁護士

特に、返金請求の成功率を高めるためには、できる限り早めに弁護士へ相談するのがおすすめです。

弁護士に相談すれば、公的な救済制度の利用や民事上の返金請求について、専門的知識と経験に基づくサポートを受けることができます。

弁護士JP編集部
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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年09月13日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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